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Seventh Remnant ―竜王の牙を継いだ少女―  作者: 星野 澄夜
罪を背負った最後の竜王(5)
5/15

0-5 竜の牙

だが。


すべての竜牙が記録されたわけではなかった。


戦場が混乱と歓喜に包まれていたその時。


一つの牙が、誰にも気づかれることなく飛び去っていた。


漆黒の竜牙。


それは崩れゆく闇竜王の躯から弾き出されるように放たれた。


英雄の手には渡らなかった。


聖教会にも回収されなかった。


王国の宝物庫へ収められることもなかった。


黒き牙は燃え続ける空を貫き。


灰に染まった夜を駆け抜ける。


まるで誰にも願われなかった流星のように。


誰にも知られることなく。


誰にも追われることなく。


ただ静かに戦場を離れていった。


それから長い歳月が流れる。


牙は一人の商人によって拾われた。


貴族へ売られ。


職人の手に渡り。


やがて一本の武器へと姿を変える。


漆黒の刃。


闇を切り取ったかのような黒い武器だった。


それは金庫に収められたこともあった。


豪奢な宴で披露されたこともあった。


その切れ味を称賛する者もいた。


不吉な色に眉をひそめる者もいた。


だが。


誰も知らなかった。


その武器が。


かつて最後の竜王の牙だったことを。


時は流れる。


王国は興り、滅びる。


戦争は始まり、終わる。


人々は生まれ、死んでいく。


それでも黒き武器だけは残り続けた。


持ち主を変えながら。


幾度も。


幾度も。


そしてある時。


長い輸送の途中で、その武器は元の主人の手を離れる。


そのまま遥か東方へと流れ着いた。


誰も気に留めなかった。


世界にはすでに無数の竜骸の遺物が存在していたからだ。


たった一つの武器が失われたところで、歴史は振り返らない。


記録にも残らない。


語り継がれることもない。


だから誰も知らなかった。


その牙がまだ眠っていることを。


幾人もの手を渡りながら。


忘れ去られた箱の中で。


長い旅路の果てで。


ただ静かに眠り続けていたことを。


そして――


その眠りが終わる日が訪れる。


名もなき村へ辿り着いた時。


一人の少女と出会った時。


灰色の髪。


銀色の瞳。


その出会いこそが。


終わったはずの物語を再び動かすことになる。


竜は滅びた。


世界中の誰もがそう信じていた。


最後の竜王は死んだ。


竜族の時代は終わった。


もう二度と竜が現れることはない。


少なくとも――


人間たちは、そう信じていた。

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