独占欲は校閲不能につき
大所帯となった騎士団の全編成が一段落し、嵐のような熱気が去った夜。
王宮のバルコニーには、銀色の月光と、しんと静まり返った夜気が満ちていた。
リリアーヌは心地よい夜風を扇子に受け流し、隣に立つ婚約者へ、艶めかしい視線を向けた。
「……カイル様。
聖騎士の一人が、『住み込みで陛下の背中を流したい』などと供述しておりましたわ。
……明日の魔道瓦版が出るまでに、騎士団から除名すべきですわね?」
声は、断罪の赤ペンを振るう時よりも冷徹で、そして隠しきれない独占欲に震えていた。
対するカイルは、ふっと自嘲気味に口角を上げる。
「リリアーヌ、それは嫉妬か?
……嬉しいが、俺の方こそ、ゴーレム使いが『主任校閲官にドS校閲されたい』と膝を折った瞬間、ドラフティアごと消し飛ばしてやろうかと思ったぞ」
互いに一歩も引かない独占欲の火花。
最強の布陣を整えたはずの騎士たちが、二人にとって「平穏な愛を乱すノイズ」でしかない。
張り詰めた空気の中、どちらからともなく呆れたような、それでいて愛おしくて堪らないといった笑みがこぼれた。
「……もう、限界ですわ、カイル様。
私の『余白』に、貴方以外の名前を書き込ませないでくださいまし」
リリアーヌが胸元へ顔を預ければ、カイルは待っていたとばかりに、その細い体を強い腕で抱き寄せた。
「ああ。……俺の物語に、もはや注釈はいらない。
君という真実だけでいい」
引き寄せ合うように重なる唇。
神のプロットも、他国の猛者も介入を許さない――。
二人の魂が、永遠の契約を『確定』させた夜だった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
新章開幕、一発目から失礼いたしました。
最強の騎士団が揃ったというのに、二人の会話がこれです。
お互いに愛が重すぎて、スパイどころか新メンバー全員が「お邪魔虫」扱いという……。
リリアーヌの「余白」発言、カイル様の「注釈はいらない」返し。
私も、少し砂糖を吐きそうになりました(笑)




