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12/30

第12話 凄腕弓使いと二度目の依頼、そして焼きたてソーセージパン

 翌朝。


 目を覚まして、最初に思った。


「腹減った」


 昨日も同じことを考えた気がする。


 まあ、いい。


 俺には【食玩】がある。


 ベッドから起き上がり、空中に画面を出す。


【食玩】


【商品を選択してください】


「昨日はホットドッグだったからな」


 今日は別のものにしよう。


 惣菜パンの一覧を見る。


 いくつか気になるものが並んでいる。


 その中から一つ。


【ソーセージパン】


【価格:銅貨7枚】


「これだな」


 購入。


 ポンッ。


 紙袋が現れる。


 袋を開けた瞬間、香ばしい匂いが漂った。


「……これは朝から強いな」


 パンの上にソーセージが一本乗っている。


 表面には焼き色。


 パンそのものもほんのり焼けている。


 持ち上げると、柔らかい。


「いただきます」


 かじる。


 パンがふわっと歯に沈む。


 続いてソーセージ。


 パリッ。


 肉汁がじゅわっと広がる。


 塩気と肉の旨味。


 パンのほんのりした甘み。


 そこにソーセージの香ばしさが加わる。


「……美味い」


 ホットドッグとはまた違う。


 ホットドッグにはケチャップやマスタードがあった。


 こっちはもっとシンプル。


 だからこそ、ソーセージそのものの味がよく分かる。


 もう一口。


 ふわっ。


 パリッ。


 じゅわっ。


「朝からこれは反則だろ」


 あっという間に食べ終わった。


 袋からカードを取り出す。


【SKILL CARD】


【聴覚強化Ⅰ】


「聴覚強化か」


 これも便利そうだ。


 カードを持って念じる。


「使う」


 光。


『【聴覚強化Ⅰ】を習得しました』


 ステータスを開く。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【アレン】


種族:人族

年齢:15歳

レベル:1


【体力】42

【魔力】18

【攻撃力】12

【防御力】11

【素早さ】13

【魔法力】15

【精神力】12


【習得スキル】


・言語理解

・初級剣術

・食玩

・身体強化Ⅰ

・身体強化Ⅱ

・火魔法Ⅰ

・鑑定Ⅰ

・気配察知Ⅰ

・火耐性Ⅰ

・料理Ⅰ

・剣術Ⅰ

・索敵Ⅰ

・火力強化Ⅰ

・俊足Ⅰ

・集中Ⅰ

・魔力操作Ⅰ

・打撃耐性Ⅰ

・防御力強化Ⅰ

・状態異常耐性Ⅰ

・視力強化Ⅰ

・聴覚強化Ⅰ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「これで索敵がさらにやりやすくなりそうだ」


 俺はステータスを閉じた。


 そのとき。


 コンコン。


「アレン?」


「起きてる」


「入っていい?」


「ああ」


 ミリアが入ってくる。


「おはよう」


「おはよう」


 ミリアが俺を見る。


 そして。


「……今日のパンは?」


「ソーセージパン」


「食べたい」


「分かってる」


 俺は一つ購入。


「はい」


「ありがとう」


 ミリアが袋を開ける。


「……いい匂い」


 一口。


 パリッ。


「美味しい」


「だろ?」


「昨日のホットドッグとは違うね」


「こっちはシンプルだからな」


「でも好き」


「何でも好きだな」


「アレンのパンだから」


「……」


 不意打ちだった。


「そういう言い方すると、俺が特別みたいじゃないか」


「特別だよ?」


「……そうか」


 俺は何も言えなくなった。


     ◇


 ギルドへ向かう。


 入口近くで、誰かが手を振っている。


「あ、アレン!」


 リリアーナだった。


「おはよう」


「おはよう!」


 今日は昨日と違い、軽装の防具を身につけている。


 弓も持っている。


「待ってたの?」


「うん」


「早いな」


「楽しみだったから」


「何が?」


「依頼」


 リリアーナはそう言ったが。


 ちらっと俺の手を見る。


「……パンは?」


「食べた」


「ずるい」


「朝食だぞ」


「私も食べたかった」


「じゃあ今買うか?」


「いいの?」


「もちろん」


 俺は【食玩】を開く。


「何がいい?」


「昨日甘いのだったから、今日はしょっぱいの」


「じゃあソーセージパンは?」


「それにする」


 購入。


「はい」


「ありがとう」


 リリアーナが袋を開ける。


 香りを嗅ぐ。


「……いい匂い」


 そして一口。


「……!」


 目を見開いた。


「何これ」


「ソーセージパン」


「それは分かるけど……」


 もう一口。


 パリッ。


 肉汁。


「美味しい」


「だろ?」


「昨日のチョココロネも美味しかったけど、こっちも好き」


「じゃあ今日のところは合格だな」


「何その言い方」


 リリアーナが笑う。


 そして、ふと袋を見る。


「……カード」


「ああ」


「今日は何かな」


 取り出す。


【SKILL CARD】


【持久力強化Ⅰ】


「持久力強化」


「弓使いには良さそう」


「使う?」


「うん」


 リリアーナがカードを持つ。


「使う」


 光。


『【持久力強化Ⅰ】を習得しました』


「……これ、凄いね」


「カードはランダムだから、何が出るかは分からない」


「でも、こういうのが毎回付いてくるんでしょ?」


「ああ」


「やっぱり凄いスキルだよ」


 リリアーナは嬉しそうに笑った。


     ◇


 今日の依頼は、森の浅い場所に出る魔物の討伐。


 三人で森へ向かった。


「昨日より森が深いね」


「でも、浅い場所だ」


 俺は索敵Ⅰを使う。


 昨日手に入れた聴覚強化Ⅰも試す。


「……」


 風。


 木の葉。


 鳥。


 遠くの動物。


 そして。


「前方に魔物」


「何匹?」


「四匹」


 リリアーナが弓を構える。


「距離は?」


「五十メートルくらい」


「見えないけど」


「俺には分かる」


「便利だね」


「昨日のカードのおかげだな」


 リリアーナが笑う。


「じゃあ、任せて」


 弓を引く。


 矢を放つ。


 ヒュンッ!


 遠くで魔物が倒れる。


「一匹」


 続けて。


 ヒュンッ!


 二匹。


「すごいな」


「ありがとう」


 残り二匹がこちらへ走ってくる。


「来る!」


 ミリアが魔法を放つ。


 火球が飛ぶ。


 一匹を吹き飛ばす。


 もう一匹。


 俺が前に出る。


 身体強化Ⅱ。


 俊足Ⅰ。


 剣を振る。


 倒す。


「終わり」


「三人だと楽だね」


 リリアーナが言う。


「そうだな」


 俺も実感していた。


 二人のときより戦いやすい。


 ミリアが魔法で援護。


 リリアーナが遠距離から敵を削る。


 俺が近づいて仕留める。


 役割が綺麗に分かれている。


「この三人、結構相性いいかも」


「私もそう思う」


 リリアーナが笑う。


     ◇


 森の中を進む。


 何度か魔物と遭遇したが、問題なく倒せた。


 昼になる。


「休憩しよう」


「賛成」


 木陰に座る。


「昼は何にする?」


 俺が聞く。


「私は昨日のチョココロネ」


 リリアーナが答える。


「また?」


「美味しかったから」


「ミリアは?」


「カレーパン」


「二人とも昨日と同じか」


「好きなものを食べるのが一番」


 ミリアが当然のように言う。


「それもそうだな」


 俺はそれぞれ購入する。


 紙袋が三つ。


 リリアーナはチョココロネ。


 ミリアはカレーパン。


 俺はサンドイッチにした。


【たまごサンド】


【価格:銅貨8枚】


「これにする」


 袋を開ける。


 パンの間に、たっぷりの卵。


 黄色い卵が白いパンに挟まれている。


 持ち上げると柔らかい。


「いただきます」


 かじる。


 ふわっ。


 パンが柔らかい。


 その中に、卵のまろやかな味。


 ほんのり塩気。


 マヨネーズのコク。


 卵の優しい甘さ。


「……うまい」


 シンプルなのに美味しい。


 パンと卵だけなのに、満足感がある。


 もう一口。


 卵がたっぷり入っている。


 口の中いっぱいに、卵の風味が広がる。


「これは朝食にもいいな」


「一口もらっていい?」


 リリアーナが聞く。


「いいぞ」


 一口渡す。


「……」


 リリアーナが咀嚼する。


「これも美味しい」


「だろ?」


「アレンのスキル、便利すぎない?」


「俺もそう思う」


 ミリアもたまごサンドを一口。


「美味しい」


「カレーパン食べてるのに?」


「別腹」


「パンに別腹なんてあるのか?」


「ある」


 ミリアは真顔だった。


「そうか」


 俺は納得することにした。


     ◇


 昼食を終えて、依頼を続ける。


 その途中。


「待って」


 リリアーナが突然立ち止まった。


「どうした?」


「音がする」


 俺も聴覚強化Ⅰを使う。


「……本当だ」


 遠くから複数の足音。


「十匹くらい」


「多いね」


「来る」


 木々の間から魔物が現れた。


 ゴブリン。


 十匹。


「多い!」


 ミリアが杖を構える。


「私がまとめて攻撃する!」


「お願い!」


 俺は前に出る。


 ゴブリンが迫る。


 身体強化Ⅱ。


 俊足Ⅰ。


 剣を振る。


 一匹。


 二匹。


 三匹。


 だが、数が多い。


 後ろから別のゴブリンが来る。


「アレン、右!」


 リリアーナの矢。


 ヒュンッ!


 ゴブリンが倒れる。


「助かった!」


「まだいる!」


 リリアーナが次々に矢を放つ。


 ヒュン。


 ヒュン。


 ヒュン。


 正確に敵を射抜く。


 ミリアが魔法を放つ。


「火よ!」


 炎が広がる。


 残りのゴブリンが吹き飛ぶ。


「あと二匹!」


「任せて!」


 俺が走る。


 一匹を斬る。


 もう一匹。


 剣を振る。


 終わり。


「……ふう」


 静かになった。


「全員倒した?」


「うん」


 リリアーナが周囲を見る。


「すごいね」


「三人だったからな」


「私たち、かなり強いんじゃない?」


「まだ新人だけどな」


「それでも」


 リリアーナが笑う。


「一緒にいると楽しい」


「俺もそう思う」


 ミリアも頷いた。


「私も」


 その言葉に。


 なんとなく、胸が温かくなった。


     ◇


 依頼を終え、町へ戻る。


 ギルドで報告する。


「お疲れさまでした」


 リーゼが討伐証明を確認する。


「依頼達成です」


 報酬を受け取る。


 銀貨五枚。


「ありがとうございます」


「それと」


 リーゼがリリアーナを見る。


「昨日に続いて、今日もアレンさんたちと一緒だったんですね」


「はい」


 リリアーナが笑う。


「明日も一緒に行こうと思ってます」


「そうですか」


 リーゼは微笑んだ。


「三人だと、依頼の幅も広がりそうですね」


「そうですね」


 俺も頷く。


 リリアーナが俺を見る。


「明日は何のパンにする?」


「もう食べ物の話か?」


「大事でしょ」


「まあな」


「私はまだ食べてないパンを食べたい」


「じゃあ明日は新しいのを探そう」


「楽しみ」


 リリアーナが笑う。


 ミリアも隣で笑っている。


 俺たちは三人でギルドを出た。


 まだリリアーナは正式な仲間ではない。


 けれど。


 昨日より確実に距離は近くなった。


 そして俺は思った。


 明日も三人で依頼を受ける。


 それなら。


 明日のパンも、三人で食べることになる。


 ――それが、なんとなく楽しみだった。

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