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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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習得難易度鬼

 ふぅ……。

 食後、ゆっくりとした時間の中で、夜風に当たってボーっとした時間を過ごす。

 あぁ、何と心地いい事だろうか。

 チルだぜ……。


「なぁおい! エルフの雑技団のショー見たかよ!!」


 そんなチルタイムでも、他のお客にとってはそうじゃない事もある。

 興奮気味に話すこの乗客は、どうやら夜の部のエルフ雑技団のショーを見終えたところらしい。


「見た見た! 凄かったよな!」

「マジで!! あんなの見た事ねぇよ!」


 ……ほーん。

 こっちの世界、魔法が当たり前にある世界だから、言うなれば種も仕掛けもあるのが普通じゃん?

 それでもスゲーって言われるって事は、あの雑技団は結構凄かったんやなって。

 ――子供泣かせてたけど。


「どうやったら観客をランダムな席に転移させられるんだろうな!?」


 あ、そっち。

 凄いって言ってたのはビンゴの時の一斉転移の話?

 ……確かに言われて見るとそうだな?

 誰か一人を特定の場所に、とかならまぁ、エルフツアーでもあった事だし出来るか、ってなるけどさ。

 座ってる人達を一斉にランダムな場所にしっかり転移、ってのは、もしかしたら物凄くハードルが高いんじゃないか?

 下手すると、『椅子の中に居る』、や、観客同士が転移中にぶつかる、とかいったことが起きそうだし。

 

「お前転移魔法を専攻してんだろ? あれどうやってるんだ?」


 ……あるんだ。

 転移魔法専攻とか。

 となると会話してるのは現代で言う所の大学生とかなのか?

 いや、分からん。ワンチャン高校生、あるいは専門学生の可能性も……。


「正直、分からん」

「分からんのかーい」


 ノリいいな。


「ただ、もしあれが本当に観客全員をランダム転移させていたのなら、消費する魔力が膨大なものになる」

「ほぅ?」

「そんな事が出来るのは、転移魔法の祖と言われるニンファ先生くらいだと思う」

「ほうほぅ」


 一応出来る人は居るんだね。


「ただ、ニンファ先生の姿は見えなかったし……多分、椅子の方に仕掛けがあるんじゃないかと思ってる」

「ほぅ?」


 面白いな、続けて?


「椅子に、『座った人を他の椅子に転移させる』という魔道具を仕込み、転移先を他の魔道具と被らないように設定しておけば、魔道具に魔力を流すだけで簡単に発動する」

「転移魔法より手軽なのか?」

「決まった場所にしか転移させない分、自由に転移させる転移魔法よりは手軽……だと思う」

「思うって……」

「そもそもそんな魔道具があるのか分からないし、あっても正直、それでも魔力の消費はデカいと思う。ただ、転移魔法で全員転移させるよりは安く済むだろうけど」

「なるほどな」


 ……つまり、あの雑技団は実際に観客を転移させてたわけではなく。

 合図を送って椅子に備え付けてた転移装置を起動させたって事でよろしい?

 いやまぁ、それが分かったからって特に何も無いわけですけれども。


「つまり不思議装置って事か」

「だな」


 ……いいのかそれで?

 魔法だの魔道具だの出てきた中で、結論が不思議装置って。

 いやまぁ、話してる人達が納得するなら別に俺は口を挟む気は無いけどさぁ……。


「…………貴様は何をしているのだ?」

「あ、スイさん」


 なんて、会話に聞き耳を立てていたら、スイさんに声をかけられた。

 何って……。


「チルタイム?」

「おもっくそ会話に聞き耳を立てていただろうが」


 何故バレたし。

 ってそうか、現実視を持ってるんだっけ?

 俺が何をしてたのか普通に見えちゃってるのか、スイさんには。


「スイさんこそ何を?」

「ガーディアンとしての見回りだ」

「あ、ちゃんと働いてるんだ」

「貴様は我を何だと思っているんだ?」

「かっこよくて強いドラゴン?」

「もっと褒めろ」


 間違ってなかったらしい。

 にしても、スイさん、ちゃんと働いてるんだね。

 俺も鼻が高いよ。


「これでも今日は獲物を仕留めたのだぞ?」

「へぇ」

「興味無さそうだな」


 いやまぁ、船が襲われたって訳でもないし。

 今からこいつに襲われまーすとかなら興味出てくるけれども。


「ディナーに出すと言っていたのだがな」

「魔物を?」

「うむ」


 ちょっと気になること言うじゃん。

 マジか、スイさんが狩った魔物がディナーに出てたのか。

 ちょっと食べたかったな。


「どこで出されるんです? ビュッフェ?」

「いや、そんな大規模に振舞う大きさではなかった。大方どこかのレストランのメインでも張っているのだろう」

「へー。ますます食べたかったなぁ」


 そんな情報があるならもっと早く教えて欲しかった。

 具体的に言えば俺が食事する前に。


「ちなみに何を狩ったんです?」

「ん? メチャンコウルトラギガントシュリンプという魔物だぞ?」

「――ん?」


 なんか、すっごい最近聞いたような名前が……。


「えーっと……ご馳走さまでした」

「なんだ。食べていたのか」


 すっごい美味しかったです、はい。

 なんだよ、食べてるじゃんかよ。

 誰だよ、食事前に教えて欲しかったとか言ってたやつ。

 ――俺ですね。


「結構デカかったと思うんですけど……」


 ビュッフェで振舞うほどではない、とか言ってたけど、俺が知る海老の百倍は大きかったからね?

 どう少なく見積もっても。


「この船に何人乗っていると思っている」

「まぁ、そうですけれど」


 いやでも、別に乗客全員に行き渡らせる必要は無いわけで。

 欲しい人だけに振舞うって考えたら、やれそうな気も……。


「……なんでしょう?」


 なんて事を考えてたら、俺のことをじーっと見てくるスイさんに気が付き。

 まぁ、ある程度察しは付くものの、一応確認の為に声をかける。


「お菓子!!」


 デスヨネー。

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