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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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変わるの好きねぇ

 ……何だろう?

 いやその、不味くは無いんだよ?

 むしろ美味しい部類に全然入るワインなんだけど……。

 なんか紅茶みたいな味がする……。


「美味しーねー」


 いや、うん。

 美味しいんだよ?

 でも、紅茶の風味がするのがマジで謎過ぎて受け入れがたいんよな。


「お代わりもありますからにゃ~」


 いや、早いて。

 そんなすぐに飲む干す人おらんやろ。

 みんなじっくり味わってるって。


「お代わり!」

「私も!!」


 ……俺はじっくり味わうからな。

 んー……紅茶風味って事で、まずはチョコレートを合わせてみるか。

 まぁ、ワインにチョコは結構あり得る組み合わせだし、紅茶の風味があるなら余計に合うやろ。

 ――ん、このチョコ、甘くない!

 チョコというか、カカオの風味がかなり来るけど、全然甘くないなこれ。

 ……あー。で、甘くないチョコとこの濡れた猫の髭、合う。

 なんか、チョコと合わせた事でワイン自体の甘さが引き出される感じだな。

 チョコの香りと紅茶風味がマッチするのは当然として、ワインの甘さとチョコの風味で、チョコ掛けフルーツの感じになる。

 これはハッキリ美味しいって言えるね。


「じゃあ次は……チーズかな」


 何となくでチーズを選び、口へ。

 ……このチーズはアレだな、凄い馴染みのある味をしてる。

 プロセスチーズって言われたらすっごい納得する。

 で、そこに濡れた猫の髭を……。


「……へぇ」


 チョコと合わせた時は甘さが強調されたけど、チーズの時は甘さより酸味を感じるな。

 でも、酢とかの尖った酸味じゃなくて、フルーツ由来の優しい酸味って言うの?

 甘酸っぱくて優しい感じの酸味ね。

 これも美味いわ。

 というか、合わせるおつまみによって味が変わるの面白いな。

 いや、もちろん何と合わせるかで味が変わるというか、味の感じ方が変わるのは普通なのよ。

 違うのよ。この濡れた猫の髭は。

 味がガッツリ変わってるのよ。


「……ナッツは香ばしさ、と」


 で、そうなったら残りのおつまみでも同味が変化するのか気になるわけで。

 試すしかねぇよなぁ、って事で。お次はナッツ。

 何ナッツなんだろうね? 少なくともピーではないな。

 アールとかかな?

 そんなアルファベット不明ナッツと合わせると、香ばしさがグンと引き立つ。

 濡れたアスファルトの匂いも、ナッツと合わせるとなりを潜め。

 フレッシュな果実の香りと共に、香ばしさが立ち昇って来るね。

 香りは最初に触れたようにマスカット。

 それも、実じゃなくて茎を噛んだようなニュアンスを感じるな。

 ナッツと合わせると。


「最後はジャーキー」


 で、お待ちかねのジャーキーとの合わせ。

 そうそう、チョコに甘さが無いおかげで、チョコが付いていてもそこまで気にならなかったよ。

 猫獣人さんもそこまで考えての盛り付けだったのかな。

 絶対に違うな。


「……純粋に美味い」


 この濡れた猫の髭、確実に味わいは白ワインなんだけど、ジャーキーに合いますわ。

 すっごい美味しい。

 これまでは酸味だの甘みだの香りだのが引き立てられてたけど、ジャーキーに至ってはワインの全体的なポテンシャルが二段階ぐらい引き上げられてるね。

 ジャーキーの肉肉しい旨味を引き上げつつ、香りと甘酸っぱさで口の中をリフレッシュ。

 香ばしさで肉の臭みを消して、逆にワインの香りは肉の風味で際立たせる。

 お互いにお互いを引き立て合うような関係。

 もうこれ優勝だろ。


「お代わりどうですかにゃ~?」

「半分くらいお願いします」


 肉と合わせてワインの美味しさに浸っていると、猫獣人さんからお代わりの案内が。

 もちろんいただきますよ。

 ただ、貰うのは最初に注いでもらった量の半分でいいかな。

 さっきのワイナリーでも結構飲んだし、もう一軒ワイナリーに行くみたいだから、ここで潰れるわけにはいかんのだ。


「どうぞにゃ~」


 というわけでグラスに対して四分の一くらいの量を注いでもらい、それらを肉と合わせて堪能。

 濡れた猫の髭、ネーミングと香りを嗅いだ第一印象はあまりいいものではなかったけれど、実際に飲んでみると、確かに神に捧げられるようなワインだなって感じはしたね。

 この世界のワインの基準がどうかは知らないけれど、合わせるおつまみで味わいがかなり変化するってのも加点要素。

 飲み手が自分の好みの味わいになるおつまみを探すって楽しみになるのも嬉しい。


「ご馳走さまでした」


 満足ですわ。


「口直しと酔い覚ましのマタタビですにゃ~」


 そして猫獣人さんからマタタビを貰う、と。

 どちらかと言うと猫獣人さんの方が貰う立場なのでは?

 そもそもマタタビって食べられるんだっけ?

 ……あ、でも、マタタビ酒みたいなのはどこかで見たことがある様なないような……。

 まぁ、いっか。

 というわけで貰ったマタタビの実を口に放り込み、噛んで。


「……かっら」


 舌がひりひりする……。

 これ本当に食用?

 あ、でも辛さは長くは続かなくて、その後にミントみたいな爽やかな清涼感が……。

 おー……マタタビってこんな感じなのか。

 と思ったら苦みと渋味が……。

 美味しくない……。


「濡れた猫の髭はもちろん販売しておりますにゃ。お買い求めは自分に声をかけて欲しいにゃ~」


 と、猫獣人さんがワインを堪能した他のツアー客に営業をかけている間。

 俺は、舌に広がる苦みと渋味に、悪戦苦闘するのだった。

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