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第20話 新しい仲間は腹ペコ美少女!ベーカリーズに四人目が加入しました

 隣町で二日目の朝。


 俺は目を覚ました。


「……腹減った」


 昨日もかなり歩いた。


 ダンジョンにも入った。


 やはり朝になると腹が減る。


 俺はベッドから起き上がり、いつものように空中へ手を伸ばした。


「【食玩】」


 半透明の画面が浮かぶ。


 パン。


 菓子パン。


 惣菜パン。


 サンドイッチ。


 ハンバーガー。


 ホットドッグ。


 ドーナツ。


 ラスク。


 今日も大量の商品が並んでいる。


「朝は……」


 少し悩む。


 そして。


「これだな」


【チョココロネ】


 購入。


 ポンッ。


 紙袋が現れる。


 袋を開ける。


 細長いパン。


 先端から見えるチョコレートクリーム。


 持ち上げると、パンは柔らかい。


「いただきます」


 端からかじる。


 ふわっ。


 柔らかなパン。


 そしてチョコクリーム。


 濃厚なカカオの香り。


 甘い。


 でも、ほんの少し苦味がある。


 それが甘さを引き締めている。


「美味い」


 もう一口。


 今度はクリームが多い。


 パンの小麦の香りとチョコの風味が混ざる。


「朝からこれはいいな」


 食べ終わる。


 紙袋の中にカード。


【SKILL CARD】


【魔力操作強化Ⅰ】


「また便利そうなのが出たな」


 カードを持つ。


「使う」


 光。


『【魔力操作強化Ⅰ】を習得しました』


 ステータス。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【アレン】


種族:人族

年齢:15歳

レベル:1


【体力】42

【魔力】18

【攻撃力】12

【防御力】11

【素早さ】13

【魔法力】15

【精神力】12


【習得スキル】


・言語理解

・初級剣術

・食玩

・身体強化Ⅰ

・身体強化Ⅱ

・火魔法Ⅰ

・鑑定Ⅰ

・気配察知Ⅰ

・火耐性Ⅰ

・火耐性Ⅱ

・料理Ⅰ

・剣術Ⅰ

・索敵Ⅰ

・火力強化Ⅰ

・俊足Ⅰ

・集中Ⅰ

・魔力操作Ⅰ

・魔力操作強化Ⅰ

・打撃耐性Ⅰ

・防御力強化Ⅰ

・防御強化Ⅰ

・状態異常耐性Ⅰ

・視力強化Ⅰ

・聴覚強化Ⅰ

・反応速度強化Ⅰ

・筋力強化Ⅰ

・俊敏強化Ⅰ

・魔力回復Ⅰ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「順調だな」


 カードを使うたびに、少しずつ強くなっている。


 そのとき。


 コンコン。


「アレン?」


「ミリア?」


「うん」


 扉が開く。


「おはよう」


「おはよう」


「チョココロネ?」


「そう」


「美味しそう」


「食べる?」


「うん」


 購入。


 ミリアに渡す。


「ありがとう」


 ミリアが食べる。


「……美味しい」


「だろ?」


 そこへ。


「二人ともー!」


 リリアーナがやってくる。


「おはよう!」


「おはよう」


「パンある?」


「あるぞ」


「何?」


「チョココロネ」


「私も!」


 もう一つ購入。


 三人で朝食を取る。


 もはや完全に日課だ。


     ◇


 朝食を終えた俺たちは、町を出る準備をしていた。


「今日は帰る?」


 リリアーナが聞く。


「ああ」


「ちょっと寂しい」


「また来ればいい」


「そうだね」


 荷物をまとめる。


 ギルドへ寄ってから帰る予定だ。


 ところが。


 ギルドへ入ったところで。


「……」


 妙な騒ぎが起きていた。


「どうしたんですか?」


 リリアーナが受付を見る。


 そこには数人の冒険者。


 そして。


 一人の少女がいた。


 銀色の髪。


 青い瞳。


 軽装の鎧。


 腰には細身の剣。


 見た目は俺たちと同じくらいの年齢だ。


 ただ。


 少女は明らかに困っていた。


「ですから、報酬は受け取れません」


「なんでだよ!」


「依頼を失敗したんだから当然だろ!」


 冒険者たちが怒鳴っている。


 少女は俯いている。


「……すみません」


「一人で勝手に突っ込んで、俺たちまで巻き込んで!」


「……」


 俺は思わず見てしまった。


 すると。


 少女と目が合った。


「……」


 青い瞳。


 綺麗だ。


 少女は慌てて目を逸らした。


「アレン?」


 ミリアが俺を見る。


「どうした?」


「見てる」


「いや、あの騒ぎが気になって」


「そう」


 リリアーナも少女を見る。


「困ってるね」


「ああ」


 冒険者たちはまだ怒っている。


「もうお前とは組まない!」


「分かりました」


 少女は小さく頭を下げた。


 そして。


 一人でギルドを出ていった。


「……」


 なんとなく。


 俺たちも外へ出る。


     ◇


 少女はギルドの裏手にあるベンチに座っていた。


 俯いている。


 俺たちが近づくと、顔を上げた。


「……何か?」


「さっきのこと、大丈夫?」


「大丈夫です」


 明らかに大丈夫ではなさそうだ。


「依頼で何かあった?」


「魔物の討伐依頼でした」


 少女が説明する。


「私は前衛だったんですが……判断を間違えてしまって」


「怪我は?」


「ありません」


「ならよかった」


「でも、仲間に迷惑をかけました」


 少女は俯く。


「私、一人でも戦えるようになりたくて」


「一人で?」


「はい」


「どうして?」


「……強くなりたいから」


 その答えは単純だった。


 だが。


 俺は少し分かる気がした。


 俺も強くなりたい。


 自分を守るため。


 仲間を守るため。


 少女が顔を上げる。


「あなたたちは……?」


「俺たちは冒険者」


 リリアーナが答える。


「パーティー名はベーカリーズ!」


「ベーカリーズ……」


「三人で活動してる」


 少女が俺たちを見る。


「仲間なんですか?」


「そう」


 ミリアが頷く。


「仲間」


「……」


 少女が少し羨ましそうに俺たちを見る。


「いいですね」


 その一言。


 俺は少し考えた。


「じゃあ」


「?」


「俺たちと組まない?」


 少女が固まった。


「え?」


「もしよければ」


「……私が?」


「ああ」


 リリアーナが笑う。


「歓迎するよ」


 ミリアも頷く。


「うん」


「でも……」


「何?」


「私、迷惑をかけるかもしれません」


「そのときは助ける」


「……」


「仲間だから」


 少女の目が少し潤んだ。


「……ありがとうございます」


「名前は?」


「セレナです」


「セレナか」


「はい」


 俺は手を差し出した。


「よろしく」


 セレナは少し戸惑ってから、その手を握った。


「よろしくお願いします」


 これで。


 ベーカリーズは四人になった。


     ◇


 ただ。


「……」


 セレナが俺を見る。


「何?」


「お腹が空きました」


「……」


「え?」


 リリアーナが笑った。


「お腹空いてるの?」


「朝から何も食べていません」


「それは食べたほうがいい」


 俺は【食玩】を開く。


「何が食べたい?」


 セレナが画面を見る。


「……これは?」


「ハンバーガー」


「食べられるんですか?」


「もちろん」


 購入。


 紙袋が出る。


 俺はセレナに渡した。


「どうぞ」


「ありがとうございます」


 袋を開ける。


 セレナの目が大きくなる。


「……すごい」


 丸いパン。


 間に肉。


 野菜。


 ソース。


 香ばしい匂い。


「これ……パンなんですか?」


「パンに関係する食品なら買える」


「なるほど……」


 セレナは両手でハンバーガーを持つ。


「いただきます」


 かじる。


 パンがふわっと潰れる。


 次の瞬間。


 肉の旨味。


 ソースの甘辛さ。


 野菜のシャキッとした食感。


 チーズの濃厚さ。


 全部が一気に口の中へ広がる。


「……!」


 セレナの目が見開かれる。


「……美味しい」


「だろ?」


 もう一口。


 今度は肉汁が溢れる。


 ジューシーな肉。


 ふわふわのバンズ。


 少し酸味のあるソース。


「……美味しい……」


 セレナは夢中になって食べている。


 リリアーナが笑う。


「気に入った?」


「はい……!」


「じゃあ、これからいっぱい食べられるね」


「……!」


 セレナが俺を見る。


「これから……?」


「ああ」


 俺は頷く。


「ベーカリーズの仲間なんだから」


 セレナはしばらく黙っていた。


 そして。


「……はい」


 小さく笑った。


「よろしくお願いします」


「こちらこそ」


 こうして。


 俺たちのパーティーに、新しい仲間が加わった。


 名前はセレナ。


 剣士。


 そして。


 かなりの食いしん坊だった。

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