見てはいけないもの
軽快なドラムロールとカラフルなスポットライト。
スポットライトの先には何やら箱が置かれていて。
やがて、スポットライトの一つが会場の端を照らす。
それを目で追い、光の先には何もないじゃん、と思っていると、パッと何かが出現。
どうやらそれは宙に浮く片腕らしく、まるで芋虫のような動きをしてステージ上の箱を目指す。
「微妙に動きがキモイ……」
まるで骨なんて入ってないかのような腕の動きを見ながら、そんな正直な感想を口にしていると、今度はスポットライトが四方に移動。
その先にはもう片方の腕と両足がそれぞれ照らされていて、一つだけ、何も写されていないスポットライトが、あれ? あれ? と言った感じで照らした周りを細かく移動。
そうこうしている間に腕も足も、箱に集まると、箱のふたを開けて中に入り……。
「HAHAHAHAHAHAHAHAHA」
妙にアメリカンな笑い声が響いたかと思えば、先程まで照らすものが無くてさまよっていたスポットライトがステージの上空を照らす。
するとそこから……、
「レディィィィィィィィス! アン!! ジェントルメェェェェェェェェェェン!!」
生首だけのエルフがゆっくりと回転しながら登場。
その生首は、腕や足が入っていった箱の上にゆっくりと着地し、
「あ、こら! ちょっと!!」
箱から出てきた腕に髪の毛を掴まれ、半ば強引に箱の中へ。
そうしてドラムロールが止み、スポットライトが集まって箱を照らす中。
「ハッピーー!!」
会場の後ろ。
俺たちが通って会場に入ってきたドアが音を立てて勢いよく開かれ。
先ほど箱の中に入っていった腕、脚、首と全く一緒の姿のエルフが登場。
一斉にスポットライトがそちらを照らし、現れたエルフは笑顔を振りまき、手を振りながらゆっくりとステージの方へと歩いて行く。
――あの、スポットライトが消えて暗くなったステージ……。
黒い服を着て目立たなくなったエルフがめっちゃ静かに箱から出てきてステージ横にはけていったんだけど……。
いや、これはスポットライトの方を見てなかった俺が悪いのか。
後ろからエルフが出てきた時に、箱はどうなってるんだろう? なんて興味を持つんじゃなかったな。
「さぁさぁ皆さま! ……こーんにーちわー!!」
ブッ。
いきなり子供番組みたいな挨拶するじゃん。
やめろ、エルフの顔面でそんなことするの。
面白いだろ。
「ん~? 声が小さいなー? もう一回! こーんにーちわー!!」
お約束の二回目もしなくていいのよ。
全く……。
「こーんにーちわー!!」
……なんかステージの上から出てきたんですけど。
ええっと……エルフが一人、エルフが二人……。
総勢五人のエルフが、ステージ上で逆さまの状態で挨拶を返してきた。
と思ったらステージに着地……せずにスッとまるで穴でも開いているかのように消えて……。
「ハロー」
ビクッ!? 俺の真横に登場。
あれ? 今さっきまで俺の隣には普通に別のお客さんが居たような……。
あ、居るわ。さっきまで俺の隣に居たお客さん。
ステージ上に。
「君はエルフとドワーフ、どっちが好きだい?」
いや、エルフに聞かれてドワーフとは答えられないだろうよ。
「エルフです」
「いいね! 最高にハッピーだよ!!」
そう言って俺に握手を求めてきたエルフは、俺が握手に応じるとブンブンと腕を振って握手をし。
「じゃあね☆」
ボン、とわざとらしく煙を出して消失。
向かった先は当然ステージの上と。
――なんか、ステージ上に上半身しか出てないんだけど。
下半身どこやったんだあのエルフ。
「みんな、大変! エルフの一人が転移魔法に失敗してステージに埋まっちゃった! ステージに居るみんな! 力を合わせて引っ張り上げて!!」
ああ、なるほど、そういうプログラムなのね。
……転移魔法に失敗して体が埋まってる相手を引き抜いていいんですかね?
土に埋まってるのとはわけが違うぞ? 大きなカブじゃないんだぞ?
「うんとこしょー、どっこいしょ! それでもエルフは抜けません」
意識してるよね? 大きなカブ、意識してるよね?
「みんな大変! このままだとステージを爆破するか、エルフの身体を斬らなきゃいけなくなっちゃう! みんな頑張って引き抜いてあげて!」
どっちもやだなぁ。
ちなみにステージに埋まってるのは俺の隣に出現したエルフで、他のエルフはステージ上で引き抜いてるお客さん達を応援してる。
いや、お前らも引き抜くの手伝えよ。
「ん!? みんな! あれを見て!!」
で、どんなに引き抜こうとしてもびくともしないエルフを見ていた司会のエルフが、ステージの上空を指差すと。
そこには、恐らくは埋まっているエルフの下半身であろう物が、足をばたつかせながら生えていて。
「どうやら、ステージの下と上が繋がっちゃってるみたい……。そうだ! 引っ張ってもダメなら、穴の中に押し込んじゃおう!」
いや、そうはならんやろ、というツッコミは誰も入れず、それまでエルフの腕を引っ張っていたステージ上のお客さんが、今度はエルフの上半身を押し込み始め。
さっきまで応援していたエルフ雑技団のエルフ達も、押し込みに参加。
「もう少しだよー! みんな頑張れー!」
徐々に押し込まれ、段々と上空から生えてくるエルフの上半身は。
「いっけぇー!!」
最後の一押しのあと、ポンッとコミカルな音を立て、全身揃った状態で、ステージ上に着地するのでした。




