第47話 炎をまとう神
僕の場には、ロキとアースエレメント、ウッドストーカーが並ぶ。
火野の場には、謎の召喚獣サラマンダー。
パラメータは大したことがない。能力が強いのか?
僕はサラマンダーを改めて見た。
その瞬間、理解した。
サラマンダー――こいつ、未解放カードだ!
火野が最初から持っていたのなら、今回のデッキともかなり相性がいいかもしれない。
【サラマンダー】属性 火
コスト 3
パワー/タフネス 3/3
位相 地
能力
・???
・???
「おい、ゲイル。
俺のことを守ってくれ。このままじゃ負けちまう」
僕のアースエレメントとウッドストーカーは、アッシュを執拗に狙っていた。
ゲイルがアッシュを守るため、新たな召喚獣を呼び出す。
「させるか。【ファイアアロー】!」
火野のスペルが完成した瞬間、サラマンダーがぽんと小さな火を吐いた。
同時に、火野の手札へ新たなカードが加わる。
なるほど。
スペルの発動をきっかけに、さらにスペルを生み出す召喚獣か。
手札切れが弱点となる火野には、ぴったりの能力だ。
しかも、火野の固有能力によって、生み出された火力まで強化される。
【サラマンダー】属性 火
能力
・スペルを唱えた時、【火の粉】を一枚手札に加える。この能力は【火の粉】では誘発しない
・???
【火の粉】属性 火
コスト 0
対象に1ダメージを与える。
火野の火力は、サラマンダーがいる限り途切れない。
それに気づいたのか、アッシュとゲイルが素早く目配せを交わした。
「燃やせ、【ファイアバード】!」
「穿て、【サンダーバード】!」
二体の召喚獣が狙ったのはサラマンダー――ではなく、ロキだった。
なるほど。
火野の手札を支えるサラマンダーより、全体を強化しているロキを先に潰すつもりか。
だが、甘い!
「【ストーンゴーレム】召喚!
ウッドストーカー、ロキを守れ!」
新たに現れたストーンゴーレムと、後退してきたウッドストーカーがロキの前に立ちはだかる。
ロキの能力によって、僕の召喚獣はすべて護衛を得ている。
そう簡単にロキまで攻撃を通せはしない。
2体の召喚獣が、ファイアバードとサンダーバードを正面から迎え撃つ。
4体の召喚獣が激突し、ストーンゴーレムは紫電を帯びて崩れ落ち、ウッドストーカーは炎に包まれた。
嘘だろ…ロキの強化があるのに打ち負けた。
「そのまま行け。
まずロキを潰し、次に御厨を倒す。多少の犠牲は仕方ない」
「させるかよ! 【パイロブラスト】!」
火野のスペルが炸裂し、傷ついていたサンダーバードが四散する。
しかし、ファイアバードは倒しきれない。
炎をまとったまま、ロキへ迫っていた。
まずい。ここでロキを失えば、僕たちの守りが崩れる。
僕はロキの前へ躍り出て、その身を庇った。
ファイアバードの一撃が直撃し、6つのタリスマンが立て続けに砕け散る。
「召喚師が召喚獣を庇うだと? 聞いたことないぞ」
「それだけロキが重要なんだろう。確実に潰すぞ」
驚くアッシュに対し、ゲイルは冷静に僕の狙いを見抜いていた。
ゲイル、厄介だな。先に倒すべきだった。
これで僕のタリスマンは残り4つ。
一方、アースエレメントはアッシュに迫り、そのタリスマンを残り9つまで削っていた。
こちらがやや不利だが、まだ勝負は分からない。
その後も、アッシュとゲイルが繰り出す召喚獣を、火野は的確に処理していった。
だが、僕を守ることを優先するあまり、少しスペルを使いすぎている。
「火野、少し温存しろ。
この調子だと、最後に息切れするぞ」
「そうは言っても、透がやばいだろ」
「最後まで足掻く。
だけど、もし僕が先に負けたら、後は頼む」
僕は戦場に残る召喚獣へ目を向ける。
「僕が脱落すれば、召喚獣は火野のコントロール下に移る。
うまく使ってくれ」
このままでは、僕が最初に脱落する。
だが、これはチーム戦だ。最後に火野が立っていれば、それでいい。
「さっきから、ちょろちょろとうるせえな。これで終わりだ!」
アッシュがカードを掲げる。
「【バーストティラノ】!
御厨のタリスマンを全部ぶっ壊せ!」
炎を噴き上げる巨躯が、地響きを立てながら僕へ突進してくる。
剥き出しの牙と爪が迫るだけで、逃げ道ごと押し潰されるような圧力があった。
ロキを前に出せば受け止められる。
だが、今ここでロキを失うわけにはいかない。
残ったタリスマンで受けるしかない。
バーストティラノの巨体が僕を弾き飛ばし、残る4つのタリスマンが一斉に砕け散った。
だが、監獄のルールでは、タリスマンをすべて失っても敗北にはならない。
生身で攻撃を受けるまで、降参することも許されない。
「まだ終わりじゃない」
「ばーか。終わりだよ。
【バーニングストーン】!」
炎をまとった無数の石礫が浮かび上がり、赤い軌跡を引きながら僕へ殺到する。
厳しい…
だが、軌道を見切れば避けられるかもしれない。
僕は迫る石礫へ意識を集中させた。その時、ゲイルが別のカードを掲げる。
「ついでにロキも落とす。【ジャイアントキリング】」
【ジャイアントキリング】属性 風
コスト 3
能力
・パワー6以上の召喚獣一体を破壊する
そのスペルが発動した瞬間、僕は迫る石礫のことも忘れて叫んでいた。
「ロキ!
フォームチェンジ――火だ!」
ロキの身体を蔦に代わって炎が包み、その巨体が一回り小さくなる。
パワーが下がり、対象から外れた。
狙い通り、【ジャイアントキリング】は不発に終わる。
【不落の神ロキ】
能力
・星儀戦中一度だけ、指定した属性へ変化する
「なにっ!?」
アッシュが驚愕の声を上げる。
その直後、鈍い衝撃が頭を打ち抜いた。
しまった……。
ロキに気を取られて、石礫への意識が完全に途切れていた。
膝から力が抜け、身体が地面へ沈んでいく。
「火野……ロキを、うまく使え……。
あとは……任せた……」
薄れていく意識の中、僕は友に相棒を託した。
最後に耳へ残ったのは、炎をまとったロキの咆哮だった。




