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Seventh Remnant ―竜王の牙を継いだ少女―  作者: 星野 澄夜
罪を背負った最後の竜王(2)
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0-2 竜の罪

数十万にも及ぶ連合軍が戦場を取り囲んでいた。


各国の旗が風にはためく。


騎士。


兵士。


魔導師。


傭兵。


そして戦火を生き延びた人々。


この場には、あらゆる者が集まっていた。


誰もが闇竜王を見上げている。


その瞳に宿るのは怒り。


憎悪。


そして、ようやく終わりを迎えたという安堵だった。


だが。


誰一人として近づこうとはしなかった。


敗北したとはいえ、そこに立つのは竜王だからだ。


長い沈黙が続いた。


やがて、一人の男が連合軍の中から歩み出る。


傷だらけの鎧。


血に染まった剣。


男は一歩ずつ闇竜王へ近づいていった。


それは連合軍を勝利へ導いた英雄だった。


英雄は立ち止まり、黄金の竜瞳を見上げる。


そして静かに問うた。


「最後の竜王よ」


「お前は己の罪を認めるか」


荒野を風が吹き抜けた。


闇竜王はゆっくりと首を下ろし、眼前の人間を見つめる。


そして――笑った。


狂気はない。


怒りもない。


恐怖さえなかった。


そこにあったのは、どこまでも傲慢な静けさだけだった。


「認めよう」


低く響く声が天地を震わせる。


人々がざわめいた。


英雄は続ける。


「この戦争を始めたのはお前か」


「そうだ」


「滅ぼされた都市は、お前の手によるものか」


「そうだ」


「死んでいった者たちを殺したのも、お前か」


「そうだ」


問いが重なる。


答えは変わらない。


否定しない。


弁明しない。


迷いもしない。


まるで。


世界中の罪を一身に背負うことこそ、自らの役目であるかのように。


罵声が飛び交った。


怒号が響いた。


だが闇竜王は微動だにしない。


その時だった。


――本当に、お前らしくないな。


不意に。


懐かしい声が記憶の底から聞こえた。


炎竜王だった。


豪放で荒々しく、永遠に燃え続ける炎のような声。


――こいつは昔からこうだろ?


今度は風竜王が笑う。


どこまでも気ままで、掴みどころのない声だった。


――こんな時まで喧嘩する気ですか。


水竜王が呆れたようにため息をつく。


闇竜王は答えない。


ただ静かに燃える空を見上げた。


そこには何もない。


何もないはずだった。


それでも彼には見えていた。


五つの影が。


炎竜王はいつも先頭を駆けていた。


水竜王はいつも冷静すぎるほど冷静だった。


地竜王は山のように寡黙だった。


風竜王は一度も立ち止まらなかった。


そして光竜王は。


いつも最後尾から皆を見守っていた。


――本当に残るつもりか。


光竜王の声は静かだった。


闇竜王は心の中で答える。


誰かが残らなければならない。


――それはお前ではない。


地竜王の低い声が響く。


誰よりも私が適任だ。


闇竜王はそう返した。


あまりにも静かに。


あまりにも冷たく。


――馬鹿な真似をしやがって。


炎竜王が吐き捨てる。


すると闇竜王は小さく笑った。


ならば殺されればいい。


その言葉は風の中へ溶けていった。


破れた翼を風が撫でる。


英雄はなおも彼を見据えていた。


「何か言い残すことはないのか」


闇竜王は英雄を見る。


連合軍を見る。


そして。


罪人を必要としている世界を見る。


しばらくの沈黙の後。


闇竜王はゆっくりと口を開いた。


「今日より先――」


その声は静かだった。


だが誰よりも鮮明だった。


「これが私の罪だ」


その瞬間。


戦場から音が消えた。


誰も意味を理解できなかった。


だがその言葉だけは、奇妙なほど深く人々の胸に刻み込まれる。


英雄はしばらく黙っていた。


やがて剣を掲げる。


「世界の名の下に」


「連合軍の名の下に」


そして高らかに宣言した。


「最後の裁きを執行する」


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