きっと君には言えない2
家に帰って、部屋に散乱した楽譜を見返した。ほとんどが中途半端に書かれたものでほとんど完成していない。どこかで聞いたことあるようなもののパクリばかり。聞くに絶えないものが散らばっていた。
初めて曲を書いたのは中学2年生の頃、自分で曲を作って先生に聞かせたことがあった。あの頃の自分は自信で溢れていて作曲の熱も今よりはるかにあり、当時聞かせたその曲も自信作できっと褒められると思っていた。
「そんなことより、今は練習しましょう。」
でも先生はなんの感情も籠っていない声でそういった。そんなことよりという言葉は心の奥深くに刺さる。
子供の頃に空いた穴はいつまで立っても埋まる物ではなく、少なくとも僕は時間が経っても痛いままだった。
この出来事が起きて少し経った後さらにことを加速させる事態が起きた。
心臓の調子が悪くなってきたのだ。
入院も視野に入れないといけなくなり、命の終わりを感じた。
移植手術を待ってるがそう簡単にいかず、このままいけば後1年もないと言われ、それ以降、僕が作曲することは無くなった。もう一生せずに死ぬと思っていた。君がまたドアを開けるまで。
彼女は次の日また音楽室にきた。
堂々とした顔で入ってきたので思わず唖然としていると詰め寄ってきた。
「しないの?作曲」
「昨日も言ったじゃないか」
少し投げやりに答えた。昨日から心臓の調子が悪く少しイライラしていたから。
「じゃあその手の楽譜は?」
ピアノの上に置いていた楽譜を指摘される。
「なんで辞めようと思ったの?」
ずけずけと僕の心に入り込んでくる。一体なんなんだ。なんでそんなに。
「怖いんだ。怖くなったんだ。」
否定される事と残された時間。僕は否定に関することしか説明しなかった。余命のことなんか言っても仕方ない。
「なんでそこまで僕に曲を作ってほしいの?」
作曲もしたことない彼女が僕の音楽に執着する訳が僕にはわからなかった。
すると彼女はここまで生きてきた中で僕が一番欲しかった言葉を投げかけた。
「君のファンだから」
僕の心がすうっと軽くなるのを感じた。これが僕は欲しかったんだ。誰にもかけられたことがない。ピアノだけじゃなくて ピアノを含めた 僕を見てくれた。
思わず僕は座りながらうずくまってしまった。
「君の作る音楽を私は馬鹿にしたりしない!もう一度でいいから!」
彼女は蹲る僕に向かってそう言い放ち、手を差し伸べる。
満たされた心で、僕はその手を迷いなく掴んだ。




