始動
ちくしょう……持っていかれた……お菓子を!
まだ初日だってのに、もう残りのロウチュウの残機が少ないぞ?
そもそも、スイさんに出会うとは思ってなかったし、あの人? 龍? に出会うと分かっていたのならもっと持って来たのに……。
ん? エルフのショーの時に子供にあげなければ良かった?
そこをけちるなんてとんでもない。
子供には優しくしよう、全人類のスローガンだろうがよ。
「……明日はスイさんには与えないようにしよう」
とりあえず俺の顔見たらお菓子ねだりに寄ってくるからなあのドラゴン。
寄ってくる様は大型犬のソレなんよ。
尻尾があったら多分振り回してると思う。
――あったわ、立派な尻尾が。
ただ、犬とか見たいに感情で動いてる様子は無いな。
基本真っ直ぐ地面に伸びてるというか……。
「とりあえず今日は寝るか。明日は昼頃にツアーがあるし、それまではゆっくりとしよう」
ちなみにスイさんにチルタイムを邪魔されたので、現状は自分の客室のベッドの上。
船がデカいおかげか波の揺れも感じないし、すっごく快適なんだよね。
あ、寝る前にルームサービスでココアを頼もう。
これもこのフロアの客室全部についてるサービスだからね、使わないと損。
……甘さ控えめ、これでよし、と。
*
おはようございまふ。
ふぁ~……かなりゆっくり寝たなぁ。
もうとっくに日が昇ってら。
さて、フロントに起きましたよって連絡して、モーニングを持って来てもらうか。
そしたら少しだけゆっくりして、ツアー用に荷物まとめて……。
と連絡だけして考えてたら、ドアをノックする音が。
「はーい」
返事をすると、ルームサービスのモーニングが登場ですわよ。
「ありがとうございます」
スタッフにお礼を言って、運ばれたモーニングはテーブルへ。
テラス席で海を見ながら食べましょうかね。
「ベーコンエッグ、ソーセージ、スクランブルエッグ、サラダ、ヨーグルト、クロワッサン……」
なんか増えてない?
スクランブルエッグとソーセージは頼んでないはずなんだけど……。
あ、よく見たらデフォルトで付いてるのか、モーニングに。
だったらベーコンエッグはいらなかったかもな。
同じ肉と卵だし。
「まぁいいや、いただきます」
というわけでまずはクロワッサンから。
焼きたてで表面がパリパリとしたクロワッサンは、生地の一層一層がモチモチとしていて歯を一瞬受け止める。
で、噛んだ生地から一気にバターの香りが昇って来て、鼻に抜けて心地いい風味が胸いっぱいに広がるね。
僕はここに追いバター。
一口食べた断面図にバターを塗って、更に一口。
あー……バター最高。
……このバター、かなり美味いな。
なんと言うか、脂!! って感じがしない。
香りは凄くいいのに後味とかはスッと消えると言うか、あっさりした味わいなのよな。
なんてバターなんだろ? 異世界のバターだよな?
「ん、美味い」
続いてスクランブルエッグ。
トマトとチーズの入ったスクランブルエッグは、しっかり水分を残してぽってりトロリと仕上がってる。
口一杯に卵の風味、トマトの旨味と酸味、チーズの塩味とコクが広がってくね。
――これで見た目が緑色じゃ無ければなぁ。
いやまぁ、緑の卵は美味しいって知ってるからもう特に抵抗も無いんだけど。
「こういうのでいいんだよこういうので」
お次はソーセージ。
ただ、このソーセージ、焼いてはなくて茹でてある。
付け合わせのマスタードを付けて食べると、皮はプリッと、身はパキッと。
肉汁が溢れ、ハーブの香りが口の中に広がる。
マジでこういうのでいいんだよの代表みたいなソーセージじゃん。
最高かな? 最高だよ?
「欲を言えばベーコンエッグは片面焼きが良かったけど」
お出しされたベーコンエッグ、つまるところ目玉焼きとベーコンなんだけど、目玉焼きが両面焼きなのよ。
ターンオーバーってやつ。
やっぱり日本人としては、サニーサイドアップと呼ばれる片面焼きがいいんだけどそこんとこどう?
もしかしたら片面焼きって指定出来たのかもしれない。
まぁ、もう後の祭りだけど。
「でも黄身はしっかり半熟なのは凄いな」
なお、両面焼いても黄身は固まらないギリギリの焼き加減なもよう。
だったら許すわ。
「カリカリのベーコンも美味いし、卵も美味い」
結論としては何でも美味い。
……あ、サラダ。
――じ、時代はベジファーストならぬベジレイトですわよ。
……ドレッシングはイタリアンか。
「まぁ、うん」
サラダだね、って感じ。
ドレッシングは美味いよ? ただまぁ、サラダ食べてうめぇ! ってはならんな。
美味しいんだけどね。
「ヨーグルトにはジャムが付いてるし、それ食べたらホットチョコレート飲んで一服だな」
タバコ吸わないけどね。
ちなみにヨーグルトについてたジャムはビワみたいな味のジャムだった。
美味しかったよ。爽やかな甘さと酸っぱさで、それがヨーグルト自体の酸味と妙にマッチしてね。
口の中に残った酸味は、あっまい甘いホットチョコレートで流しましたわ。
さて、それじゃあ……ツアーの方に参加しましょうかしらね。




