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13/30

第13話 新しい仲間ができました。そして三人で食べる焼きたてカレーパンは最高です

 三日目の朝。


 俺は目を覚ますと、いつものように腹が減っていることに気づいた。


「……朝飯にするか」


 ベッドから起き上がる。


 空中に【食玩】の画面を出した。


 今日は何にしよう。


 昨日はソーセージパン。


 その前はホットドッグ。


 甘いものも食べたいが、朝から甘いパンという気分でもない。


 画面を眺めていると、目に入った。


【ベーコンエッグパン】


【価格:銅貨9枚】


「これだな」


 購入。


 ポンッ。


 いつもの紙袋が出てくる。


 袋を開けた瞬間、香ばしい匂いが鼻をくすぐった。


 丸いパンの上に、ベーコンと目玉焼きが乗っている。


 卵の黄身は半熟。


 ベーコンには軽く焼き色がついている。


「朝から強いな……」


 かじる。


 パンはふわふわ。


 その直後にベーコンの塩気と香ばしさ。


 そして半熟の卵。


 ぷつっと黄身が弾け、濃厚な味が口いっぱいに広がる。


「……うまい」


 卵とベーコン。


 それだけなのに、パンと一緒になると妙に満足感がある。


 ベーコンの脂がパンに少し染み込んでいて、それも美味しい。


 もう一口。


 今度は卵、ベーコン、パンを全部まとめて噛む。


 ふわっ。


 じゅわっ。


 とろっ。


「これ、かなり好きだな」


 朝飯を食べ終える。


 そしてカードを取り出す。


【SKILL CARD】


【反応速度強化Ⅰ】


「お」


 これも便利そうだ。


 カードを持って念じる。


「使う」


 光が消える。


『【反応速度強化Ⅰ】を習得しました』


「よし」


 俺はステータスを開いた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【アレン】


種族:人族

年齢:15歳

レベル:1


【体力】42

【魔力】18

【攻撃力】12

【防御力】11

【素早さ】13

【魔法力】15

【精神力】12


【習得スキル】


・言語理解

・初級剣術

・食玩

・身体強化Ⅰ

・身体強化Ⅱ

・火魔法Ⅰ

・鑑定Ⅰ

・気配察知Ⅰ

・火耐性Ⅰ

・料理Ⅰ

・剣術Ⅰ

・索敵Ⅰ

・火力強化Ⅰ

・俊足Ⅰ

・集中Ⅰ

・魔力操作Ⅰ

・打撃耐性Ⅰ

・防御力強化Ⅰ

・状態異常耐性Ⅰ

・視力強化Ⅰ

・聴覚強化Ⅰ

・反応速度強化Ⅰ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「悪くない」


 これで近接戦闘はかなり安定するだろう。


 俺がステータスを閉じたところで。


 コンコン。


「アレン?」


「ミリアか?」


「うん」


「入っていいぞ」


 扉が開く。


「おはよう」


「おはよう」


 ミリアは俺の顔を見るなり。


「何食べたの?」


「ベーコンエッグパン」


「……」


「食べる?」


「食べる」


 即答だった。


「分かった」


 もう一つ購入。


「はい」


「ありがとう」


 ミリアが紙袋を開ける。


 香りを嗅ぐ。


「いい匂い」


 一口。


「……美味しい」


「だろ?」


「卵がとろっとしてる」


「半熟だからな」


「これも好き」


「パンなら何でも好きじゃないか?」


「アレンが買ってくれるパンだから好き」


「……」


 またそれか。


 ミリアは最近、こういうことを普通に言うようになった。


 俺としては少し困る。


 嫌ではない。


 むしろ嬉しい。


 だから余計に困る。


「食べ終わったら行こう」


「うん」


     ◇


 ギルドへ向かうと、入口の前にリリアーナがいた。


「おはよう!」


「おはよう」


「おはようございます」


「待ってた!」


 リリアーナは俺を見る。


 そして俺の手を見る。


「……パン?」


「食べた」


「また?」


「朝飯だからな」


「私も欲しい」


「何がいい?」


「今日は……」


 リリアーナが少し考える。


「甘くないやつ」


「昨日もそう言ってたな」


「だって惣菜パン美味しいんだもん」


「じゃあ、ベーコンエッグパンは?」


「それにする」


 俺は購入した。


 リリアーナに渡す。


「ありがとう」


 袋を開けた瞬間、リリアーナの顔が緩んだ。


「いい匂い」


 そして一口。


「……!」


 昨日と同じ反応だ。


「美味しい」


「だろ?」


「卵がとろっとしてる」


「気に入った?」


「うん」


 リリアーナは嬉しそうに食べていく。


 その途中でカードに気づく。


「あ」


「カードだな」


「今日も付いてる」


 取り出す。


【SKILL CARD】


【風魔法Ⅰ】


「風魔法」


 リリアーナがカードを眺める。


「使っていいの?」


「もちろん」


「じゃあ……使う」


 カードが光る。


『【風魔法Ⅰ】を習得しました』


「……風魔法」


 リリアーナが手を開く。


「こう?」


「たぶん」


「やってみる」


 集中する。


 ふわっ。


 小さな風が起きた。


「できた!」


「おお」


「魔法って使えるんだ」


「カードならな」


 リリアーナは楽しそうだった。


「これ、凄いね」


「便利だろ?」


「うん」


 そして彼女は、ふと真面目な顔になる。


「アレン」


「ん?」


「私、今日相談したいことがある」


「相談?」


「依頼が終わってからでいい」


「分かった」


     ◇


 今日の依頼は、森の奥にある小さな採掘場までの護衛だった。


 鉱石を採掘する作業員を守りながら進む。


 昨日までの討伐依頼より少しだけ難しい。


 だが。


「前方、魔物」


 俺が言う。


「何匹?」


「六匹」


 リリアーナが弓を構える。


「任せて」


 ヒュンッ!


 一匹。


 ヒュンッ!


 二匹。


「残り四!」


 ミリアが火魔法を放つ。


「火よ!」


 炎が走る。


 一匹が吹き飛ぶ。


 俺は残った敵へ突っ込む。


 反応速度強化Ⅰ。


 身体強化Ⅱ。


 俊足Ⅰ。


 魔物の爪が迫る。


 今までよりも、その動きがはっきり見えた。


 右。


 避ける。


 次。


 左。


 剣を振る。


 倒す。


「あと一匹!」


 リリアーナの矢が飛ぶ。


 最後の一匹も倒れた。


「終わり」


「早いね」


 リリアーナが笑う。


「昨日より動きが良かった」


「朝のカードのおかげだな」


「私も風魔法、使ってみようかな」


「戦闘中に無理するなよ」


「分かってる」


 その後も何度か魔物が出た。


 そのたびに三人で対応した。


 俺が前。


 ミリアが魔法。


 リリアーナが弓。


 そして必要なら、リリアーナが風魔法で援護する。


 戦いを重ねるほど。


 三人の動きが噛み合っていく。


 俺が敵を引きつければ、リリアーナが射る。


 リリアーナが狙われれば、俺が間に入る。


 ミリアが魔法を使う時間が必要なら、二人で敵を抑える。


 自然とそういう動きができるようになっていた。


 採掘場へ到着する。


「助かったよ」


 依頼主の作業員が言う。


「帰りも頼む」


「もちろん」


 帰路につく。


 特に問題なく町へ戻る。


     ◇


 ギルドで依頼報告を終えた。


 報酬を受け取る。


 銀貨六枚。


「お疲れさまでした」


 リーゼが笑う。


「最近、三人で依頼を受けることが増えましたね」


「そうですね」


 リリアーナが答える。


「それで……」


 彼女が俺を見る。


「話したいことって?」


 俺が聞く。


「あのさ」


 リリアーナは少しだけ緊張した顔になった。


「私、二人にお願いがあるの」


「何?」


「これからも、一緒に冒険者をやりたい」


「……」


「昨日も今日も、一緒に依頼をして」


 リリアーナが続ける。


「すごく楽しかった」


 ミリアを見る。


 そして俺を見る。


「私も、このパーティーに入れてほしい」


 俺は少し考えた。


 答えは決まっている。


「俺は賛成」


「本当?」


「ああ」


 ミリアも頷く。


「私も」


「ありがとう……!」


 リリアーナの顔が一気に明るくなった。


「じゃあ、これからよろしく!」


「ああ」


「よろしく」


 三人で手を重ねる。


 こうして。


 俺たちのパーティーは正式に三人になった。


 アレン。


 ミリア。


 リリアーナ。


 まだまだ小さなパーティーだ。


 でも。


 これから少しずつ強くなっていけばいい。


「じゃあ、仲間になった記念に何か食べる?」


 俺が言うと。


「食べる!」


 リリアーナが即答した。


「私も」


 ミリアも頷く。


「じゃあ何にする?」


 空中に【食玩】の画面を出す。


 二人が覗き込む。


「これ!」


「どれ?」


 リリアーナが指を差した。


「カレーパン」


「昨日ミリアが食べてたやつ?」


「そう」


「じゃあ私もそれ」


「二人とも?」


「だって美味しいから」


「……まあ、いいか」


 三人分を購入する。


 ポンッ。


 紙袋が三つ。


 俺たちはギルドの外へ出て、近くのベンチに座った。


「いただきます」


 三人でカレーパンをかじる。


 ザクッ。


 揚げた衣が軽快な音を立てる。


 中から、とろりとしたカレー。


 スパイスの香りが広がる。


 肉の旨味。


 玉ねぎの甘み。


 少し辛くて、でもパンの優しい甘さがその辛さを包み込む。


「……美味しい」


 リリアーナが目を閉じる。


「やっぱりこれ好き」


 ミリアも嬉しそうに食べる。


「美味しい」


「二人とも気に入ったな」


 俺ももう一口。


 ザクッ。


 熱いカレーが口に広がる。


「うん。美味い」


 新しい仲間。


 新しいスキル。


 そして美味しいパン。


 今日は、かなりいい日だった。


「ねえ、アレン」


「ん?」


「明日は何のパン?」


「もう明日の話かよ」


「大事だから」


 ミリアも頷く。


「大事」


「……分かったよ」


 俺は笑った。


「明日、三人で選ぼう」


「うん!」


「楽しみ」


 三人の笑い声が、昼下がりの街に響いた。

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