希望
「調子はどう?」
「まぁまぁかな〜、あ、りんごはそこ置いといて」
病室はあまりに静かで世界と繋がっていないようだ。彼はベットで寝込みながらこっちを見る。
「どう?学校は。」
「特に変わりはないかな〜春谷くんと会う場所が変わったくらい。」
「そっか」
会話は弾まない。見るからに元気じゃないのでりんごを切ってあげることにする。
「りんご、切ってあげる。」
「ありがとう」
「曲の方はどうなの?」
「順調だよ。時間はあんまりないけどあるからね。」
「ツッコミずらいって」
「ハハッごめんごめん」
「ほら、できたよ」
器用な私はウサギ型に切って見せる。
「おおっスゲー」
「ふふっ」
あまりに少年すぎる感想で思わず笑ってしまった。
入院してもう3ヶ月が過ぎ、季節は秋になった。私は家でシガミと映画を見る日々で春谷くんはひたすら薬と手術待ちらしい。元気がなくなっていくのを見るのは精神にかなりきて、私もだんだん弱ってくるのを感じる。
医者の見立てでは後3ヶ月ほどが限界らしい。
移植は完全に運で、できても拒絶反応など色々あるらしい。
後少しの時間すらも残されてないかもしれないのに。もう彼には明日の保証ができない。
「もう少しで完成するんだ、もう少しでね」
「わかってるよ。信じてるから。」
ゆっくりな会話が途切れないように丁寧に紡いでいく日常が続いたある日、光が見えた。
「アメリカから有名な先生が来て、、手術してくれるらしい」
「助かるってこと?」
「うまくいけばね」
手術内容としては腫瘍を取り除き機械を補助として入れるらしい。
私は飛び上がった。奇跡は存在した。
「それでさ、曲も完成したんだ。第1章だけね。これを」
そう言って彼は私に楽譜を渡す。
「これは君がもっててほしい。明日から色々検査で病院に来れなくなるから僕が無事に手術が成功したら君の手からそれを渡してほしい。」
「わかった。任せて。春谷くんが弾くの楽しみにしてるから」
「ありがとう」
呟くように彼はいった。
1週間後。
手術は成功したと彼の親がわざわざ教えてくえた。彼から成功したら伝えてくれと頼まれてたらしい。
私は急いで病院へ行き病室の扉を開ける。まだ目を覚さない彼の前に私は座った。両親から「そばにいてあげてくれ」
と頼まれたからだ。無論目を覚ますまでこうするつもりだった。
眠ったように寝ている。このまま目を覚さなかったらなんてことばかり考えてしまう。シガミは彼の手術以降どこかへいってしまったし。どこに行ったんだろう。




