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傑物の一族の傑物ですが、なにか?  作者: 猫側縁
第2章 旅人 シエル
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第34陣


「魔力測るの?」

「うん。シエル嬢はどう考えても桁外れの魔力量と純度を持っているから、皇子と同じクラスに編入でいいと思うんだけどさぁ。色々テストをするのが決まりでねぇ……」


まあそれは当然だろう。そのくらいあると思ってたわ。


「水晶に魔力を流すと、その人の資質に応じた変化が現れる。まあ占いみたいなものさ。気楽にやるといい」


王宮の中庭の一角、東屋の所に赤色のローブを羽織った人が立っている。校長だそうだ。

おじいちゃんは紫、校長は赤色のローブを纏っているのには理由があって、所属によって色が違うとのこと。紫色は魔術師で、赤色は剣士の専門を極めた者が着ける色だそうだ。(他にも帝国内では色に関する規則があるらしい)

おじいちゃん曰く、魔法学校の校長に就任できた剣士課程卒業者は、長い歴史の中で彼が2人目で、驚くべきことらしい。


「さぁあて、紹介しようかぁ。帝国魔法学校校長にして元近衛騎士長、ディータス・フォン・バーレンだよぉ。魔法の才能も剣の才能も持ってる恵まれた奴さぁ。こいつはね、生意気な真面目くんでねぇ。しょっちゅうワシのお出かけの邪魔してたんだよ」

「有望な若者に変な事を吹き込まないでもらおうか。グラーティアス卿。私は貴殿が仕事を放り出して出掛けるのを防いでいたに過ぎない。皇帝陛下に仕える者として、職務怠慢は許されない」

「キミは魔法の才もあったんだから、ワシを探すよりキミが終わらせた方が早かった筈だろう?」

「ああ、だから私は今魔法学校の校長なんて役職を陛下より賜っているのだ。貴殿が逃げたからな」

「あはは。いいじゃないかぁ。最前線を退いたとはいえ、キミが大人しく隠居生活をするなんて似合わないんだから。次代のキミを育てるのにはいい地位じゃないかぁ」

「魔術師の絶対数が減っている今、次代に真に必要なのは、貴殿の後継の方だ」

「魔法の血が古代から継がれてきたものである以上、魔術師と呼べる才能の持ち主が減って行くのは当然だろう?それに魔法が使えなくてもそれぞれの才能とやらが開花出来るようにいくつもの科を開設してあるんじゃないか」

「相も変わらずよく回る舌だな。年相応に若輩の言葉を聞く耳を持つべきと思うが?」

「若輩?とんだクソジジイじゃないか。自分だってもうそんなに若くないくせに」

「私の倍は生きているだろう化石に言われる筋合いは無い」

「化石?!化石って言ったね!?そんな事を言われるほど年食ってないよ!ディータスくん、訂正を要求するよ!」

「そんな事より、貴殿の後継……いや、そちらの編入希望生が暇そうだが」


あ、お気付きですか。ありがとうございまーす。でも東屋の長椅子に腰掛けどころか、ケットシー人形を枕に昼寝の体勢を整えた所だったんだけど。あと2、3問答してくれてたらぐっすり眠れそうだったんだけど。


「あああ!シエル嬢ごめんねぇええ!」

「いーよぉー、大丈夫ー。起きるの面倒だけど」

「……といいつつ、その体勢は変えないんだな。身体に疲労が溜まっているのか?だとすれば保護者の怠慢だ。子供には睡眠と食事が重要なのはわかりきった事だろう。

編入生、試験に合格し次第学校の寮に入れるようにしよう。こんな保護者の所にいるより規則正しい生活が送れるだろう」

「シエル嬢!寮になんて入らなくていいよ!

ディータスくん!あんな貴族(ハイエナ)の掃き溜めにシエル嬢を放り込もうなんてどうかしてるねぇ!

シエル嬢はうちから通うの!」


……おじいちゃん、今寮の事を貴族の掃き溜めって!貴族をハイエナって!いや、校長もそれもそうか、なんて言って納得しないで!?何⁉︎貴族に恨みでもあるの⁉︎


「まあ、ともあれ、編入試験を行おう。まず大前提の魔力審査から行う」


やる気のない私の格好は無視することにしたのか、懐から水晶を取り出した校長。そのまま私の前に差し出す。

魔力をほんの少し流すように言われて、ついでおじいちゃんに蝋燭の火程度で良いと補足説明を受けて流す。

流した一瞬、私と水晶のあいだに確かな繋がりが出来た。

瞬間、電流のように熱烈に何かが脳裏を過った。焼きついたのは、暗闇の中で爛々としている鋭い眼。左右違う色の瞳と、目が合ったような気がした。

"見つけた"。

そう、その眼が言っていた。

長くその幻を見て居たような気がするが、それは実際にはほんの一瞬でしかない。だが、あまりにもゆっくりと、じっくりと、または、しっかりと私の記憶に焼きついた。


「…ふむ、金と銀、濃紺、白……また珍しい色が出たものだな。……どうした?」

「……いえ、なんでもないです」


幻…?まあ怖くなかったからいいけど。寧ろなんか落ち着く感じだった。それより水晶だよ。透明だった水晶の中に金銀濃紺白のラメラメが縦横無尽に泳いでるよ。なにこれ。

詳細を求めると、水晶は初代から続いているもので、簡単に言うと魔力分析機器らしい。詳しくは魔法具の歴史、と言う科目で習えるそうだ。面白そう。受講決定。


「色の意味は?おじいちゃんは翡翠色を持ってるんだよね?」

「金が王や覇者、勝者を意味する。

銀が現れる典型は貴族だ。……現れはするが、こんなに輝きはない。皆灰色に近いくすんだ色だ。

濃紺は夜の闇。何か大きな命運がかかっている。そして白は、典型的には賢人、だな。

翡翠色に関しては、風に愛された者という証だ」

「……典型的にはって?」

「……」


楽しそうに結果を見ていたおじいちゃんが、黙り込んだ校長の言葉を引き継ぐように告げる。


「白はねぇ、未知の色なのさ。過去に白を持った人間はたった数名。それぞれが違う偉業を成した。白は言葉の枠に収められない」

「…ふぅん」

「まあ、色に見られるだけの資質をシエル嬢は既に一通り見せているから、驚きはしないけどねぇ」


ん?私何かしたっけ?


「その歳で旅にでて迷宮を複数攻略して旅先で帝国の要人を助けて。なんて、どこの物語の主人公さ」


いえ、この物語ではただの敵役令嬢です。主人公含む攻略対象達に、最後に必ず殺されるだけの公爵令嬢です。出来ることなら目立たず隅の方で美味しそうなご飯を食べてる脇役になりたい。そして普通に生きて寿命で死にたい。


「成る程、迷宮攻略者か。ふむ……」

「金色に納得だろう?銀色に関してはシエル嬢の血統を辿れば間違いなく貴族に行き着くからだし……。矛盾は無いねぇ」

「いや、そこではない。ただ迷宮攻略者なら、今期のカリキュラムに変更を加え、訓練迷宮を増やせるのではないかと思ってな」

「訓練迷宮?」


少し長い話になると言うことなので、再び応接室。……いや、話の前に。


「私の編入試験は?」

「筆記が残っているが、魔力審査で既にあれだけの素質を見せている者を落とすなんて真似はしない。言っただろう。魔術師は絶対数が減っている。優秀な魔術師が必要なのだ。

筆記の方も提出義務があるから行いはするが、例え入学資格に満たずともどうとでもしてねじ込む。……まあ、迷宮攻略者なら、最後の部屋の扉を開けるための難問を解いているだろうから、然程問題ないだろうが」


えっと、毒霧の迷宮(最後の部屋ごと魔法でぶっ飛ばした)と白銀の迷宮(既に開いていた)と、深淵の迷宮(キューちゃんによる反則ギリギリチート移動)を攻略した。……攻略、したけど。

ウン、モンダイナイ。


王国で国内外問わずの学べるだけの知識を学び、国外に出ても古今東西の書を読み漁った私だけど、今更不安になってきた。変化球来たらどうしよう。


「……そんなに不安があるなら、先に終わらせてしまおう」


ありがとう校長。久しぶりに一般人扱いをされて心がとても温かです。だって出会った当初の皇子とかマクノアさん達はこんな対応だったのに、いつの間にやらシエルなら問題ないだろ。で済ませるようになってきたんだよ。一般人扱いしてくれないんだよ。私今一応11歳の家なしひとり旅の子供なんだよ?

周りの大人たちの対応は間違っている!(←普通の子供に分類されない子供に言われる筋合いはないby.クラウス)


校長が懐から取り出したのは書類数枚。普通のテストだー。わー。


「私たちは隣の部屋にいる。終わったら中扉をたたけ」

「シエル嬢頑張ってねぇ」


という事で、速やかに退室していった二人。残された私は問題に目を走らせる。

成る程、帝国魔法学校の校訓第一文の穴埋めから始まり、魔法の基礎、採集学の基礎、薬学の基礎問題などを経て、最後に創作系の問題ね。最初の二枚の基礎問題系をさっさと埋めて、問題は最終の創作系。


問、自身が使える中で最も強い魔法陣、又は式を記せ。注釈として使用条件、規模の記載の無いものは無得点とする。


これは中々難しいね。中途半端なものは描けないし、かといって本当に自分の最高式を描いてしまったら実力を完全に把握されてしまう。つまり切り札と同じレベルか少し劣るくらいの、得意ではない魔法陣又は式を描くのが正解。

ただし、最も強いという条件がかなり問題になる。強いの定義は?そしてそれを利用されない確証は無い。……困ったなぁ。テストの判断基準にするだけで、その他の用途には使いませんっていう注釈ないもんなぁ。

最後の問題を残し5分程で終わらせて、どーしよっかな。と考えること2分ほど。私が出した答えは、この帝国ではありえない陣だった。


魔法陣又は式で最大魔法の規模や難易度を見るというのは、如何にその陣や式の見た目が複雑だったり繊細だったりするかによる。と言うのが一般的に魔法式論とされているけど、本当に高度な魔法を使う人たちは、魔法式や陣の見かけ上の複雑さを見ない。(まあ確かに、見かけ上の複雑さと魔法の高度さが比例していることは多々あることなのだけど)魔法陣にこめられている意味がどれだけ複雑かが1番の重要な点で、それが魔法陣の、ひいては魔法の強さを決めるのだ。強力で、けれどどれだけ効率が良いのかを。

そして今回私が書き出した陣は、一見単純かつ欠陥でしかない。点と線をある規則で並べて円を描き、その周りをある規則で作られた複数の点の集合体で囲うように描いただけの陣。その中には何も描かれていない陣だ。単純な落書きのようにしか映らず、意味を知らなければ発動さえできないその魔法陣。

モールス信号と点字を使った陣を理解できる人間は、恐らくこの世界に居ない。私が解説したとして、多分理解はできないだろう。それが私の勝手に作った創作文字や規則ではなく、とある別世界で普遍的に知られた文字だと理解していないから。


さてと。使用条件は、周りに何もない屋外で、規模は……うーん。……使用者の実力による。と。発動できなくて不合格にされても困るから、攻撃魔法寄りの空間に変化を加える魔法……。…こんなとこかな。



その後見せたテストには、校長もおじいちゃんも驚いていたものの、問題ないと受け取ってもらえた。(次の日、学校のとある研究室が氷漬けになったらしいけど、それは私のせいじゃない。だって使用条件も規模も書いておいたもん)

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