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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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先に言って?

「……ほう?」


 お出しされたカクテルは、恐らくカクテルと言われて思い浮かべるグラスに入ったお酒。

 そのグラスの中で二層に分かれてて、上の層はピンク……というか桜色。

 下の層は黄緑……いや、薄い緑か。

 匂いを嗅いだ感じほんのり桃の香りがするな。


「そのまま飲んでいいんですよね?」

「はい」


 カクテルによっては、エンジェルキッスみたいな独特な飲み方をするカクテルとかあるし……。

 まぁ、そんなのは無い様なので普通に飲みますか。


「……にが」


 えーっと?

 桃の香りはしたし、表層は桜色。

 どう見ても甘い感じがするよね?

 残念、普通に苦いのでしたー。

 あれだね、苦いといっても罰ゲーム汁みたいなすっごい苦さとかじゃなく、何というか……。

 カカオ率が物凄く高いチョコレート的な?

 あの土食ってるみたいとか言われるやつ。

 あんな感じの苦さ。

 あと、アルコールが結構強い。

 うーん……ちょっと失敗したかもしれない。


「下の層は甘いですよ」

「……ほう」


 そんな俺に、ノクティアさんから助言が。

 なるほど、苦い層と甘い層の二つからなるカクテルだったか。

 ……普通色的に桜色が甘いと思うんですけど。

 緑色は苦いイメージなんですけど。


「あー、本当だ。甘い」


 で、苦さに耐えながら緑の層までたどり着いたら、桜色の層とは打って変わった甘さに。

 ほのかにミントの香りがする――ガムシロップだこれ。

 こっちはこっちで甘すぎるな。

 まぁ、苦いよりはマシか……。


「ちなみに」

「?」


 苦さと甘さの板挟みになりながら、エイプリルフールを飲む俺にグリムダさんが。


「エイプリルフールはレディーキラーカクテルよ」


 もっと早く言って欲しかった情報を寄越してくれた。


「マジです?」

「マジ。上の苦い層を早く抜けたいからと急いで飲み、下の甘い層は甘さからスイスイ飲めちゃうからね。ちなみに、アルコールは結構強いわよ?」

「知ってます」


 何せ今飲んでるからね。

 それにしても……ドワーフ――ハイドワーフのグリムダさんを持ってして結構強いアルコールか……。

 俺ヤバいんちゃう?


「二日酔いに聞く飲み物とかあります?」

「飲み干して数分よね?」


 知らんのか?

 現代にはターメリックの力という素晴らしい飲み物があるんだぞ。

 二日酔い対策で酒を飲む前に飲む飲み物なんだぞ。


「『後の祭り』などいかがでしょう?」

「名前からして手遅れ感が否めないんですけれど……」


 まぁ頼むんですけれど。

 それにしても、異世界のネーミングセンスはたまによく分からない時があるな。

 ――本当にたまにか?


「スモーク、お待たせしました」

「……葉巻?」


 で、グリムダさんが頼んでいたスモークなるカクテルが登場……したのだが。

 どう見ても火が付いた葉巻が一本あるだけなんですけれど……。


「スモークって言うのは、葉巻にお酒を垂らして、葉巻の煙とお酒の香りを楽しむカクテルよ」

「なんかおしゃれ」

「酔いたくは無いけどお酒の香りを楽しみたいって時にピッタリね」


 ふー、と天井に向けて煙を吐くグリムダさん。

 えーっと……言った方がいいかな?

 ドワーフってさ、人間と比べても身長が低いわけよ。

 で、ハイドワーフであろうとその部分は変わらないわけで。

 しかもグリムダさん、女性じゃん? 身長がそこまで大きくない女性が、バーのカウンターで葉巻咥えて吹かしてる姿はこう……何というか……。

 一部の層にはぶっ刺さりそうだなって。

 俺? 俺は大丈夫刺さってないよ。

 肩口から腰までを袈裟斬りされた程度だね。


「『後の祭り』です」

「……パフェ?」


 なんかすごいカクテル出てきたんですけど。

 マジで最初パフェかと思った。

 結構大きめのパフェグラスに、カクテルが注がれていて。

 その上に生クリーム、アイス、ココアパウダーに焼き菓子がトッピングされてる。

 これマジでカクテル? おやつとかデザートじゃなくて?


「グリムダさん」

「何かしら?」

「これもレディーキラーカクテルだったりは?」

「無いわよ。どころか、ほとんど酔わないカクテルじゃなかったかしら」

「一応は入っておりますが、アルコールは本当に微量ですね」

「ほな大丈夫か」


 信じるぞ?

 ……どうやって飲むんだ?

 まさかパフェグラスを持って飲むわけにもいくまい。


「ストローです」

「ありがとうございます」


 ですよね。

 まぁ、最初は上のアイスをいただくんですけど。


「……普通に美味しいバニラアイスですね」


 ごくごく普通のバニラアイスでした。

 ではでは、カクテル部分を味見をば。

 ――あ、なるほど? チャイとか、レモンジンジャーティーみたいな感じだな。

 かなりジンジャーの感じが強い。

 ただ、強すぎて薬感を感じたり、不快に感じる様な強さじゃないな。

 かなり丸い、柔らかいジンジャーの感じ。

 ……あ、生クリームと合わせると普通に美味しい。

 あと、バニラアイスが溶けた部分も最高。

 ――やっぱりデザートでは?


「飲みのシメに頼まれるカクテルです」

「なのに名前は後の祭りなんですか……」

「これを飲んだところで二日酔い確定レベルまで飲むからね、どーせ」

「納得」


 まぁ、バーに来るドワーフがこの辺でやめておこう、とはならんよな。

 飲めるだけ飲んで、このカクテルでシメて、翌日二日酔いに悩まされる、と。

 ――待てよ?


「ドワーフって二日酔いになるんです?」

「なるんじゃない? 私なった事無いけど」

「ちなみに、もし知り合いで二日酔いになったってドワーフが居たら?」

「知り合い全員に声をかけて指差して笑いに行くわよ?」

「ドワーフの方にとって、二日酔いは酒に負ける事と同義ですからね。これ以上ない恥だと聞いております」

「ちなみにノクティアさんは二日酔いのドワーフを見たことは?」

「見ては見たいんだがね。あいにくそんな機会には恵まれていない」

「……じゃあ二日酔いは無いって事では?」


 ……これが、異世界の酒飲み種族の底力……。

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