だから人気無いのか
むしろレアな千円札に出会えたと思うと、あのカジノでの出来事も良かったのでは? と。
何ならレア紙幣として千円以上の値がついてたりして……。
いやまぁ、千円は千円なんですけどね。
「うし、到着」
で、いい具合に時間潰しを済ませた後、ハイエルフさんのアクセサリー作りの会場へ。
――なのだが……。
「俺しか居なくね?」
マジで参加者俺だけ説。
こんなことある?
仮にもクルーズ船でしょ?
お客さんの数は三桁は余裕でしょ?
なのに一人もいないの? どれだけ人気無いんだ?
「ほ、本当に来た……」
「? いや、そりゃあ予約しましたし……」
予約を受け付けていたハイエルフさんも信じられない、みたいな顔して俺の事見てくるし。
ここまで来ると何が原因で人気が無いのか解明したくなっちゃうな。
「え、えと、じゃ、じゃあ中に……」
「はい」
で、ハイエルフさんに促されて部屋の中に。
部屋の中には長テーブルと、簡易的な椅子。
簡易的と言ってもパイプ椅子じゃないよ? パイプ椅子ではないけど組み立て式の椅子で……。
某お笑いコンビが昼のワイドショーで破壊したみたいな形状の椅子ですわね。
「そ、それでは、ハイエルフ直伝、再来世までの運を今世に集める開運グッズを――」
「帰っていいですか?」
聞いて無いが?
開運間違い無しって言うか、運の前借だろそれ。
その来世と再来世の運を今世に持ってきたせいで、来世は蛙です、とかバッタです、とかになりえんか?
今世の運と引き換えにするにはあまりにも重すぎない?
「ま、待って、待って、待ってください!」
「いや、俺来世も人間になりたいんで」
「?」
まぁ、引き留められるわけですけれども。
残念だが、俺は運の前借はしようとは思わないんだ。
「あ、アクセサリーの効果を弱くすれば、ちょっと運を挙げる程度に調整できますから!」
「本当に?」
「も、もちろん! こ、効果を最大にすると再来世までの運を吸っちゃうだけで、弱くすれば……多分」
多分って言った?
確証は無いんじゃないか。
「じゃあまぁ、いいや」
「あ、ありがとうございます!」
何だろうなぁ。
ハイエルフって言うと、他のエルフ達とは違う、ぶっちゃけて言えばお嬢様気質なエルフってイメージだったんだけど……。
俺の目の前にいるアクセサリーの材料取り出し中のエルフは、どう見てもそんなタイプじゃなく。
どっちかと言うと、お嬢様に振り回されてる図書委員、みたいな印象なんよな。
「えぇと、じゃあ、まずはアクセサリーにあなたの魔力を登録しますので、魔力を手の平に集めていただいて……」
「??」
いやその……出来ませんが?
そんな出来て当たり前、みたいに言われてますけれども。
「出来ませんけど?」
「えうぇ!?」
どんな驚き方だ。
「え? に、人間でも手の平に集める魔力くらいはあるはずでは……」
「俺、異世界人なんですよねぇ。なので、魔力はあるかもですけど扱えなくて……」
「えぇ……」
信じられない、みたいな顔して、さっきアクセサリーの材料を取り出していたカバンから一冊の本を取り出し、読み始めるハイエルフさん。
……お客様対応マニュアルって手書きで書いてありますね。
……読むな。その対応するべき客の前で。
「とりあえず慰めの言葉をかける……慰めの言葉は247ページ参照……」
絶対に口に出して言っちゃいけない奴だろそれ。
大丈夫か?
「えぇっと……ざぁこ♡ ざぁこ♡」
「帰る」
「わー! お、お待ちください! お待ちください!!」
せめてかけるならちゃんと慰めの言葉をかけろ。
追い打ちをかけてどうする。
「でも、魔力登録をしないとアクセサリーの効果が反映されず……」
「むしろそっちの方がいいのでは……?」
落ち込みながら言うハイエルフさんに、そもそも効果を薄めて運用しようとか話してた以上、効果が無いならそれはそれでいいのでは? と。
少なくとも、来世や再来世までの運を吸うよりも効果が無い方がいいんじゃね? と。
「確かに?」
で、俺の言葉を受けて顔を上げるハイエルフさん。
「じゃあ、魔力登録は無しで!」
ついでに元気になったな。
「今回作るアクセサリーは、様々なパーツの組み合わせで効果を付けていくタイプのもので、付けるパーツによって効果が変わります」
と、説明しながらパーツと思われるものを並べていくハイエルフさん。
貝殻だったり、宝石だったり、木の枝だったりと、パーツについては統一感は無いな。
「で、そのパーツを付ける土台をまずはくみ上げていただき、そこにお客様の好みのパーツを散りばめていただきます」
「ふむふむ」
「土台は今から一緒に組み上げていきますよー」
という事で出てきたのは……太めの糸?
毛糸……ではないな。
もっとこう、何というか、しっかり紐だ。
「あ、ちなみに好きな色とかございます?」
「アースカラーとか?」
「じゃあ黒と、オレンジと、茶色と……」
と、色のついた紐をドンドンと取り出すハイエルフさん。
そして、
「まずはこれらを三つ編みにしていきましょう」
「三つ編みなんですね」
微妙に不安感にかられながら、俺はアクセサリー作りを開始するのだった。




