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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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先入観崩壊

 う~む……。

 旅行先でドワーフにお酒を奢った金額は果たして旅行費としてカウントしていいのだろうか?

 また母親から、


『次は磔にするぞ?』


 とか送られてきそうで怖い。

 確定申告で色々な物を経費に計上してる人達ってこんな感じなのかな……?


「結構時間経ったし、ご飯に行こう」


 笑顔でタワービールとやらを一気飲みするドワーフ達に手を振り、レクリエーションルームを後にする。

 チラッと見たけど、チェスとかもあるんだよな。

 まぁ、やる相手いないけど。

 というわけでご飯だご飯だススム君。


「と言ってもレストランは一か所じゃないんだよな」


 ただ、部屋にあったクルーズマップを見るに、食事処は一か所じゃない。

 まずはオーソドックスな? ビュッフェ形式のレストランがあり、一定ランク以上の客室を利用する人達限定のレストラン。

 更には追加課金しないと解放されない特別なレストランと、最低でも三種類。

 そして、ビュッフェと限定レストランは、エルフ式とドワーフ式とに分かれているらしく。

 提供される料理も違うものなのだとか。


「エルフ料理を『エルフィアン』、ドワーフ料理を『ドワーフン』と書いてあるの面白いな」


 最初は頭にハテナが浮かんだけどね。

 野菜たっぷりのエルフィアン料理とか、じっくりと熟成させた肉を、自慢のドワーフンで、とか言われてもちんぷんかんぷんよ。

 ただまぁ、レストランの説明にそんなの載ってたら、料理なんだろうなって。

 ワンチャン固有の料理名なのかもしれないけれども。


「結構ガッツリ食べたいし、ドワーフ料理に行ってみるか」


 もちろん向かう先は限定レストラン。

 確認したけど、俺の部屋がある階層の客は利用可能っぽい。

 まぁ、ダメなら入口で弾かれるでしょ。


「席に案内いたします」


 ……嘘だろ?

 このレストランのスタッフ、ドワーフなんだけど……。

 ドワーフが――敬語を喋った!?

 バカなっ! ドワーフと言えばがさつで常にタメ口なキャラしか知らない!

 こんなの、僕のデータには無いぞ!!


「こちらへどうぞ」


 更には椅子も引いてくれただと!?

 ははーん? さてはこのスタッフ、ドワーフではないな?


「当レストランではそれぞれシェフが巡回し、料理を食べるかどうか尋ねてきます。不要な場合のみお声がけください」

「シェラスコみたいな感じか」


 でっかいお肉を串焼きにして、テーブルでお皿に切り取ってくれるやつ。

 あれ何回かお店で食べたことあるんだけど、結構部位ごとに違った味わいがあって美味しかったんだよな。


「また、当レストランに置きましては酒類の提供は無料となっております。心置きなくご注文ください」

「マジか」


 アルコール無料マジか。

 え? じゃあドワーフにとってこの店天国なのでは?

 さっきポーカーをやってたドワーフとかここに来そう。


「当レストランはドワーフのお客様に関してはお断りさせていただいておりますので、お酒の在庫が尽きることはそうそうありません。ご遠慮なくご注文ください」


 現実は無情である。

 まぁ、そりゃあそうか。

 こうでもしないと飲みつくされるだろうし。

 ――このスタッフさんは大丈夫なのかな?

 目の前で美味しそうにお酒飲まれるの、普通にきつくない?


「また、このレストランで働く全てのドワーフは、私を含めて全てお酒が飲めないドワーフとなっております」


 ……居るんだ、お酒が飲めないドワーフって。

 まぁ、居るか。居るよな、うん。


「ですので、どうぞご満足いただけるまで堪能ください」


 という事でドワーフ式レストランを初体験。

 とりあえず最初のお肉が持って来られるまで待機かな?


「最初の飲み物はいかがいたしましょう?」

「じゃあビールで」

「かしこまりました」


 そう言って頭を下げ、厨房に入り、ものの数秒でジョッキを持って登場。


「ビールです」

「ありがとうございます」

「あ、申し訳ございません。こちらをお渡ししておきます」


 そう言って渡されたのは、一枚のプレート。


「そちら、表面がまだまだ飲み食いする、という意思表示となってまして、裏面が休憩中、となっております。プレートを裏にして置いておきますと、料理や飲み物の伺いを行いませんので」

「自分のペースで食べられるように調整出来るって事ですね」

「その通りです」


 これもシュラスコのお店と似た感じだな。

 ……とりあえずビール飲も。


「――あ゛ーっ!! 真昼間っから飲むビール最高!!」


 日本のビールみたくキンッキンには冷えてないけど、その分華やかな香りがすっげぇ広がる。

 爽やかで華やかなフレッシュな香りと、程よい苦み。

 炭酸はやや強めで、すきっ腹にはちときついな。


「黒魔鴨のロースト、部位は首肉」

「多めにください」


 という事で最初にやって来たお肉は鴨肉。

 首肉との事だけど、最初だからと多めに貰っちゃった。


「じゃいただきます!」


 お皿に三切れ乗せられた黒魔鴨とやらのロースト。

 当然初めてな食材だけど、見せて貰おうじゃないか。

 異世界のドワーフ料理の性能とやらを。

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