第七十三話
まだまだ続くぜクリスマス編!
今回は甘さは無いけど熱さ?はあるかも!
「それじゃあ!一時間後に集合ね!」
この一言で、俺と暦月は一時別行動をとることとなった。
そもそも、暦月がゲーセンを出てショッピングモールに着いたときに言ったセリフが原因なのだ。
『今から2人でプレゼント買って、交換しない?』
と。
サプライズ性を高めるため、それぞれ別行動をとることとなった。
しかし…………暦月って何が欲しいんだ?
考えてみればそのへんの話はしたことがなかった。
ちょっと反省。
とりあえず、その辺の店を回ってみる。
こういうのって無難にハズレのない物を選んでた方がいいよなぁ………
そう思い、その辺をぶらぶらしていると、見覚えのある男を見つけた。
そいつもこっちに気付いたのか、こちらへ駆け寄る。
「よぉっ!何やってるだ紅葉?」
「天也………」
そう天也である。
天也はあの一件以来、普通に仲良くなって、今ではなんの問題もなく話すぐらいにはなった。
「それはこっちのセリフ。わざわざクリスマスに何しての?」
「ん?俺か?まぁ俺はあれだ。一緒にクリスマスを過ごす相手がいないから絶賛探し中だ」
「探し中?ナンパ?」
「あんな無粋な物と一緒にするな。俺は俺と同じように寂しい思いをしている女子に優しく声をかけるだけだ」
「ナンパじゃねぇか」
「心意気が違う!俺は暦月さんに言われたんだ。誠意を持つことだ大切だと。きっかけなんて関係ない。一緒にいたいと思うことが大事なんだ………!」
「お前…………図太いなぁ………」
「まま、そんなことより紅葉こそ何やってるんだよ。クリスマスなのに暦月さんと一緒じゃないのか?」
「あー、それがさ…………」
俺は暦月と別行動を取っている経緯を話した。
「なるほど………それでプレゼントに困っていると」
「そうなんだよ。まぁ、適当に当り障りのないものでも………」
「んー、それはダメじゃないか?」
俺がプレゼントの話をすると、天也は難しい顔をして、否定する。
「せっかく別行動をとったんだから、もっと特別なものにしとくべきじゃないか?暦月さんは紅葉が選んだ物が欲しいんだろ?教科書に載ってるような模範解答の誰かが選んだ物はあまり嬉しくないんじゃないか?」
「あ、なるほど……………。たしかにそういうものは保険として買っておけば問題はないしな。少し冒険をすべきと………」
「そうそう!」
「おぉ!ありがとう」
「気にするな!俺はお前より優れているからな!」
くっ、うっぜぇ…………
仲良くなったのはいいが、俺に勝ったのがよほど嬉しいのか、ことあるごとにこのセリフを使ってくる。
ほんと、図太い人間だ。
最近は俺も暦月もはいはいくらいで流している。
とはいえ、今回のアドバイスは正直助かった。
よく考えてみれば、暦月のことだからセミの抜け殻とかでも瓶に保存して喜びそうだし、あっちに気を使わず、俺があげたい物をあげればいいんだ。
「まぁ、助かったよ。ありがとう」
「…………ちょっと待て」
「ん?」
行こうとしたときに、天也が呼び止める。
「やっぱり、俺もプレゼント選び手伝おう」
「えっ」
「安心しろ。俺は暦月さんにプレゼントを渡したりしないし、集合するときもついて行ったりしない。ただ、あのときの詫びと礼として、手助けしたいんだ」
「んー、じゃあよろしくするよ」
「あぁ!」
そう言うと、天也は嬉しそうに笑う。
好きだった人。嫌いだった人。
全てを乗り越え、こうしてプレゼント選びを手伝うと言うのだ。
本当に図太い男だ………
◇
「んー。つっても、何あげればいいんだろう」
「何をあげたいかだろう?」
「それはわかってるんだけど…………俺的にはやっぱり暦月が喜ぶ物をあげたいし………」
「んー。暦月さんが喜ぶだけじゃなくて、2人にとってプラスになるような物がいいんじゃないか?」
「プラス?」
「そう。暦月さんが一方的に嬉しいんじゃなくて、それで紅葉も嬉しくなれるようなもの。2人にとって、架け橋になるような物だよ」
「あー、ペア物とか?」
「そうそう!」
ペア物か。
となると服?いやダサい。
そもそもそれなら指輪で一回渡してる。
それに今回はもうちょっと実用的な日常にあるものを渡したい。
マグカップ?いや、二人暮らししてるわけじゃないんだからバラバラに持ってたらペアの意味がない。
(はぁ…………どうしよ………)
悩んでいると、玩具屋の前を通る。そこでは子供が親にプレゼントをねだっている。
「ねーねー!このおもちゃ買ってー!」
「はいはい、後でね… 」
はは、大変だな。
ガキはいいよなぁ。玩具でも与えとけば勝手におままごととかして遊んでくれる。
というか、おままごとなら誰かと一緒に遊ぶし、架け橋的な意味でのプレゼントとしては最適だ。
「問題は、対象年齢が違うってことだけど………」
そう言って、玩具屋を通り過ぎようとした足が止まる。
すると、驚いた天也が声をかける。
「ん?どうした紅葉」
「あった、あったよ。そういえば!」
「な、何が?」
「プレゼントだよ!」
「へー、何?」
「ゲーム機」
「は?」
「だからゲーム機」
「え?いやそれは女子には…………ごめん、もう一回言って」
「だからゲーム機だって。何回も言わせないでよ」
「いやいやいや!おかしいだろ!なんで暦月さんにゲーム機!?」
「あぁ、俺ってゲーム好きじゃん?」
「ま、まぁ……」
「その影響で暦月も結構ゲームするんだよね。割とハマってると思う。ただ、俺はテレビゲームとかもするんだけど、さすがに暦月はそんな大型のゲーム機は持って無くて、いつも俺の家に来て、俺の借りてするんだよ。だから自分の家ではできないんだ。夜の通話とか、俺はゲームしながらすることもあるけど暦月はいつも羨ましそうにしてるし、ちょうどいいかなって」
「なるほど…………それならたしかに、2人で日常的に使えるから、今まで以上に親密になれる架け橋になるし、何より趣味の一致!」
「でしょ?」
「あーでも、金銭面があれじゃないか?どのくらいするんだ?」
「たしか3万ちょいだったと思うけど」
「え、高い!大丈夫なのか?」
「うん。バイト先が文化祭以来繁盛してて、給料が3倍ぐらいに跳ね上がったからね。結構余ってんだよね。クリスマスボーナスも出たし」
「そうなのか………じゃあ決まりだな!」
こうして、俺は俺と同じゲーム機を買った。
それから、もう一個何か普通のプレゼントを渡したいと言うと、天也が『お金がまだ沢山余ってるなら、少々高くなるが絶対に時計にしとけ!』と、うるさいので女の子らしいピンクの可愛いやつを買っておいた。まあまあ良いやつね。
そうこうしていると、待ち合わせの時間になるので、天也にお礼を言い、別れる。
「じゃ、今日は助かったよ。ありがとう」
「いやいや、俺も楽しかった。考えてみれば友達とショッピングなんて初めてかもしれないからな。こちらこそ、ありがとう」
「そっか。まぁ、誘ってくれればこれからも暇なときは付き合うよ」
「それ遠回しに誘うなって言ってるだろ」
「いや?」
「自覚なしか………まぁいい。それじゃあ、またな」
「うん、また」
そうして、それぞれ別れ、反対に歩き出す。
だが、5メートルほど歩いたとこで、後ろから名前を呼ばれる。
「紅葉!」
「ん!?」
振り返ると、手を上に挙げ、振っている。
「メリークリスマス!紅葉!暦月さんにもそう伝えておいてくれ!ありがとうと!」
「天也…………」
それだけ言うと、天也は再び歩き出す。
俺は離れていくその背中に向かって叫ぶ。
「メリークリスマース!」
天也…………いいやつになったなぁ。ちょっと感動。
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