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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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鉢巻はしてない

「あ、それと――」

「なんです?」


 チップを押し付けたら日本のお菓子を押し買いされた後、スイさんは思い出したように、


「夜担当のガーディアンからの伝言だ」

「はぁ」

「いつもより早めに店を開けるから顔を出せ、と。貸し切りだそうだ」

「マジすか」

「それに見合う……というか、それでもなお足りぬ量のチップを押し付けたのだぞ?」


 だとさ。

 まぁ、喫茶店とバーの貸し切りとか初めてだし、ちょっとワクワクするな。

 喫茶店はともかく、バーには初めて行くし、貸し切りだとある程度は好きに出来るから良さそうではある。


「何時頃から開けてるんだろう……?」

「通常より一時間ほど早く行ってみるといい。それくらいがちょうどいいだろう」

「なるほど」


 となるともう少し……いや、早めに軽い食事を済ませてからバーと喫茶店に向かうか。

 そうすれば丁度いい時間になりそうだ。

 ――今日はどこのお店にしようかな……。


「貴様、明日の予定は?」

「今のところは特に何も決めてないですけど……」

「では空けておけ。私が食事をごちそうしよう」

「楽しみにしときます」


 翌日のお昼も決まりました、と。


「ちなみに何をごちそうして貰えるので?」

「ステーキだ。それもとびきりのやつ」

「お、いいですねぇ」


 明日の昼はステーキか。

 じゃあ、夕ご飯は魚系にしようかな。

 軽めの魚系をイメージして船内のレストランを探そう。

 ――ん? なんか、当たり前に寿司屋ない?

 『笹船』っていかにも和風ですみたいな名前で存在してるんだけど。


「スイさん、この笹船ってお店知ってます?」

「ああ……そこはなぁ……」

「?」

「味はいいんだが店主がな。少々頑固なものでな」

「ほう?」

「やれこの食べ物は塩で食え、だ、やれ醤油はネタに付けろ、だうるさいんだ」

「あー……」


 何だろう……なんか想像出来てしまうな。

 頑固な寿司屋の大将的な。

 ただなんというか、想像するような頑固な大将ってそう居ないよ?

 接客業なんでね。

 頑固を突き通すと普通にお客さん離れていっちゃうだろうし。


「行ってみよ」

「この話を聞いてなお行くのか?」

「普通に興味ありますもん」

「むぅ……」


 スイさんはそんな馬鹿な、みたいな顔してるけども。

 異世界のお寿司の味も知っておきたいし、今日のお昼は寿司に決定!!



「……で、スイさんも付いてくる、と」

「良いではないか」

「まぁ、構いませんけど」


 俺が笹船を目指して歩き出したら、スイさんもそのまま付いてきて。

 たまたま向かう先が一緒かな? と思ったら普通に俺について笹船に入ってくるし。

 いいんだけどさ。


「らっしゃい」

「お任せで一人前」

「あいよ。……予算は?」


 ……ん?

 ――あ、この寿司屋、別途料金が発生するのか!?

 やっべ、全然確認してなかった……。


「上限無し。我にもこいつと同じものを」

「ちょ!? スイさん!?」

「安心せい。我が出す」


 ……助かった。

 いや、流石に勝手に上限無しとか言われてこのクソトカゲ……とかちょっと思ったけれども。

 払ってくれるなら……まぁ……。


「冷製茶碗蒸しです」


 早速一品目。

 まずは冷製茶碗蒸しか。

 回転寿司とかで、夏場に期間限定で販売されてたりするよね。

 食べた事無いや。


「……ん、うま」

「この上のプルプルしたのは何だ? 固めた醤油か?」

「煮凝りと思いますよ? 出汁がしっかり出てて美味いです」


 冷たい茶碗蒸しも美味しいもんだね。

 中の具にはエビとホタテの貝柱。

 スイさんが不思議そうにしてたのは煮凝り……何だけど、何の煮凝りだろう。

 

「天蓋ヒラメの煮凝りだよ」

「ヒラメの煮凝りなんですね。初めて食べました」


 ヒラメってこんな味するんだ。

 いや、ヒラメの寿司は何度か食べてるけど、こんな強い旨味は感じた事無かったな。

 ――異世界のヒラメだからだろうか?


「冷たく、口当たり滑らか。煮凝りはプルプルとしていてすぐに食べ終えてしまうな」

「前菜ですからね。食欲を掻き立てる物が出されますよそりゃあ」


 そんな会話をスイさんとしてる間にも、次の料理が着々と準備中。

 今度は何が出されるだろう。


「刺身盛りです。塩を振ってますのでそのままどうぞ」

「……下の野菜ごと食べていいんですよね?」

「もちろん」


 続いてはお刺身……なのだけれども。

 それぞれ刺身が、スライスした野菜の上に盛られてる。

 光物、白身魚、赤身、貝。

 それぞれが違う野菜の上に乗せられ、その上に黄金色の魚卵が乗ってる。

 視覚的にもかなり綺麗。

 野菜の色が刺身と被らないように工夫されてるし、普通に写真撮ってSNSにあげたらバズりそう。

 やらないけど。


「……ん、うま」

「野菜の食感が刺身と違っていいな」

「塩加減も完璧ですよ。口の中でどんどん旨味が溢れてきますもん」


 最初にいただいたのは光物。

 光物と言えば生臭さが強いから、薬味と一緒に食べたりするけど。

 盛り皿代わりの野菜が、薬味の役割もこなしてるね。

 柑橘系を思わせる華やかな香りが、光物の生臭さをかき消してて。

 舌に感じるのはしっかりした旨味と脂の甘み。

 筋っぽさを感じる事も無く、噛むほどに味わいが深くなる。

 あと、上に乗せられた魚卵ね。

 とびこっぽいんだけど、より味が濃いというか。

 この魚卵がいいアクセントになってて、口の中でどんどん新しい旨味が作られていく。


「ガリ、置いときます」

「ありがとうございます」


 欲しいタイミングでガリも頂けたし。

 ――良かった、普通の色だ。

 ややピンクだけど、新生姜だと思えば許容許容。

 さてさて、お次は貝にでも行きますかね~。

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― 新着の感想 ―
味を計算して出してるだけで、スイさんの食事スタイルと合わなかっただけの可能性ありそう
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