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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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なんで刺して焼くかな

「うっめぇ……」


 皮目に散りばめられたよく分からないスパイス。

 胡椒っぽくはあるけど、もっとこう、何というか……。

 柑橘系の香りがあるような……。

 ――ん? 柚子胡椒か? これ。


「柚子胡椒っぽいな」


 見た目は完全にオールスパイスとかの類なのに、味や香りは柚子胡椒によく似ている。

 そんなスパイスをまぶされて焼いた黒魔鴨とやらは、皮はパリッとジューシィ。

 お肉はしっとり柔らかく、皮と肉の食感の違いのコントラストが美味しさを倍増させてるね。

 味付けは皮目のスパイスと塩だけっぽいけど、それがまた肉のシンプルなおいしさを増幅させてる。

 三切れじゃ足りなかったな。もっと貰えばよかった。


「ビールが美味い」


 そして、そんな肉をツマミに飲むビールが不味いわけがない。


「餃子です」


 ――うん?

 なんか、串焼きに似つかわしくない単語が聞こえてきたような……。

 ――餃子だ。餃子が刺さってるわ。


「ください」

「いくつにします?」

「じゃあ3つで」


 というわけで串から外された餃子が三つ。

 ……穴開いてるんだよな。肉汁溢れてるんだよな。

 なんで串に刺して焼いちゃうかなぁ……。


「……酢は無いのか」


 ちな餃子は酢胡椒で食べる派。

 たまに酢醤油。

 問題はテーブルに調味料とかが無い事かな。

 まぁ、そのまま食べるしかないか。


「ん! 餡にしっかり味が付いてる!」


 餡にしっかり味が付いてるという事は、味があるという事です。

 味付け的には醤油とか胡椒とかよりもソース系。

 しっかり塩味を感じつつも、野菜やフルーツ由来であろう甘さがほんのり来る。

 で、皮がまたモチモチでうめぇんだ。

 焼いてあるからパリッとしてるのを想像してたのに、茹でてあるのでは? と感じる位にはモチモチ。

 そして、串に刺さってた穴から肉汁が流れてるって件だけど、ぶっちゃけあれ、誤差。

 口に入れて噛んだ瞬間にもっと肉汁が溢れてくるから、多少流れたところで全然気にならない。

 この肉汁がまた美味いんだ。

 コクがあって甘みがあり、それでいてサラサラしていてさ。

 全然くどくない。

 そしてそこに流し込むビールですよ。

 旅行中、昼間から、餃子で、ビールを流し込む。

 はい優勝。はい勝ち。

 対戦ありがとうございました、GG。


「この皮はどうやって作ってるんだろ」


 食べる度に思う。

 焼き色は付いてるし、どう考えても茹でてないはずなのに……。

 まぁ、いくら食べたところで答えは出ないんですけれども。


「双角兎の蒸し揚げです」

「ください」


 また知らん食材出てきた。

 兎か。欧州とかではメジャーなんだっけ?

 あと蒸し揚げ? ってどんな調理法?


「ちなみに蒸し揚げというのは?」

「揮発しやすい油を超高温で熱し、その蒸気で肉を蒸します」

「するとどうなるんです?」

「お肉がパサつかず、しっとりと仕上がりになりつつも表面は揚げたようにカリっと仕上がります」

「つまり美味しいって事ですね?」

「その通りです」


 なるほどな。

 いやまぁ、現実にそんな調理法無いんだろうけど。

 異世界だから出来る手法って事なのかな。


「……当然の様に肉がオレンジ色なのは気になるけど」


 さっきまでの肉は、まぁ肉だよね、みたいな色だったのに。

 この双角兎? とやらの肉はオレンジ色なんよな。

 しかもこう……なんて言う? 肉っぽいオレンジ色じゃなくてさ。

 もっと濃いというか、透明感が無いというか……。

 絵具のオレンジ色そのまま、みたいな。

 まぁ食べるんですけど。

 

「えぇ、うっま」


 俺が食べた事のある兎肉のイメージは、もっとパサパサしてて脂肪感無いなってイメージだったのに。

 この双角兎の蒸し揚げは一切パサついてない。

 ナイフで切っても肉汁は溢れてこないのに、口に入れて噛めばしっかりジュワって染み出してくる。

 で、何故か知らないけどこの肉汁が甘酸っぱいんです。

 お肉に果物のソースを使うのは結構あるから、肉と甘酸っぱいものの組み合わせは何度か体験したことあるけどさ。

 お肉自体から甘酸っぱい肉汁が出てくるのは未体験ですわよ。

 しかもそれが美味いと来たもんだ。

 異世界は俺が知らないことだらけだなぁ……。


「ビール無くなっちゃった」


 酒が進んでしょうがないよ。

 次は何を飲もうか。


「一旦ソフトドリンクというのもあり」


 ウェルカムワインも飲んでるし、割と酔いが回ってる気もする。

 何かソフトドリンクにしようか。


「ミントソーダっていうのにしよう」


 響きが美味しそうじゃん? ミントソーダ。

 ちなみにチョコミントは大好きで、夏場には必ずアイスを買います。

 歯磨き粉味呼ばわりする人は敵です。過去には会社の上司を倒しました。

 対戦よろしくお願いします。


「店員さんはどう呼べばいいんだろう」


 と一瞬考えたけど、肉を持って回って来てくれるし、その時に頼めばいいやって。

 次は何が来るんだろうなぁ。


「焼売です」


 だから! 串に刺して!! 焼くんじゃねぇ!!

 蒸せ!! 蒸し揚げをさっき持って来ただろ! という事は蒸せるんだろ!!

 焼売は蒸せ!!


「ください」


 いやまぁ、貰うんですけれども。


「あと、ミントソーダをお願いします」

「かしこまりました。……もしドリンク類を注文の際は指笛を鳴らして貰えれば駆け付けますが?」

「鳴らせませんが?」


 いやあの、そんなさも鳴らせることが当然のように言われましても。

 というか、エルフは指パッチンで、ドワーフは指笛で店員を呼ぶのか……。

 変な所で似てない? この二種族。

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