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14/30

第14話 三人パーティー初日、好きなパンを選べるって最高だと思う

 リリアーナが正式に仲間になった翌朝。


 俺はいつもより少し早く目を覚ました。


 理由は簡単。


「……何のパンにしよう」


 昨日の夜から考えていた。


 ホットドッグ。


 ソーセージパン。


 ベーコンエッグパン。


 カレーパン。


 クリームパン。


 メロンパン。


 チョココロネ。


 どれも美味しい。


 だが、今日は新しい仲間ができた初日だ。


 せっかくだから、三人で新しいものを食べたい。


 俺は【食玩】を開いた。


 空中に浮かんだ画面を指で操作する。


「……これか」


 見つけた。


【ハムチーズサンド】


【価格:銅貨9枚】


「朝飯にはちょうどいいな」


 購入。


 ポンッ。


 紙袋が現れる。


 袋を開ける。


 ハムとチーズを挟んだサンドイッチ。


 チーズが少し溶けていて、香ばしい匂いがする。


「いただきます」


 かじる。


 ふわっとしたパン。


 すぐにハムの塩気。


 そしてチーズの濃厚なコク。


 噛むほどにチーズの風味が広がる。


「……うまい」


 シンプルなのに強い。


 ハムとチーズだけなのに、満足感がある。


 パンの柔らかさもいい。


 チーズが少しだけ温かいのもいい。


「これ、朝食としてかなり優秀だな」


 食べ終える。


 袋からカードを取り出した。


【SKILL CARD】


【筋力強化Ⅰ】


「お」


 筋力強化。


 俺はカードを持つ。


「使う」


 光が消える。


『【筋力強化Ⅰ】を習得しました』


 ステータスを開く。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【アレン】


種族:人族

年齢:15歳

レベル:1


【体力】42

【魔力】18

【攻撃力】12

【防御力】11

【素早さ】13

【魔法力】15

【精神力】12


【習得スキル】


・言語理解

・初級剣術

・食玩

・身体強化Ⅰ

・身体強化Ⅱ

・火魔法Ⅰ

・鑑定Ⅰ

・気配察知Ⅰ

・火耐性Ⅰ

・料理Ⅰ

・剣術Ⅰ

・索敵Ⅰ

・火力強化Ⅰ

・俊足Ⅰ

・集中Ⅰ

・魔力操作Ⅰ

・打撃耐性Ⅰ

・防御力強化Ⅰ

・状態異常耐性Ⅰ

・視力強化Ⅰ

・聴覚強化Ⅰ

・反応速度強化Ⅰ

・筋力強化Ⅰ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「順調だな」


 最近、カードでスキルを増やすのが当たり前になってきた。


 最初は一枚手に入るだけで驚いていたのに。


 今では、何が出るのか楽しみになっている。


 そのうちカードを集めること自体が目的になりそうで怖い。


 コンコン。


「アレン?」


「ミリアか?」


「うん」


「入っていいぞ」


 扉が開く。


「おはよう」


「おはよう」


「今日は何?」


「ハムチーズサンド」


「食べたい」


「分かってた」


 一つ購入。


「はい」


「ありがとう」


 ミリアが袋を開ける。


「いい匂い」


 かじる。


「……美味しい」


「だろ?」


「チーズが好き」


「じゃあ、これもお気に入りだな」


「うん」


 ミリアは嬉しそうに食べている。


 俺はその様子を見ていると。


 コンコン。


 今度は別の音。


「アレンー!」


 扉の向こうからリリアーナの声。


「起きてる?」


「起きてる」


「入るよ!」


 返事を待ってから扉を開ければいいのに。


 リリアーナは勢いよく入ってきた。


「おはよう!」


「おはよう」


「おはようございます」


「……」


 リリアーナが俺の手を見る。


「パン?」


「そう」


「何?」


「ハムチーズサンド」


「食べたい」


「朝からそれしか言わないな」


「だって美味しいんだもん」


「分かったよ」


 購入する。


 リリアーナに渡す。


「ありがとう!」


 袋を開ける。


「……いい匂い」


 一口。


「……美味しい!」


 リリアーナは幸せそうに笑った。


「これ好き」


「チョココロネとどっちが?」


「……」


 真剣に悩んでいる。


「今決めなくていい」


「そうする」


 リリアーナが食べ終える。


「カードは?」


「ああ」


 袋から取り出す。


【SKILL CARD】


【風耐性Ⅰ】


「風耐性」


「私が使う?」


「使えるなら使った方がいいだろ」


「じゃあ使う」


 カードを持つ。


「使う」


 光。


『【風耐性Ⅰ】を習得しました』


「よし」


「どんどん強くなってる気がする」


「俺たちもな」


 ミリアが頷く。


「うん」


 三人で顔を見合わせる。


 昨日までは二人。


 今日からは三人。


 少しだけ、いつもの朝が違って見えた。


     ◇


 ギルドへ行く。


 リーゼが俺たちを見る。


「おはようございます」


「おはようございます」


「おはよう」


「今日も三人ですね」


「はい」


 リリアーナが胸を張る。


「今日から正式メンバーです」


「そうでしたね」


 リーゼが笑う。


「それなら、パーティー名を決める必要がありますね」


「……」


「……」


「……」


 三人とも黙った。


「パーティー名?」


 俺が聞き返す。


「はい」


 リーゼが説明する。


「パーティー名を登録しておくと、依頼の管理が楽になります」


「なるほど」


「何にする?」


 リリアーナが聞く。


「俺に聞かれてもな」


 ミリアを見る。


「ミリアは?」


「アレンとリリアーナが決めて」


「なんで俺たち?」


「二人とも楽しそうだから」


 リリアーナが腕を組む。


「じゃあ……」


 少し考える。


「パン……」


「それは嫌」


 即答した。


「まだ何も言ってないぞ」


「どうせパンなんでしょ」


「……」


 当たっている。


「でも、食玩って名前はどう?」


 ミリアが言う。


「そのままじゃないか」


「分かりやすい」


「それはそうだけど」


 リリアーナが笑う。


「そう言うリリアーナはどうなんだよ、何かあるのか?」


「そうね…ベーカリーズとかどう?」


「……まぁこの中では1番マシか」


「本当に?」


「うん」


「じゃあそれで」


 リーゼが登録する。


【パーティー名:ベーカリーズ】


「……」


 正式に登録された。


「本当にこれでいいのか?」


「いい」


「いいよ」


 二人とも即答。


 俺も諦めた。


「じゃあ、ベーカリーズで」


「はい」


 リーゼが笑う。


「覚えやすくていいと思いますよ」


     ◇


 今日の依頼を探す。


「これなんてどう?」


 リリアーナが依頼書を指差す。


【街道周辺・商隊護衛】


【報酬:銀貨八枚】


「護衛か」


「三人になったから、こういう依頼も受けられる」


 ミリアが依頼書を見る。


「いいと思う」


「じゃあこれにしよう」


 依頼を受ける。


 依頼主は町の商人だった。


「よろしく頼む」


「こちらこそ」


 商隊は馬車二台。


 荷物を積んでいる。


 俺たちはその周囲を歩く。


 しばらく何も起こらない。


「平和だな」


「そうだね」


 リリアーナが周囲を見る。


 そのとき。


「止まって」


 俺が言った。


「どうした?」


「前方に何かいる」


 聴覚強化Ⅰ。


 索敵Ⅰ。


 そして視力強化Ⅰ。


 遠くを見る。


「魔物が八匹」


「どこ?」


「右の林」


 リリアーナが弓を構える。


「任せて」


「まだ待って」


「うん」


「商隊を止める」


 俺は商人に知らせる。


「魔物がいます」


「本当か?」


「はい」


 馬車を止める。


「迎え撃つ?」


「そうする」


 リリアーナが前へ出る。


「私が先に減らす」


「お願い」


 ヒュンッ!


 矢が飛ぶ。


 一匹。


 ヒュンッ!


 二匹。


 ヒュンッ!


 三匹。


「三匹倒した!」


 リリアーナが叫ぶ。


「残り五!」


 魔物が走ってくる。


 ミリアが杖を構える。


「火よ!」


 炎が飛ぶ。


 一匹倒れる。


「残り四!」


 俺が前へ出る。


 筋力強化Ⅰ。


 身体強化Ⅱ。


 俊足Ⅰ。


 剣を振る。


 重い。


 いつもより剣が軽く感じる。


「……これが筋力強化か」


 魔物の攻撃を避ける。


 反応速度強化Ⅰ。


 そのまま斬る。


 残り三。


「右!」


 リリアーナの声。


 振り返る。


 魔物が迫っている。


 矢。


 命中。


「助かった!」


「どういたしまして!」


 ミリアの魔法。


 火球。


 最後の一匹を倒す。


 静かになった。


「終わった」


 商人が驚いた顔で俺たちを見る。


「……随分と手際がいいな」


「三人だからです」


 俺が答える。


 リリアーナが笑う。


「うん。三人だから」


 ミリアも頷く。


「連携が良くなってきた」


 その言葉が嬉しかった。


 俺たちはまだ強くなり始めたばかりだ。


 それでも。


 三人で戦えば、できることが増えている。


     ◇


 護衛を終え、町へ戻る。


 報酬の銀貨八枚を受け取る。


「お疲れさまでした」


 リーゼが言う。


「今日は初めての正式な三人パーティーでしたね」


「はい」


「どうでした?」


 俺は二人を見る。


 ミリアは笑っている。


 リリアーナも笑っている。


「楽しかったです」


「私も」


「私も!」


 リーゼが微笑む。


「それならよかったです」


 ギルドを出る。


 夕方になっていた。


「なあ」


 俺は二人に声をかける。


「夕飯、どうする?」


「パン」


「パン!」


 二人の答えが重なった。


「……やっぱり?」


「だって今日は三人パーティー初日だから」


「記念日」


「じゃあ、少し豪華にするか」


「何があるの?」


「見てみよう」


 空中に【食玩】の画面を出す。


 商品一覧が並ぶ。


 パン。


 サンドイッチ。


 ドーナツ。


 ハンバーガー。


 ホットドッグ。


 そして。


「……」


 一つの商品で指が止まった。


【ベーグルサンド】


【価格:銅貨10枚】


「これにしよう」


「ベーグル?」


 リリアーナが首を傾げる。


「どんなパン?」


「食べれば分かる」


 三人分購入。


 紙袋が現れる。


 中には、丸くて真ん中に穴の空いたパン。


 その間に野菜とハムが挟まっている。


「いただきます」


 かじる。


 もちっ。


「……!」


 普通のパンとは違う。


 噛み応えがある。


 でも硬いわけじゃない。


 もちもちした生地。


 ハムの塩気。


 野菜のシャキシャキした食感。


 そこに少し酸味のあるソース。


「……美味い」


「これ好き」


 ミリアが目を輝かせる。


「もちもちしてる」


「本当だ」


 リリアーナもかじる。


「……これもいい」


 頬を緩ませる。


「私、これ好き」


「またお気に入りが増えたな」


「だって美味しいんだもん」


 三人でベーグルサンドを食べる。


 夕暮れの町。


 今日一日の疲れも、少しずつ抜けていく。


 そして。


「明日は何にする?」


 リリアーナが聞いてきた。


「もう明日の話か?」


「大事だから」


 ミリアも頷く。


「大事」


「……分かったよ」


 俺は笑った。


「明日、また考えよう」


 三人で笑う。


 こうして俺たちの三人パーティーは始まった。


 まだ冒険者としては駆け出し。


 まだ知らないことも多い。


 でも。


 仲間がいる。


 美味しいパンがある。


 そして、カードがある。


 なら。


 これからもっと楽しくなりそうだった。

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