きっと知らない1
いつからか、音楽室の扉の奥に誰か人がいた。ドアのすりガラスから見えるその髪型はポニーテールのように見える。誰なのか気になりもしたが尋ねる勇気はなかった。ドアの向こうで30分ほど居座りいなくなる。座敷童だと思った時期もあった。
1年経っても僕は変わらず音楽室でピアノを弾いていたしドアの向こうには誰かいた。
なぜかはわからない。
特にその日何かあったわけじゃない。
でもその日はなぜかドアの向こうに興味があった。
なんだか背中を押されている気がする。
一歩一歩と少しずつドアへ向かっていく。
気づけば僕はドアの前まで来ていた。
引き返してもよかった。普段なら引き返していた。でもなぜか、僕自身の明確な意思でドアに手をかけていた。
僕はドアを開けた。
彼女もまたドアの前に立っていた。
目の前でオドオドしていたので一旦音楽室の中へ案内する。
いつも音楽室の前にいたのは去年同じクラスだった福山清華さんだった。小柄であまり喋っているところを見てないけど、委員会の仕事を真面目にしていたり、やるべきことをきちんとしている人だったので印象に残っている。
僕はさっきから弾いていたピアノを少しだけ弾いて彼女に話しかける。
「ピアノに興味あるの?」
「いや、ピアノには興味がなくて、興味があるのは春谷くん自身っていうか、、あっっいやっその」
「?」
よくわからなかったがピアノには興味ないことがわかった。
「高校入ったばかりの頃に弾いてたあれが聞きたいな〜って」
その言葉に僕の心が軋むのがわかった。音楽そのものに僕はもう何も感じなくなっていたけど口には出してない。ただこれを説明するには言葉にしないといけない。苦しいが僕は口を開く。
「僕はもう曲作ってないんだ。馬鹿らしくなってね」
「そ、そうだったんだ、ごめんね」
そんな顔で見ないでくれ。しょうがないんだ。辞めたくて辞めるんじゃない。辞めないといけないんだ。その後、彼女は用事があるからと帰ってしまった。
「はぁ〜」
ため息が止まらない。1年ほどの不思議な関係が終わりを告げた。彼女がここに来ることはもうないだろう。意味がないんだから。
、、、思ったより心にくる。僕は思ってた以上にあの時間を楽しんでいたのかもしれないな。
もう、遅いけど。




