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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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翠龍「宝剣とかもあるぞ」

「このクルーズ船に乗るきっかけを教えて貰っても?」

「日程だけが決まってて、行き先とかは分からないツアーに申し込んだんですけれど、それがこれだった感じですね」

「……そうなの? てっきり狙って乗船しているものだとばかり……」

「多分、普通に乗ったら手が出ない値段だと思うんですよ」


 船内の豪華さとか、食事のクオリティとか。

 結構豪華客船の動画とかは見るけれど、それらに全く引けを取らないというか……。

 異世界補正があるからかもだけど、何ならそれらよりクオリティが高く感じる時があるし……。


「運がいい……の一言で片づけていいのかしらね?」

「いいんじゃないです?」


 俺に聞かれてもな。

 運がいい、あるいは、前世で物凄く徳を積んだとかじゃない?

 知らんけど。


「ちなみに船内で食べたもので一番美味しかったのは?」

「ダントツで笹船のお寿司ですね」

「……あそこ、かなりの値段するわよね?」

「スイさん……えぇと、お昼担当? のガーディアンさんに奢って貰えて……」

「…………龍族が人間に奢る? ――え? あなた、王族関係の人間だったりする?」

「ごくごく普通の一般人です」


 この人にスイさんが現代お菓子にドはまり中とか言ったらどうなるんだろ。

 というか、そこまでなのか。

 龍族に奢られる関係って。


「一応あなたの為を思って忠告しておくわ」

「……?」

「龍族と親密にしている、という事はあまり言わない方がいいわよ?」

「理由を聞いても?」

「龍族というのは基本的に権力や財力、実力を兼ね備えた種族よ」

「ふむ」

「親しければ、誘拐して龍族に何かしら要求されかねないわ。それが、たとえ龍族が応じないとしてもね」


 ……あー。

 なるほど?

 僅かでも可能性があるなら、龍族が親しい相手を拉致って身代金を要求。

 応じるならば良し、応じないなら始末すれば良しってことか……。

 物騒過ぎない?


「そして、龍族が応じることは無いわ」

「なぜ?」

「一度応じてしまえば、それが自分の弱みだって宣言するようなものよ」

「今後真似する連中が出てきても困る、と」

「そういう事」


 なるほどな。

 ……何だろう、凄く良くない考えが浮かんだ気がする。

 いや、もし万が一、そうして拉致られて、スイさんに身代金? が要求されたとしよう。

 そこで、助けて貰えたなら、現代のお菓子を大量に渡すと約束。

 意外と助けて貰えそうじゃない?

 要求される身代金にもよるだろうけれど。


「ちなみにだけど」

「はい」

「その時に要求されるのは金銭より、龍族の所持する宝の方が有り得るわ」

「どうして?」

「単純に、国宝以上の代物を所持しているからよ」

「……例えば? って聞いて分かりますかね?」

「さぁ。噂では蓬莱の玉の枝は持っているとかなんとか……」


 ……えぇっとかぐや姫? 合ってる?

 要求した物の一つがそんな代物じゃなかったっけ?

 どんな特徴の物かは分からないけど。


「とにかく、龍族と親しい事は隠しなさい」

「そうさせていただきます」


 あまり親しい様子を見せてはいけない、と。

 ……とすると、現代のお菓子をスイさんに渡すこともあまりしない方がいい?

 でも本人? 本龍が望んでいるしなぁ。


「ちなみに、食べ物を渡すように言われてるんですけど、渡しても大丈夫です?」

「龍族に?」

「はい」

「まぁ、物を一方的に渡すのなら、献上と周りには認識されるだろうけれど……」


 献上になるのか。

 それもそうか……。


「頻繁にやり過ぎると、龍族信仰と見なされてそういう集団から勧誘を受けるかもしれないわね」

「……宗教があるんです?」

「主に人間が信仰する宗教ね。人間にとって、神と交信出来て、強大な力を持つ存在だから、ほぼ神様みたいなものなのよ、龍族って」

「あー……」


 何となく分からんでもないような……。


「それに加えてグラマラスなスタイルでしょう?」

「まぁ、そうですね」


 スイさんしか知らないけど、身長もデカけりゃ色々とデカいからね。

 言わんとしてることは分かる。


「だから、神としてよりもママと呼んで信仰している人間も……」

「それは信仰というよりはただの性癖では?」


 龍族にバブみを感じるな。

 いやまぁ、個人の思想だから俺がどうこう言える問題ではないんだけれども。


「……私が知っている人間と、あなたは所々に違う所があるわね」

「グリムダさんが知る人間が偏っているだけでは?」


 主に性癖が。


「そうかも知れないわ。……うん、ありがと」

「以上で質問は終わりです?」

「そうね。元々あなたをメインにする記事でもないし、この喫茶店に来た人間としてどんな感じか、の調査だったわけで……」

「調査の結果は?」

「変人……かしら」

「おい」


 失礼な。

 俺は全然一般人の範囲に入ってますわよ。

 ――入ってるよね?


「さて、私はあちらに移動するけれど、あなたもどう? 一杯くらいなら奢るわよ?」

「じゃあ、お言葉に甘えまして」


 グリムダさんからバーの方へお誘いいただいたのでそちらに移動。

 気になる名前のお酒がいっぱいありそうだから、実はちょっと行きたかったんだよね。


「マスター、私はスモーク。彼にはお好みの物を一杯」

「かしこまりました。何にしましょう?」

「んーっと……」


 カウンターに置かれたメニュー表から、気になる名前を探す。

 輪廻……忘れられし神の左翼……フォーエバーヤング……。

 気になる名前しかねぇ。

 そんな中、俺が選んだお酒は……。


「エイプリルフール、で」


 異世界にあるのか分からない、世界で一番、SNSでネタ投稿が増えるイベント日の名を冠したお酒だった。

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