生きてて良かった……
…………あれ?
俺ってさっきまでバーでお酒飲んでたような……。
なんで部屋に戻って来てるんだ?
――あと、頭が割れるように痛い……。
もしかしなくても二日酔い?
あー……何だっけ、二日酔いに効くカクテルを出して貰った気がするんだけど……。
「なんか入ってるな……」
昨日バーに行った格好のままベッドに身を投げ出すようにして寝ていたから、服が皺くちゃだ。
そして、ポケットをまさぐると何かメモのようなものが。
何々?
「……マジか」
そのメモには、
『飲んでてぶっ倒れたから部屋に送っておいたわ』
という文字が。
この書き方的に送ってくれたのはグリムダさんかな。
ご迷惑をおかけしました……。
「って、お昼をスイさんに奢って貰うんだった……。今何時……?」
今日の予定を思い出し、時刻を確認……ホッ。
まだお昼ではないな。
――ただなぁ、食べるのはステーキって言ってたよな。
それもとびきりのやつ。
……食べるの? ステーキを?
二日酔いの状態で?
……リバース確定案件では?
――スイさんには悪いけど、丁重にお断りさせて貰おう。
「? はーい」
と、部屋のドアをノックされる。
誰だろう……?
「生きてるか?」
あ、スイさんだ。
……? 今生存確認された?
起きてるか? ではなく、生きてるか? って聞かれたよね?
「生きてますけど……」
「とりあえず開けよ」
ガンガンと頭痛が続く思い頭を持ち上げ、体を起こし。
立ち上がって、フラフラと扉に到着。
鍵を開けてドアを開けると……。
「無事だったか」
そこにはスイさんの姿が。
「夜担当から話を聞いて、ワンチャン死んでないかと思ったが……無事のようだな」
「大げさでは?」
「貴様が飲んだカクテルの名前を言ってみろ」
「えーっと……」
何だっけ、確か……。
「後の祭り?」
「もう一つの方だ」
「エイプリルフールですか?」
「それだ」
レディーキラーカクテルって話だったよね。
「あれはドワーフ族の女を酔わす目的で作られたカクテルだぞ?」
「……はい?」
「ドワーフレディーキラーカクテルだ」
「えぇ……」
いやまぁ確かに、グリムダさんの口からレディーキラーカクテルって出ましたけれども。
その対象がまさかドワーフだとは思わないじゃないですか……。
「確かにアルコール度数高いなとは思いましたけれど……」
「事情を知らん他の種族が飲んでも半分とかだが、貴様は飲み干したのだろう?」
「美味しかったですし……」
「苦さと甘さでアルコールを感じにくくさせるカクテルだぞ? 飲み干したらどうなるかくらいわかるだろう?」
……え?
感じにくくなってあのアルコール感なの?
それでもかなり強めに感じたんだけど……。
「会話の途中でぶっ倒れて、ドワーフが部屋に送ったと聞いた時は貴様の身を心から案じたぞ」
「スイさん……」
「まだ菓子の一つも受け取っていないのに死なれたら困るからな」
「デスヨネー」
まぁ、うん。
知ってた、うん。
泣いてなんかないやい。
「それで? 食欲はあるか?」
「……あると思います?」
「吐き気は?」
「ありがたいことにそれは無いです」
これは流石に後の祭りの効果だと思いたい。
二日酔いなのに頭痛だけで吐き気は無いんだ。
……え? これ、なら大丈夫だな、とか言われてステーキ食わされるパターン?
「ふむ……。薬膳料理の店がある。そこならどうだ?」
「一応、どんなメニューがあるか聞いても?」
「貴様にならば粥とかが出されるだろう」
「あ、行きます」
良かった。
そこまで鬼畜じゃなかった。
――というか、薬膳のお店とかあるんだ。
「では着替えろ。その服装で出歩くわけではあるまい?」
「あ、はい」
そう言って部屋を出るスイさん。
……着替えるか。
*
「ここだ」
一歩歩くたびに頭の中に響く重低音を我慢し、ようやくたどり着いたのは客船の中心部分。
そこへ入ると……。
「いらっしゃいませ。会員証はお持ちでしょうか?」
「うむ」
まずは会員証の提示が求められた。
もちろん俺は持ってないんだけど、スイさんの会員証で五名まで入れるらしい。
そこに同伴させてもらいました。
で、案内された席に着くも、メニュー表などは無く。
どう注文するんだろう? と考えていると、
「ドリンクです」
頼んでもいないものが運ばれてくる。
あれかな? 事前にスイさんが頼んでくれていたのかな?
「飲み干せ」
「……へ?」
「出された料理、飲み物、全て完食完飲せよ」
と言われ、言われるままにドリンクを一気飲み。
……というか、俺とスイさんとで出された飲み物が違うんだよね。
俺のは白みがかった黄色で、スイさんのは緑色。
ちなみにドリンクは……例えるならスポーツドリンクみたいな味。
ちょっと酸味があるもほんのり甘く、極微炭酸でサッパリ系。
「お粥です。こちらのタレをかけてお召し上がりください」
「ありがとうございます」
で、早速登場のお粥。
ごくごく普通のお粥にネギが散らしてあって、急須みたいなのが一緒に運ばれてきた。
その中のタレをかけて食べるらしい。
というわけでタレをかけませう。
「お?」
タレの色は透き通った茶色。
少しだけとろみがついていて、お粥にかかった瞬間に出汁のいい香りが立ち昇る。
これは……食欲が出てくるな。
「タレは全部かけなくていいぞ。好みの味に調整しろ」
「あ、はい」
あぶねぇ。危うく全部かける所だった。
……一旦こんなもんか。
味は後からでも調整出来るし、じゃあ、お粥……いただきます。




