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第15話 ベーカリーズの初依頼、焼きたてピザパンが美味すぎる

 パーティー名が決まった。


 **ベーカリーズ。**


 昨日、ギルドで登録したばかりの俺たちのパーティー名だ。


 名前の響きについては、まあ……悪くないと思う。


 少なくとも【食玩】よりはずっといい。


 朝。


 俺は宿の部屋で【食玩】の画面を開いていた。


「今日は何にするかな」


 昨日はベーグルサンド。


 その前はベーコンエッグパン。


 毎日違うものを食べるというのもいい。


 画面を眺めていると、見慣れないものがあった。


【ピザパン】


【価格:銅貨9枚】


「ピザ……パン?」


 名前からして美味しそうだ。


 俺は迷わず購入した。


 ポンッ。


 いつもの紙袋が現れる。


 袋を開けた瞬間。


「……うわ」


 チーズとトマトソースの香り。


 パンの上に赤いソース。


 その上からたっぷりのチーズ。


 さらに薄切りのソーセージまで乗っている。


 見た目だけで腹が減る。


「いただきます」


 かじる。


 パンはふわっと柔らかい。


 その直後、チーズが伸びる。


「……!」


 トマトソースの酸味。


 チーズの濃厚なコク。


 ソーセージの肉の旨味。


 そして焼けたパンの香ばしさ。


 全部が一緒になって口の中に広がる。


「これは……美味い」


 チーズが熱で柔らかくなっている。


 噛むたびにソーセージの脂が出て、トマトソースと混ざる。


 そこへパンの甘み。


「やばいな、これ」


 もう一口。


 今度は少し大きめにかじる。


 チーズが伸びる。


 ソースがパンに染みている。


 肉の塩気とチーズのコクが重なって。


「……最高だ」


 これは今まで食べた中でもかなり上位に入る。


 食べ終わる。


 俺は紙袋の中からカードを取り出した。


【SKILL CARD】


【火耐性Ⅱ】


「お」


 火耐性Ⅰは持っている。


 これなら上書きされるのか、それとも別扱いなのか。


 カードを持って念じる。


「使う」


 光。


『【火耐性Ⅱ】を習得しました』


 ステータスを開く。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【アレン】


種族:人族

年齢:15歳

レベル:1


【体力】42

【魔力】18

【攻撃力】12

【防御力】11

【素早さ】13

【魔法力】15

【精神力】12


【習得スキル】


・言語理解

・初級剣術

・食玩

・身体強化Ⅰ

・身体強化Ⅱ

・火魔法Ⅰ

・鑑定Ⅰ

・気配察知Ⅰ

・火耐性Ⅰ

・火耐性Ⅱ

・料理Ⅰ

・剣術Ⅰ

・索敵Ⅰ

・火力強化Ⅰ

・俊足Ⅰ

・集中Ⅰ

・魔力操作Ⅰ

・打撃耐性Ⅰ

・防御力強化Ⅰ

・状態異常耐性Ⅰ

・視力強化Ⅰ

・聴覚強化Ⅰ

・反応速度強化Ⅰ

・筋力強化Ⅰ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「普通に両方残るのか」


 火耐性が二つ。


 まあ、無駄ではない。


 たぶん。


 そのとき。


 コンコン。


「アレン?」


「ミリアか?」


「うん」


「入っていいぞ」


 扉が開く。


「おはよう」


「おはよう」


 ミリアが俺を見る。


「今日は何?」


「ピザパン」


「……」


 少し間があった。


「食べたい」


「やっぱり?」


「うん」


 俺は一つ購入する。


「はい」


「ありがとう」


 ミリアが袋を開ける。


「チーズの匂い」


「美味いぞ」


 一口。


 チーズが伸びる。


「……!」


 ミリアが目を輝かせる。


「美味しい」


「だろ?」


「これ、好き」


「また好きなパンが増えたな」


「いいこと」


「まあ、そうだな」


 ミリアが食べている間に、俺はカードを確認する。


「そういえば、今日のカードは火耐性Ⅱだった」


「また強くなったね」


「ミリアも何か使う?」


「うん」


「じゃあ、後で一緒に買おう」


「楽しみ」


     ◇


 ギルドへ向かう。


 入口にはリリアーナがいた。


「おはよう!」


「おはよう」


「おはようございます」


「今日は何のパン?」


 挨拶より先に聞かれた。


「ピザパン」


「食べたい!」


「分かったよ」


 購入する。


 紙袋を渡す。


「ありがとう!」


 リリアーナが袋を開ける。


「うわ……」


 香りを嗅ぐ。


「絶対美味しい」


 かじる。


「……!」


 リリアーナの目が丸くなる。


「何これ!」


「ピザパン」


「昨日までのパンと全然違う!」


「チーズが入ってるからな」


「チーズってこんなに美味しかったんだ……」


 リリアーナは夢中になって食べている。


「……美味しい」


 最後の一口を食べ終える。


「これ、毎日でもいい」


「昨日はベーグルサンドだっただろ」


「昨日のも好き。でもこれも好き」


「どっちなんだ」


「どっちも」


 リリアーナは笑った。


「カードは?」


「これ」


 カードを渡す。


【SKILL CARD】


【風魔法Ⅱ】


「風魔法Ⅱ……!」


「昨日風魔法Ⅰを覚えたばかりだろ」


「これ使ったらどうなるの?」


「分からない」


「使ってみる」


 カードを持つ。


「使う」


 光。


『【風魔法Ⅱ】を習得しました』


 リリアーナが目を閉じる。


「……」


 手を前に出す。


「風よ」


 ゴウッ!


 強い風が吹き抜けた。


「わっ!」


 俺の髪が大きく揺れる。


「すごい!」


 リリアーナが驚く。


「風魔法Ⅰよりずっと強い」


「危ないから、町中ではほどほどにな」


「分かった」


 リリアーナは嬉しそうだ。


     ◇


「今日は少し遠い依頼を受けてみませんか?」


 リーゼが依頼書を出してくれた。


【街道沿いの小規模魔物討伐】


【報酬:銀貨一枚】


「銀貨一枚?」


「はい」


「結構いいな」


「距離があるので、その分です」


 依頼内容を確認する。


 街道を進み、途中にある森の入口周辺を調査。


 魔物が増えているらしい。


「これにしよう」


「うん」


「私も賛成」


 三人で依頼を受ける。


     ◇


 町を出る。


 街道を歩く。


 今日は天気がいい。


 風も穏やか。


「ねえ」


 リリアーナが俺の横を歩く。


「ん?」


「ベーカリーズって、いい名前だと思う」


「そうか?」


「うん」


「パン屋みたいだけどな」


「だからいいんじゃない?」


「冒険者パーティーとしてはどうなんだ」


「覚えやすいよ」


 ミリアも言う。


「私も好き」


「二人がいいならいいか」


「うん」


 しばらく歩く。


 森が見えてきた。


 俺は索敵Ⅰを使う。


「……いる」


「何匹?」


「五匹」


「どこ?」


「森の入口」


 リリアーナが弓を構える。


「じゃあ、先に私が撃つ」


「頼む」


 矢が飛ぶ。


 ヒュンッ!


 一匹。


 ヒュンッ!


 二匹。


 残り三匹がこちらへ走ってくる。


「来た!」


 ミリアが魔法を放つ。


「火よ!」


 炎が一匹を倒す。


 残り二匹。


 俺が前に出る。


 身体強化Ⅱ。


 俊足Ⅰ。


 筋力強化Ⅰ。


 剣を振る。


 一匹。


 残り一匹。


 魔物が俺へ飛びかかる。


 反応速度強化Ⅰ。


 爪を避ける。


 剣を横に振る。


 倒す。


「終わり」


「早いね」


「三人だからな」


 リリアーナが弓を下ろす。


「私たち、かなり息が合ってきたと思わない?」


「そうだな」


 ミリアも頷く。


「最初よりずっと戦いやすい」


 その後も森の周辺を調査した。


 魔物を何匹か討伐したが、特に問題はない。


「これなら依頼達成だな」


 町へ戻る。


     ◇


 ギルドへ到着。


「お疲れさまでした」


 リーゼに報告する。


「魔物の数も問題ありません。依頼達成です」


 銀貨一枚を受け取る。


「ありがとうございます」


「最近、三人での依頼が増えましたね」


「はい」


 リリアーナが笑う。


「楽しいですよ」


「それは何よりです」


 リーゼも笑う。


 俺たちはギルドを出る。


「さて」


 俺が言う。


「夕飯どうする?」


「パン!」


 リリアーナが即答する。


「私も」


 ミリアも続く。


「……分かった」


 俺は【食玩】を開く。


「今日は何にする?」


 三人で画面を見る。


「これ!」


 リリアーナが指差した。


【焼きカレーパン】


【価格:銅貨8枚】


「昼も魔物倒したし、これでいいんじゃない?」


「カレーパン好きだな」


「好き」


 ミリアも頷く。


「私も」


「じゃあ決まり」


 三人分購入する。


 紙袋が三つ。


 俺たちは近くのベンチに座る。


「いただきます」


 焼きカレーパンをかじる。


 ザクッ。


 普通のカレーパンよりも衣が軽い。


 中のカレーは熱々。


 肉の旨味とスパイスの香り。


 玉ねぎの甘さ。


 そして、パンの柔らかな甘み。


「……美味い」


 リリアーナが幸せそうに目を細める。


「やっぱりカレーパン最高」


「私も好き」


 三人で食べる。


 今日も無事に依頼を終えた。


 新しいスキルも手に入れた。


 そして。


 リリアーナが正式に仲間になってから、まだ二日。


 それなのに。


 もうずっと三人で活動してきたような気がする。


「明日は何にしようかな」


 俺が呟く。


「明日も楽しみ」


 リリアーナが言う。


「私も」


 ミリアが笑う。


 俺も笑った。


 まだ三人。


 でも。


 この三人なら、もっと色々な依頼を受けられそうだ。


 そんなことを考えながら。


 最後の一口を食べた。


 ザクッ。


 熱いカレーとパンの味が口いっぱいに広がる。


「……やっぱり美味い」


 今日もいい一日だった。

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