第60話 勝利へのピース
レムルは笑う。
「監獄で君自身が示しただろう?
大型召喚獣は除去に弱いとね?」
コストが重い大型召喚獣を、低いコストで処理できる除去スペルは強い。
僕は過去、この監獄で大型召喚獣を流行らせた後、それに対抗できる除去スペルを流行らせていた。
「だからこれで終わりだよ。
スペル【インパクト】」
巨大な槌が上空に出現する。ウロウロと彷徨っていたかと思うとガルガンの上で静止し、一気に叩きつけられる。
僕の切り札であったガルガンはあっさりとその巨体を地面に埋めた。
「監獄で、巨大召喚獣と除去スペルを使って儲けたんだろう?
その事はここで精算して許してやる」
ガルガンの腹からワラワラと小さな召喚獣が這い出てくる。
その姿を見てレムルは眉をしかめた。
【溶炉巨兵ガルガン】
・死亡した時、召喚時生贄に捧げた召喚獣を場に戻す。パワー0の召喚獣がいた場合、その複製を生み出す。
「どれだけスライムが好きなんだ?
だが、壁なんかいくら揃えようが中級者以上には無意味だ」
レムルから二体の召喚獣が呼び出される。
両方とも看守のようだ。
「【拘束看守パスタ】トオルを捕まえろ」
パスタの腕には投げ縄の様なものが握られていた。それが投げられた瞬間僕は回避もできず、拘束されていた。
強い力で引きずられる。チェインハウンドは召喚獣を拘束したが、パスタは召喚師を拘束するようだ。
マグマスライムの中を引きずられ、レムルの近くに転がされる。
「召喚師は看守の前では這いつくばって許しを乞うんだ。ほら見てる奴らにも教えてやれ」
「誰が‥」
その瞬間レムルの呼び出したもう一体の召喚獣【格闘看守カニバニ】に腹を蹴り抜かれる。
タリスマンが砕けてダメージはなし。
だが勢いで吹っ飛ばされる。
くそっ、だがレムルと距離は取れた。
タリスマンは残り5つ。そう長くはもたない。
対するレムルはまだ20個以上のタリスマンを残していた。
「スペル【スライム分裂】。スライムの数を2倍に増やす」
プチマグマスライムの数は30体を超えた。
レムルがため息をつく。
「君の狙いはわかっているさ、プチマグマを生贄に火弾のインプで大量ダメージを狙ってるんだろ?
だからこうしよう」
そっと端に隠していた火弾のインプが監獄の射手に撃ち抜かれる。
倒せそうな僕を後回しにして、確実に勝利を掴みに来る。
慎重で疑り深い。厄介な敵だ。
僕はジリジリとレムルと距離を取る。
「おい、トオル。そろそろ見飽きてきた。
さっさと勝って帰るぞ」
場違いな声が響く。
こんなに不利なのにリーゼは僕の勝利を疑っていなかった。
「もう勝利へのピースは揃ってる。
もう少し見といてくれよ」
僕は笑った。その瞬間強く引っ張られ体勢を崩す。
「目障りだ。そろそろ幕を下ろそう」
レムルのその言葉に僕は温存していたスペルを切る。
「スペル【反乱のはじまり】僕の召喚獣のパワーを一時的に上げる」
プチマグマのパワーは0。だが大量に並べて強化してやると?
「レムルを倒せ」
プチマグマが行進を始める。
その速度は決して速くないが、確実に勝利にむかう。
「最初に言ったろ。範囲スペルがあるとな。
【砂嵐】だ。目障りな雑魚は消え失せろ」
戦場一面を砂が埋める。
その瞬間、僕は切り札を切った。
目の前の砂嵐が収まった後、僕の目の前からは僕の召喚獣は全て消えており、3人の看守だけが戦場に立っていた。
「さぁ、仕置きの時間だ」
レムルが醜悪に笑う。
レムルは僕の変化に気づいていない様だった。




