第12話 凄腕弓使いと二度目の依頼、そして焼きたてソーセージパン
翌朝。
目を覚まして、最初に思った。
「腹減った」
昨日も同じことを考えた気がする。
まあ、いい。
俺には【食玩】がある。
ベッドから起き上がり、空中に画面を出す。
【食玩】
【商品を選択してください】
「昨日はホットドッグだったからな」
今日は別のものにしよう。
惣菜パンの一覧を見る。
いくつか気になるものが並んでいる。
その中から一つ。
【ソーセージパン】
【価格:銅貨7枚】
「これだな」
購入。
ポンッ。
紙袋が現れる。
袋を開けた瞬間、香ばしい匂いが漂った。
「……これは朝から強いな」
パンの上にソーセージが一本乗っている。
表面には焼き色。
パンそのものもほんのり焼けている。
持ち上げると、柔らかい。
「いただきます」
かじる。
パンがふわっと歯に沈む。
続いてソーセージ。
パリッ。
肉汁がじゅわっと広がる。
塩気と肉の旨味。
パンのほんのりした甘み。
そこにソーセージの香ばしさが加わる。
「……美味い」
ホットドッグとはまた違う。
ホットドッグにはケチャップやマスタードがあった。
こっちはもっとシンプル。
だからこそ、ソーセージそのものの味がよく分かる。
もう一口。
ふわっ。
パリッ。
じゅわっ。
「朝からこれは反則だろ」
あっという間に食べ終わった。
袋からカードを取り出す。
【SKILL CARD】
【聴覚強化Ⅰ】
「聴覚強化か」
これも便利そうだ。
カードを持って念じる。
「使う」
光。
『【聴覚強化Ⅰ】を習得しました』
ステータスを開く。
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【アレン】
種族:人族
年齢:15歳
レベル:1
【体力】42
【魔力】18
【攻撃力】12
【防御力】11
【素早さ】13
【魔法力】15
【精神力】12
【習得スキル】
・言語理解
・初級剣術
・食玩
・身体強化Ⅰ
・身体強化Ⅱ
・火魔法Ⅰ
・鑑定Ⅰ
・気配察知Ⅰ
・火耐性Ⅰ
・料理Ⅰ
・剣術Ⅰ
・索敵Ⅰ
・火力強化Ⅰ
・俊足Ⅰ
・集中Ⅰ
・魔力操作Ⅰ
・打撃耐性Ⅰ
・防御力強化Ⅰ
・状態異常耐性Ⅰ
・視力強化Ⅰ
・聴覚強化Ⅰ
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「これで索敵がさらにやりやすくなりそうだ」
俺はステータスを閉じた。
そのとき。
コンコン。
「アレン?」
「起きてる」
「入っていい?」
「ああ」
ミリアが入ってくる。
「おはよう」
「おはよう」
ミリアが俺を見る。
そして。
「……今日のパンは?」
「ソーセージパン」
「食べたい」
「分かってる」
俺は一つ購入。
「はい」
「ありがとう」
ミリアが袋を開ける。
「……いい匂い」
一口。
パリッ。
「美味しい」
「だろ?」
「昨日のホットドッグとは違うね」
「こっちはシンプルだからな」
「でも好き」
「何でも好きだな」
「アレンのパンだから」
「……」
不意打ちだった。
「そういう言い方すると、俺が特別みたいじゃないか」
「特別だよ?」
「……そうか」
俺は何も言えなくなった。
◇
ギルドへ向かう。
入口近くで、誰かが手を振っている。
「あ、アレン!」
リリアーナだった。
「おはよう」
「おはよう!」
今日は昨日と違い、軽装の防具を身につけている。
弓も持っている。
「待ってたの?」
「うん」
「早いな」
「楽しみだったから」
「何が?」
「依頼」
リリアーナはそう言ったが。
ちらっと俺の手を見る。
「……パンは?」
「食べた」
「ずるい」
「朝食だぞ」
「私も食べたかった」
「じゃあ今買うか?」
「いいの?」
「もちろん」
俺は【食玩】を開く。
「何がいい?」
「昨日甘いのだったから、今日はしょっぱいの」
「じゃあソーセージパンは?」
「それにする」
購入。
「はい」
「ありがとう」
リリアーナが袋を開ける。
香りを嗅ぐ。
「……いい匂い」
そして一口。
「……!」
目を見開いた。
「何これ」
「ソーセージパン」
「それは分かるけど……」
もう一口。
パリッ。
肉汁。
「美味しい」
「だろ?」
「昨日のチョココロネも美味しかったけど、こっちも好き」
「じゃあ今日のところは合格だな」
「何その言い方」
リリアーナが笑う。
そして、ふと袋を見る。
「……カード」
「ああ」
「今日は何かな」
取り出す。
【SKILL CARD】
【持久力強化Ⅰ】
「持久力強化」
「弓使いには良さそう」
「使う?」
「うん」
リリアーナがカードを持つ。
「使う」
光。
『【持久力強化Ⅰ】を習得しました』
「……これ、凄いね」
「カードはランダムだから、何が出るかは分からない」
「でも、こういうのが毎回付いてくるんでしょ?」
「ああ」
「やっぱり凄いスキルだよ」
リリアーナは嬉しそうに笑った。
◇
今日の依頼は、森の浅い場所に出る魔物の討伐。
三人で森へ向かった。
「昨日より森が深いね」
「でも、浅い場所だ」
俺は索敵Ⅰを使う。
昨日手に入れた聴覚強化Ⅰも試す。
「……」
風。
木の葉。
鳥。
遠くの動物。
そして。
「前方に魔物」
「何匹?」
「四匹」
リリアーナが弓を構える。
「距離は?」
「五十メートルくらい」
「見えないけど」
「俺には分かる」
「便利だね」
「昨日のカードのおかげだな」
リリアーナが笑う。
「じゃあ、任せて」
弓を引く。
矢を放つ。
ヒュンッ!
遠くで魔物が倒れる。
「一匹」
続けて。
ヒュンッ!
二匹。
「すごいな」
「ありがとう」
残り二匹がこちらへ走ってくる。
「来る!」
ミリアが魔法を放つ。
火球が飛ぶ。
一匹を吹き飛ばす。
もう一匹。
俺が前に出る。
身体強化Ⅱ。
俊足Ⅰ。
剣を振る。
倒す。
「終わり」
「三人だと楽だね」
リリアーナが言う。
「そうだな」
俺も実感していた。
二人のときより戦いやすい。
ミリアが魔法で援護。
リリアーナが遠距離から敵を削る。
俺が近づいて仕留める。
役割が綺麗に分かれている。
「この三人、結構相性いいかも」
「私もそう思う」
リリアーナが笑う。
◇
森の中を進む。
何度か魔物と遭遇したが、問題なく倒せた。
昼になる。
「休憩しよう」
「賛成」
木陰に座る。
「昼は何にする?」
俺が聞く。
「私は昨日のチョココロネ」
リリアーナが答える。
「また?」
「美味しかったから」
「ミリアは?」
「カレーパン」
「二人とも昨日と同じか」
「好きなものを食べるのが一番」
ミリアが当然のように言う。
「それもそうだな」
俺はそれぞれ購入する。
紙袋が三つ。
リリアーナはチョココロネ。
ミリアはカレーパン。
俺はサンドイッチにした。
【たまごサンド】
【価格:銅貨8枚】
「これにする」
袋を開ける。
パンの間に、たっぷりの卵。
黄色い卵が白いパンに挟まれている。
持ち上げると柔らかい。
「いただきます」
かじる。
ふわっ。
パンが柔らかい。
その中に、卵のまろやかな味。
ほんのり塩気。
マヨネーズのコク。
卵の優しい甘さ。
「……うまい」
シンプルなのに美味しい。
パンと卵だけなのに、満足感がある。
もう一口。
卵がたっぷり入っている。
口の中いっぱいに、卵の風味が広がる。
「これは朝食にもいいな」
「一口もらっていい?」
リリアーナが聞く。
「いいぞ」
一口渡す。
「……」
リリアーナが咀嚼する。
「これも美味しい」
「だろ?」
「アレンのスキル、便利すぎない?」
「俺もそう思う」
ミリアもたまごサンドを一口。
「美味しい」
「カレーパン食べてるのに?」
「別腹」
「パンに別腹なんてあるのか?」
「ある」
ミリアは真顔だった。
「そうか」
俺は納得することにした。
◇
昼食を終えて、依頼を続ける。
その途中。
「待って」
リリアーナが突然立ち止まった。
「どうした?」
「音がする」
俺も聴覚強化Ⅰを使う。
「……本当だ」
遠くから複数の足音。
「十匹くらい」
「多いね」
「来る」
木々の間から魔物が現れた。
ゴブリン。
十匹。
「多い!」
ミリアが杖を構える。
「私がまとめて攻撃する!」
「お願い!」
俺は前に出る。
ゴブリンが迫る。
身体強化Ⅱ。
俊足Ⅰ。
剣を振る。
一匹。
二匹。
三匹。
だが、数が多い。
後ろから別のゴブリンが来る。
「アレン、右!」
リリアーナの矢。
ヒュンッ!
ゴブリンが倒れる。
「助かった!」
「まだいる!」
リリアーナが次々に矢を放つ。
ヒュン。
ヒュン。
ヒュン。
正確に敵を射抜く。
ミリアが魔法を放つ。
「火よ!」
炎が広がる。
残りのゴブリンが吹き飛ぶ。
「あと二匹!」
「任せて!」
俺が走る。
一匹を斬る。
もう一匹。
剣を振る。
終わり。
「……ふう」
静かになった。
「全員倒した?」
「うん」
リリアーナが周囲を見る。
「すごいね」
「三人だったからな」
「私たち、かなり強いんじゃない?」
「まだ新人だけどな」
「それでも」
リリアーナが笑う。
「一緒にいると楽しい」
「俺もそう思う」
ミリアも頷いた。
「私も」
その言葉に。
なんとなく、胸が温かくなった。
◇
依頼を終え、町へ戻る。
ギルドで報告する。
「お疲れさまでした」
リーゼが討伐証明を確認する。
「依頼達成です」
報酬を受け取る。
銀貨五枚。
「ありがとうございます」
「それと」
リーゼがリリアーナを見る。
「昨日に続いて、今日もアレンさんたちと一緒だったんですね」
「はい」
リリアーナが笑う。
「明日も一緒に行こうと思ってます」
「そうですか」
リーゼは微笑んだ。
「三人だと、依頼の幅も広がりそうですね」
「そうですね」
俺も頷く。
リリアーナが俺を見る。
「明日は何のパンにする?」
「もう食べ物の話か?」
「大事でしょ」
「まあな」
「私はまだ食べてないパンを食べたい」
「じゃあ明日は新しいのを探そう」
「楽しみ」
リリアーナが笑う。
ミリアも隣で笑っている。
俺たちは三人でギルドを出た。
まだリリアーナは正式な仲間ではない。
けれど。
昨日より確実に距離は近くなった。
そして俺は思った。
明日も三人で依頼を受ける。
それなら。
明日のパンも、三人で食べることになる。
――それが、なんとなく楽しみだった。




