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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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ハードラックとダンスっちまった

 いと甘し。

 脳みそにガツンと来る甘さですわね。

 ……ただ、日本の食パンほど柔らかくないんよな、このフレンチトーストに使われてるパン。

 フランスパンの固い部分を取り除いた感じって言うか……。

 日本のフレンチトーストを茶碗蒸しとするなら、この異世界フレンチトーストは固焼きプリン……みたいな。

 微妙に伝わらないな、これ。


「クレープは美味い」


 ブランチのメインとしてのクレープはしっかり美味しい。

 生地に甘さは無くて、ややしょっぱさを感じる。

 そこに乗せられたリーフサラダと生ハムがちゃんと美味しい。

 シーザードレッシングっぽい、チーズが香るドレッシングも美味い。

 ……思えば、ナイフとフォークでクレープを食べるのは初めてかもしれん……。

 いつも紙で巻いて手で持って食べてたからな。

 ――いつもって言える頻度で食べてないけど。


「ふー……コーヒーは安定してますわね」


 クレープだけを見ればコーラとか頼みたかったけど、なにせフレンチトーストも頼みましたからね。

 飲み物はコーヒー。それもブラック。

 眠気覚ましも兼ねて、苦めの一杯を、とリクエストしたら、これがまた美味しくて。

 苦めで香ばしく、酸味控えめ。

 こういうのでいいんだよこういうので。


「……アイス美味い」


 フレンチトーストにトッピングしたアイスクリーム。

 安定剤とか入ってないから、外気ですら既に溶け始めてきてる。

 ……いや、焼きたてのフレンチトーストの熱に当てられてるだけだな。

 そんな溶けかけのアイスは、しっかりと牛乳を感じられるほど濃厚で、舌の上に乗せた瞬間にサッと溶けてミルクのコクを口一杯に広げてくれる。

 ……これ、アイスだけで食べたいかも。

 あるいはアフォガードとかにして。

 いやまぁ、普通にフレンチトーストと合わせるんだけどさぁ。


「普通に美味い」


 そう、普通に美味い、なのよ。

 何だろうな、フレンチトーストに関しては絶対に日本で食べた方が美味い。

 というか、日本の食パンが偉大だわ。

 フレンチトーストにするにあたり、あれほど適したパンもないだろうよ。

 最近見なくなった高級食パンとか異世界が仕入れたりしないかしら?

 こういうクルーズ船なら、あの食パン出しても違和感無いだろうし。

 なんだっけ? ゼラチン考えた人凄いわ、みたいな店名のやつね。


「ご馳走さまでした」


 完食。

 とはいえ、今日は夜まで甘い物はいいかなぁ。

 いくら脳みそが求めたとはいえ、多分過剰摂取ですね。

 ブラックコーヒーで何とか調和出来ないものか。


「クレープは美味かったけど、あまり腹に溜まらないな」


 ほとんどがフレンチトーストの甘さで満腹になったようなもんだからな。

 クレープじゃあまり腹の足しにならなかった。

 美味しかったんだけどね。


「食べ過ぎると眠くなりそうだし、ストラップ作りの時間になるまで適当にぶらつくか……」


 まぁ、既に血糖値はぶちあがってるんですけどね。

 あと、いたる所で食べ物と飲み物が手に入るこの船の上で、これ以上はいい、はフラグなのよ。



「……ずっと出てるんですけど……」


 船内をぶらつき、美味しそうな匂いに引かれて焼きたてのクッキーをいただき。

 違う違う、とクッキーを完食してまたぶらついていたら、今度はいつの間にかバニラシェイクを握っており。

 このままじゃ駄目だと食べ物が無い場所を求めてやってきたのはカジノ。

 ただ見学ってのも悪いと思い、千円だけ……とチップに両替してスロットに座ると……。

 お座り一発でなんか、BIGWIN!! とか表示され。

 見る見るうちにクレジットが増加。

 ビギナーズラックかーと思いつつも、これでしばらく時間潰しになるな、と思って回して五分。

 フリースピンからのジャックポットチャンスからの失敗してなお、MEGAWIN!! の表示。

 なんかクレジットが凄い数になってるんですけど……。


「もうすぐある船内イベントに参加予定なんで、クレジットを払い出したいんですけど……」

「――少々お待ちください」


 で、十分に時間が潰せたし、払い出しを……とカジノのスタッフを呼んだら、クレジットを確認して一瞬止まり。

 なんか、カジノの責任者っぽい人を連れてやってきた。


「お客様、こちらのクレジット量ですと払い出しに多少お時間が必要でして……」

「あー……じゃあ元本だけ払い出しして、残った量は何か別の物とかに交換とかって可能です?」

「もちろん可能でございます。ちなみに元本はおいくらほど……」

「千円ですね」

「……ほとんどクレジットが減りませんが?」

「ですね」


 最初のクレジットからはかけ離れた数字になっちゃってるからね。

 ……あー、


「じゃあ、この船のガーディアンさんいるじゃないですか?」

「どちらでしょうか?」

「両方ですね」

「居られますね」

「その二人に分配とかって可能です?」

「可能ですが……よろしいのですか?」

「守ってくれたお礼って事で」


 適当に思いついた事を口にしたけど、いいんじゃない?

 俺は別にギャンブラーって訳でもないし、収支がプラマイゼロになってるなら文句は無いかな。

 こういうカジノの払い出しからの現金交換からの日本円交換って結構面倒くさかったりするし。

 降って湧いたお金なら、こうして周囲にばらまくのも悪く無いんじゃない?

 知らんけど。


「では、お客様の元本分でございます」

「ありがとうございます」


 しっかり千円を受け取り、ハイエルフのアクセサリー作りへ。

 ――? この千円、夏目漱石じゃない?

 いつのだよ! 古いよ!!

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― 新着の感想 ―
結果北里から夏目になっただけという… 普通ならツアー代とお土産代くらいは換金したくなりそうだけど、豪快にぶちこんだなぁ
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