第七十四話
遅くなってごめんなさい。
紅葉と別行動を取った後の私の行動は早かった。
すぐさまゲーム店に足を運び、紅葉が欲しいと言っていた、シリーズ最新作のカセットを買う。
最近、私も紅葉の影響からか、よくゲームをするようになった。
さすがに私はこのカセット対応の紅葉と同じゲーム機はまだ持っていないけど、お小遣いを貯めて、今年のお年玉で全部やっと買える。
私も楽しみで、自分の分も一緒に買ったので、これで紅葉と一緒にゲームできる日も近いというわけだ。
ではなぜ別行動をとったかというと、紅葉のことだ。
きっとお金が余ってるって言って、気を使ってゲーム機まで買いそうで怖い。
いくらプレゼントでも高すぎる。
でも別行動さえとれば、さすがの紅葉でも、私がゲーム機を欲しがっているなんて、そんなこと思わないだろう。
〈※そんなこと思いました〉
そうして、あとはちょっとオシャレなマグカップでも買うと、私はかなりの時間が余ったので、ゆっくり服でも見ている途中なのだ。
まぁお金貯めてるから買いはしないんだけどね。
「んー、あっ」
「「これ可愛い!」」
誰かと声が被り、同時に服を触ろうとして、手が当たる。
「あ、すいません」
「いや、こちらこそ」
そう言って、お互いとりあえず頭を下げる。
と、なんか聞いたことあるような声………
そう思い、頭を上げると
「って、後輩ちゃん!?」
「えっ?………あ………」
そこにいたのは、紅葉のバイト先の後輩の瑠美ちゃんだった。
「あぁ、暦月さん………」
「後輩ちゃん、奇遇だね〜!」
「む、後輩ちゃんってなんですか〜?私は瑠美なんですけどぉ」
「あ、ごめんごめん。そうだよね。瑠美ちゃん?」
「はい、それでいいです。というか暇ですか?立ち話もなんですんで、どこか行きませんか?」
「あ、うん」
そう言って、私達は近くにあった、マックスに入る。
「あのね、瑠美ちゃん」
「んー、なんですか〜?」
瑠美ちゃんはさっき買ってきたシェイクを飲みながら答える。
「あのとき………私がさか……元カレに襲われてるとき、助けてくれてありがとう。なんだかんだでお礼言えてなかったから」
紅葉のバイト先には何度か足を運んでるし、何回も瑠美ちゃんとは会って、話したが、こういう改まってお礼を言うのは初めてだった。
多分、いつもは2人きりじゃないからだろう。
「あぁ、あれですか。別に今更大丈夫です〜。ああいう女の敵は死んだほうがいいので〜。女代表として、私がちょっと戦っただけですよ〜」
「あはは、そっか。それでも、うん。ありがとう」
「べーつに〜。てか、先輩は一緒じゃないんですか?」
先輩……とは紅葉のことだろう。
私は瑠美ちゃんに別行動までの経緯を話した。
「なるほど〜……………たしかに先輩って、バイトの必要ないくらい金銭的余裕がありますもんねぇ」
「そうなんだよー。価値観のズレとかは特にないけど、割と高い物でも普通に買ってくれるからなんかこっちが気を使うんだよねー」
「アハハッ、それわかります!そーなんですよね〜」
「しかもこないだなんてさ───」
「まじすか?私も───」
「───!」
「───!」
私たちは、紅葉のあるある談義に花を咲かせていた。
しばらくして、私はずっと疑問に思ってたことを聞いてみた。
「あのさ………」
「はい?」
「瑠美ちゃんって、紅葉のこと好きだったりした?」
「私が先輩をぉ?まさか!もし好きならもっとアピールしますし、嘘告で付き合うなんて全力で阻止しますよ〜」
「うっ……それは………」
「ふふっ、別に2人の場合は良い方に転がったんだし、いいんじゃないですか?安心してください。私、先輩はタイプじゃないんで」
「えー、じゃあどんな人がタイプなの?」
「んー、もっとイケメンがいいですね」
「じゃあ晃は?」
「あれも違いますねー。もっと中性的な、かっこかわいいがいいです〜。それで、あんまりスペックは高くない的な」
「へぇ…………保護欲的な?」
「いやいや、そんなんじゃないですよ。かわいい子には旅をさせろっていうじゃないですか〜」
「えっ………じゃあまさか……」
「はい!いじめたいです!」
「えぇ…………」
「それでぇ、強くなってもらって〜、たくましい男に育てたいですね〜」
「そ、そうなんだぁ………」
(完全に育成感覚……………薄々思ってたけど、やっぱドSか〜………)
「って、そろそろ時間じゃないんですか?」
「え?………あっ、ほんとだ……」
スマホを見ると、約束の一時間の10分ほど前だった。
そうして私たちは、そこで別れることとなった。
「それじゃあ暦月さん、今日は楽しかったです。メリークリスマス。先輩にも伝えておいてください」
「あ、うん。こちらこそ、相手してくれてありがとうね?楽しかった!メリークリスマス!」
◇◇◇
それから、待ち合わせの場所に行くと、既に紅葉は待っていて、スマホを触っていた。
私は紅葉まで走りながら、名前を呼ぶ。
それに紅葉が気がつき、こちらを見たので、私は思いっきり胸に飛び込む。
「おまたせ!」
「こよ…おわっ!」
紅葉は受け止めくれた。
んー、やっぱりいい感じの暖かさ、心地よい鼓動、優しく抱く腕。
ここが一番落ち着くし、大好きだ。油断したら離れられなくぐらい。
「もういい?」
まぁどのみち紅葉は許してくれないけど………
しばらく抱きついていると、紅葉は無理やり私を引き剥がす。
最初の方は、やんわり離そうとするぐらいだったが、私の抵抗が強くなったからか、問答無用で力一杯引き剥がす。
ちょっと悲しい。
「じゃ、まずはプレゼント交換といきますか!」
「ん、わかった。………あ、俺2つ買ったから、先に1つ渡していい?」
「そうなの?私も2つ〜!じゃあ先に1つ交換しよっか!?」
「そうだね」
そうして私たちは、ここでするのもなんだということになって、元々夕ご飯を食べるつもりだったお店に移動し、まずはドリンクでも飲みながら話す。ちなみに紅葉と私は向かいあって座っている。
「それじゃあ早速………はい!」
「ありがと、じゃあ俺も」
そうして、互いにプレゼントを渡す。
紅葉は、私のマグカップを見て
「カッコいい。大事に使うよ、ありがとう」
と、笑ってくれた。
その笑顔だけで買う価値あったな。
私も、早速プレゼントを開ける。
中には可愛らしい腕時計が入っていた。
(かわいい……………)
ありがと!と、紅葉に再び抱きつき、早速腕につける。
今までつけたどの時計より、重く、暖かく、そして心地よく感じた。
時計の針が刻むのをいつまでも見ていられる気がする。
そしたら次はいよいよ本命だ。
「じゃあ次だね。あ、紅葉!」
「んー?」
「私から先に渡してもいいかな?」
「いいけど」
そうして、私は紅葉にプレゼントを渡す。
紅葉はありがとうと言って、受け取る。
包装を取り、中を見る。
「あれ?これって俺が欲しいって言ってた………」
「うん!紅葉欲しがってたから!今度私もゲーム機買うことになったから、2人でできてちょうどいいかなーって」
「へー………じゃあちょうどいいか……」
「え?」
「ありがとう。じゃあ俺のも開けて?」
そう言って紅葉は私にプレゼントを手渡す。
って、デカ!しかも重い…………
「一体何が…………っ!」
驚いて、紅葉を見ると、ニヤニヤしてこちらを見ている。
「こ、これ………高かったでしょ?」
「プレゼントにそんな野暮な質問はなしだよ」
「そ、そっか…………ありがと……」
「驚いた?」
「う、うん………」
「俺も。まさかここで気が合うなんてね」
やっぱり、敵わないなぁ…………
だってこんなにピンポイントで私の欲しい物を当ててくるんだもん。
私は一生、紅葉には勝てっこないや………
「紅葉?」
「ん?」
立ち上がり、紅葉に近づく。
「暦月?…………ッ!」
これで、三度目のキスだ。
あはは、暦月だいたーん
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