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第22話 仲間を頼るって、こういうことか! ベーカリーズの連携が決まりました

 ベーカリーズにセレナが加入して、三日目。


 朝。


 俺は宿の食堂で、いつものように【食玩】を開いていた。


「今日は何にするかな……」


 画面には大量のパンが並んでいる。


 昨日はチョココロネ。


 一昨日はハンバーガー。


 その前はサンドイッチ。


「朝から重いものはやめておくか」


 そう言いながら、俺の指は自然と惣菜パンの欄へ向かっていた。


 そして。


「……これだ」


【ベーコンエピ】


 購入。


 ポンッ。


 紙袋が出現する。


 袋を開ける。


 細長く焼き上げられたパン。


 表面はこんがりと焼けていて、ベーコンの脂がところどころに染み込んでいる。


「いただきます」


 手でちぎる。


 パリッ。


 焼けた表面が軽く割れる。


 中はもっちり。


 ベーコンの塩気と燻製の香りが広がる。


「……これ、朝飯にかなりいいな」


 噛むほどに小麦の甘さが出てくる。


 そこへベーコンの旨味。


 油っぽいのに、後味はしつこくない。


 気づけば一本を食べ終わっていた。


「美味しかった……」


 そして。


 紙袋の中にカードが一枚。


【SKILL CARD】


【体力回復Ⅰ】


「お」


 使えそうだ。


 カードを持つ。


「使う」


 光。


『【体力回復Ⅰ】を習得しました』


 これなら長時間の戦闘でも助かる。


「いいカードだな」


「何が?」


 声がした。


 振り向く。


 セレナが立っている。


「おはよう」


「おはようございます」


 セレナは俺の前の皿を見る。


「……ベーコンエピ」


「ああ」


「美味しそうです」


「食べる?」


「いいんですか?」


「もちろん」


 もう一つ買う。


 セレナへ渡す。


「ありがとうございます」


 セレナが座る。


 一口。


「……」


 二口。


「……美味しい」


 小さく呟く。


「昨日のカレーパンとは違いますね」


「そうだな」


「こちらも好きです」


「パンなら何でも好きなんじゃないか?」


「……否定できません」


 セレナが少し笑った。


 そこへ。


「アレン!」


 リリアーナがやってきた。


「パンある?」


「あるぞ」


「何?」


「ベーコンエピ」


「私も!」


 ミリアも来る。


「私も食べたい」


「結局全員か」


 追加購入。


 四人で朝食を取る。


 なんだかんだ。


 これが一番落ち着く。


     ◇


 朝食後。


 今日の依頼を探す。


「今日は少し大きい依頼にするか」


 掲示板を見る。


 その中に一枚。


【街道西側・魔物群討伐】


【対象:ゴブリン、ホーンラビット等】


【報酬:銀貨八枚】


「昨日よりちょっと大きいな」


 セレナが依頼書を見る。


「魔物群……」


「どう?」


「四人なら問題ないと思います」


「じゃあこれにしよう」


 受付へ。


 依頼を受ける。


     ◇


 街道を進む。


「セレナ」


「はい」


「昨日より敵が多いかもしれない」


「分かっています」


「だから、無理に一人で倒そうとしなくていい」


「……」


 セレナが頷く。


「分かりました」


「本当に?」


「はい」


「ならいい」


 リリアーナが横から言う。


「アレン、セレナのこと気にしすぎじゃない?」


「新入りだからな」


「私たちのときは?」


「最初から面倒見てただろ」


「そうだっけ?」


「そうだよ」


 ミリアが笑う。


「アレンは昔からそう」


「何が?」


「仲間を放っておけない」


「……」


 俺は答えなかった。


     ◇


 しばらく進む。


「来た」


 索敵。


「前方に十体以上」


「結構いる」


 リリアーナが弓を構える。


「どれくらい?」


「ゴブリンが八。ホーンラビットが五」


「多いな」


「私が先に数を減らします」


 リリアーナが矢を放つ。


 一体。


 二体。


 三体。


 次々と倒れる。


「さすがだな」


「任せて!」


 ミリアが詠唱する。


「火よ!」


 火球が飛ぶ。


 ゴブリンの集団へ。


 爆発。


 さらに二体。


「残り!」


 セレナが走る。


「私が行きます!」


 剣が閃く。


 一体。


 二体。


 ホーンラビットが横から突進。


「危ない!」


 俺が飛び込む。


 剣で弾く。


「セレナ、右!」


「はい!」


 セレナが振り返る。


 斬撃。


 ホーンラビットが倒れる。


「ありがとうございます!」


「いいって!」


 俺が前を向く。


 残り三体。


「リリアーナ!」


「分かってる!」


 矢が飛ぶ。


 残り二体。


 ミリア。


「火よ!」


 炎が走る。


 最後の一体を倒す。


「終わり?」


「……」


 索敵。


「まだいる」


「どこ?」


「後ろ」


 振り向く。


 ゴブリンが三体。


 しかも。


「セレナ!」


「はい!」


 二人で迎え撃つ。


 セレナが一体を受け止める。


 俺が横から攻撃。


 倒す。


 もう一体。


 セレナが斬る。


 最後の一体がリリアーナへ向かう。


「危ない!」


 矢を構えるより早く。


 ミリアの火球。


 命中。


「助かった!」


「よかった」


 静かになる。


「終わったな」


「はい」


 セレナが息を吐く。


「……」


「どうした?」


「昨日より、うまく戦えました」


「そうだな」


「皆さんが動いてくれるので」


「仲間だからな」


「……はい」


 セレナが嬉しそうに笑った。


     ◇


 討伐対象を確認する。


「数は十分」


「じゃあ戻ろう」


「待って」


 リリアーナが言う。


「お腹空いた」


「……」


 セレナも頷く。


「私もです」


「お前もか」


「はい」


 ミリアまで。


「私も少し」


「……分かった」


 昼食。


 俺は【食玩】を開いた。


「今日は何にする?」


 リリアーナが画面を覗き込む。


「これ!」


【ホットドッグ】


「いいな」


「私はこれ」


 ミリア。


【たまごサンド】


「私は……」


 セレナが悩む。


「これにします」


【焼きそばパン】


「焼きそばパンか」


 パンに関係する食品なら、こういうものも買える。


 俺は自分用に。


【照り焼きチキンサンド】


 購入。


 四つの袋が出現する。


 セレナが焼きそばパンを取り出す。


「……」


 パンの切れ目から、たっぷりの焼きそばが見えている。


「いただきます」


 かじる。


 ふわっ。


 柔らかなパン。


 次に焼きそば。


 ソースの香ばしい香り。


 キャベツの甘み。


 麺のもちもちした食感。


 そして、少し濃いめのソース。


「……!」


 セレナの表情が変わる。


「美味しい……」


「気に入った?」


「はい!」


 今度は大きくかじる。


 焼きそばとパンを一緒に噛む。


 炭水化物同士なのに、妙に合う。


 ソースの味がパンにも染みている。


「これは……すごいです」


「焼きそばパンだからな」


「どうしてこんな組み合わせを思いつくんでしょう」


「俺も知らない」


 リリアーナがホットドッグを食べる。


「こっちも美味しいよ」


 ソーセージにかぶりつく。


 パキッ。


「んー!」


「そんなに美味い?」


「美味しい!」


 ミリアはたまごサンドを食べている。


「これも好き」


「みんな気に入ったみたいだな」


 俺は照り焼きチキンサンドを食べる。


 甘辛い照り焼きソース。


 香ばしく焼かれた鶏肉。


 シャキシャキのレタス。


 ふわふわのパン。


 一口食べるだけで、肉の旨味と甘辛いソースが口いっぱいに広がる。


「……」


 思わず無言になる。


「アレン?」


「美味い」


「でしょう?」


「これは当たりだ」


 四人で昼食を楽しむ。


 食べ終わる。


 カードを確認する。


 それぞれの袋に一枚。


 セレナのカード。


【SKILL CARD】


【俊足Ⅰ】


「また私向きですね」


「使ってみる?」


「はい」


 セレナがカードを握る。


「使う」


 光。


『【俊足Ⅰ】を習得しました』


「……」


 セレナが立ち上がる。


「少し速くなった気がします」


「次の戦闘で試せばいい」


「はい」


     ◇


 帰り道。


 セレナが俺の隣を歩いている。


「アレンさん」


「ん?」


「今日、分かりました」


「何が?」


「仲間を頼るということが」


「……」


「昨日までは、自分が強くならなければと思っていました」


「うん」


「でも」


 セレナが三人を見る。


「リリアーナさんが敵を減らして」


「任せて!」


「ミリアさんが魔法で援護して」


「うん」


「アレンさんが前で守ってくれる」


「……」


「その上で私が動く」


「そういうことだな」


「一人で全部やろうとする必要はなかったんですね」


「最初からそう言ってる」


「はい」


 セレナが笑う。


「今なら少し分かります」


「それならよかった」


 そのとき。


「アレン」


 リリアーナが俺の腕を掴む。


「ん?」


「私も頼ってね」


「もちろん」


 反対側。


 ミリアも俺の袖を掴む。


「私も」


「分かってる」


 後ろからセレナ。


「私も頼ってください」


「……」


 俺は三人を見る。


「分かった」


 なんだか。


 少しだけ照れくさい。


 でも。


 悪くない。


 ベーカリーズは四人になった。


 そして今日。


 ようやく四人で戦う意味が分かってきた気がする。


 一人で強くなるんじゃない。


 四人で強くなる。


 それが、俺たちのパーティーだ。


「ところで」


 リリアーナが言う。


「夕飯は?」


「……」


「パン?」


「パン」


「パンですね」


 三人が頷く。


「そこは全員一致なのかよ」


 俺は笑った。


 今日もベーカリーズは平和だった。

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