だいぶ飲んでる
ワインと聞いて真っ先に思い浮かべるような渋さがあまりなく、凄く飲みやすい。
果実感もしっかりあって、普通に美味しいワイン。
そこへ何肉か分からないジャーキーを口に入れ、咀嚼。
――ジャーキーが美味いな。
何肉なんだろう、マジで。
しっとり柔らかで、歯に当たると繊維が勝手にほぐれていく。
分かった、アレだ。
ジャーキーってよりもコンビーフとかに近いんだ。
乾燥させて形が保たれてるコンビーフ。
うん、凄いしっくりくる。
「おー」
で、そんな美味しい干しコンビーフの後にワインを含んだら、これもまた美味しい。
さっきは控えめで飲みやすいって言った渋味も、肉と合わせることでしっかりと主張してくる。
だからと言って飲みやすさの邪魔になる事は無く、むしろ肉の旨味と組んで新しい旨味に口の中で変わる。
果実感が後味をサッパリとしてくれて、肉の脂を洗い流すよう。
このワインも何かと合わせたら化けるタイプか。
いやぁ、美味いな。
「次は白ワインになります」
そうしてまたちょっとだけグラスに注がれるから、スワリングしてグラスを洗って飲み干し。
ん、少量でも分かる、この白ワインも美味い。
「ビスケットと合わせてどうぞ」
今回のワインのお供はビスケットか。
さてさて、まずはやっぱり色味から。
ジンジャーエールみたいな黄金色で、香りは……?
金平糖みたいな甘い香りと、柑橘系の甘酸っぱさ。
若干の蜂蜜っぽさもあるか。
続いて味は……。
「うん、美味い」
口に含んだ瞬間の香りが凄いね。
シトラスのような清涼感のある香りと、香りの奥にピーナッツとかの香ばしさを感じる。
味はなんというか、かなり伸びがある味わい。
十分な果実感が長く続く感じ。
……これもビスケットと合わせたら化けるんでしょ?
という事でビスケットを食べます。
――まずビスケットが美味いじゃん。
バターの香りがかなりするね。
レモンの風味がするから皮が練り込まれてるとかかな?
これ、船に戻ってからも食べたいんだけど、取扱とかはしてないの?
「ビスケット美味しいですね」
「ありがとうございます。自信作なんですよ」
ワイナリーダークエルフさんの手作りだったか。
じゃあ船に戻っては食べられないな。
ビスケットという思わぬ伏兵に舌鼓を打ち、バターの香りが消えぬ内にワインをクピリ。
……おー。
めっちゃ香ばしい。
さっきまでは香りの奥にあった香ばしさが、バターの香ばしさに引っ張られて前面に出てきてる感じ。
その香ばしさの奥から出てきた果実感が、ビスケットのレモン風味と合わさって美味い。
長く続く果実感も、バターのコクの余韻とマッチしていてすっごい合うね。
……え? このビスケットを手作り?
もしかして、ワイナリーダークエルフさん……お菓子作りとか得意だったりする系です?
「めっちゃ美味しかった……」
主にワインよりもビスケットが。
帰りにビスケットを買えないか交渉しようかな……。
*
ふぅ……あの後、残り二本のワインも堪能しましたわよ。
一本はロゼワイン。ロゼと言ってもピンクというよりはオレンジに近いような色合いで、味は結構甘め。
これにはなんとサラダが出てきて、いわゆるシーザーサラダだったんだけど。
中に干し柿? みたいな味の野菜なのか果物なのかの千切りが入ってて、それが意外にチーズやドレッシングに合って驚いたんだよね。
で、もちろんワインにも合った。
チーズのコクとドレッシングの塩味、酸味がワインの甘さとしっかりマッチしてさ。
そのワインの甘さを支える、干し柿みたいなやつの千切りの味がまたいいのよ。
ワインの邪魔をしない香り、甘さでさ。
んで、もう一本はスパークリングの白ワイン。
白身魚のムニエルと一緒に出てきたんだけど、これがまた美味しくてね。
白ワインにレモン果汁とニンニク、パプリカを刻んだ物を入れて、塩コショウで味を調えたソースがかかってて、ソースも絶品。
白身魚は味は淡泊ながらも身がホロホロと崩れるような柔らかさで、パリッと焼かれた皮目と身の柔らかさのコントラストが絶妙。
白のスパークリングワインは魚の脂と調和する美味しさで、後味に塩っぽいミネラル感を感じたね。
だからこそ魚に合うんだろうなって感じ。
ソースにも白ワインが使われてるから合わないはずもなく、白身魚の脂を炭酸で流してくれるから後味もスッキリ。
大変堪能させていただきました。
「それでは、二十年熟成のワインを注がせていただきます」
というわけで、やって参りました本命のワイン。
二十年熟成はもうしっかりと高級ワインに片足突っ込んでますわよね?
いやまぁ、銘柄次第って至極真っ当な答えが返ってきそうですけれども。
「これは特にツマミなどを用意しておりませんので、ワイン単体でお召し上がりください」
ほう? ワインとは常に何かとマリアージュさせるものだと思ってたんだけど、違うのかな?
でもまぁ、ワイナリーダークエルフさんがそう言うなら、ワイン単体で味わうのが一番美味しい味わい方なんだろうな。
それじゃあ、満を持して。
二十年熟成の異世界ワイン……いただきます!




