誕生日プレゼント
「オリビア、誕生日おめでとう」
「お父さまありがとう!」
「おめでとう、オリビアさん」
「お母さまもありがとう」
今日は私、オリビアの八歳の誕生日だ。
公爵家のお嬢様なら外からお客様を招いて、大々的なパーティーを開くものなんだろうし、そうされそうだったけど、今回ばかりは家族のみでやる小規模なものに抑えてもらった。
なんせ前世の記憶を思い出してからまだまだ日が浅い。本物のお貴族様たちに囲まれたらボロが出てしまいそうだ。いいお家に嫁ぐ将来設計をしている以上、失態を見せるくらいならいっそ見せない方がいいと判断したのだ。
「オリビア、これ誕生日プレゼント。開けてみて」
「何かしら……、あっ、カバン!可愛い!」
「容量拡大魔法と軽量化魔法がかかってるから、たくさん入るし軽いよ」
「ありがとうお兄さま!とっても嬉しい!」
お兄さまがくれた誕生日プレゼントは白い肩掛けカバンだった。中に手を突っ込むと、見た目よりずっと奥行きがある。
女神様のところに素材回収にいくことがあるんだけど、手頃なカバンがないから不便だと話していたのを覚えていてくれたらしい。
なにせオリビアはお嬢さま。本来なら自分で荷物を持つ必要がないので、カバンなんてほとんど持ってない。あるとしても、ハンカチくらいしか入らない小さいやつだけ。
「オリビア、まだ僕たちからプレゼントがあるんだ」
「さっきもらったわ?」
お母さまからは新しい裁縫セット、お父さまからはいろんな素材をたくさん。すでに誕生日プレゼントはもらっている。
「それとは別にね」
お父さまが執事のセバスを呼ぶと、セバスはひと抱えはあるバスケットを持って現れた。
布がかかっていて、中身は見えない。だけど、もぞもぞと中身が動いている。その内に、ぴょこんとピンク色をした鼻が覗いた。
「……犬?」
バスケットの中にいたのは小さな犬だった。真っ白い綿毛みたいな毛並みで、前世の知識で言うとポメラニアンみたいな犬。首にやたらとごつい首輪がついているけれど、犬自体はとても可愛い。
可愛いが、しかしどうして犬なのか。飼いたいとせがんだ覚えもなし、不思議に思っているとお父さまが言った。
「この前、ノルン伯爵家で犬を欲しそうにしていただろう?」
ノルン伯爵家というのはお母さまの実家だ。お母さまの弟の子ども、姪っ子らしいけど、その誕生日祝いに私もついて行ったことがある。
その家では大きくて白い犬が飼われていた。白くて大きいモフモフの犬で、たいそう可愛がられていた。
ご飯を食べるだけで褒められ、尻尾を振るだけで喜ばれる犬。その暮らしが羨ましすぎてモフりながら「いいなあ……」とつぶやいたのを聞かれていたらしい。
「……ありがとう、お父さま。この子はお母さまのご実家のわんちゃんの子どもなの?」
「それが違うの」
私の疑問に答えたのはお母さまだった。頬に手を当てながら、彼女は言う。
「オリビアさんの誕生日プレゼントを買いに行く途中で道端で売られているこの子を見つけたんだけど、あまりいい扱いは受けていなかったようだから可哀想で……。つい買ってしまったの。オリビアさんも家族として可愛がってくれると嬉しいわ」
元々は犬をプレゼントにする予定はなかったらしい。
繰り返すが、私は犬を飼いたいわけじゃなかった。しかしすでにうちに来てしまったのは事実だし、お母様の言葉に頷いたのだった。




