各方面に失礼
「で? 貴様の予定は?」
「特には。またミステリーツアーで来ただけですからねぇ」
「であれば客室内のパンフレットに目を通すと良い。船内イベントやら寄港地で参加できるツアーやらの情報があるぞ」
「お、それはありがたいですね」
クルーズ船とかであるやつだよね。
まぁ、乗り込む前に予約の段階で申し込んだりするけど。
旅の途中で気が変わって、急遽参加とか出来たりするし……。
その場合は定員が決められてたりするけれども。
「おすすめはワインの試飲会だな」
「それはイベントです? それともツアーです?」
「ツアーだ。試飲会をイベントとするとドワーフ連中が飲み干してしまうわ」
「それもそうか」
ワインの試飲会ね。
チェックしておこう。
「じゃ部屋に戻ります」
「うむ。あ、そうそう。我と同じフロアなのだから部屋のランクも同じであろう? 特典がいくつかついておるから確認しておくのだぞ」
「あ、はーい」
というわけでスイさんと別れて部屋へ。
ちなみにスイさんはヨーグルト味のロウチュウを全部持って行きました。
気に入ったらしい。
「んじゃ、色々と確認しますか」
部屋に入れば、テーブルの上にはウェルカムワイン。
小さいサイズの瓶だけど、これはこれで嬉しい。
じゃなくて、
「えーっと、とりあえずは夜まで何も無いかな?」
今日のスケジュールを確認。
ただ、色々とイベントは催されているものの、興味を惹かれるものはあまり無い。
というのも、
『ドワーフVSエルフの大弁論大会!!』
とか、
『悪用厳禁! ダークエルフ監修の嫌いな相手に災いが流星群な呪いのアミュレット製作』
なんてイベントだらけだからね。
一応、映画もやってて、
『翼を失った私たちが再び羽ばたくまで』
という、ハーピィ族の映画が公開されたりもするらしい。
ちなみに映画の紹介に、
『ラストまで見て、もう一度見たくなる』
とあるのはいい。
ただ、
『視聴後の食事は鶏料理に決定!』
とかいうトンデモサイコパスなコメントとか、
『ハーピィ族は三歩歩くだけで映画の内容を忘れるから何度も見に来る』
とかいうもはや誹謗中傷だろってものまで。
なお、この映画の売り上げは歴代5位と上位なわけだけど、身に来た種族の内訳がハーピィ族だけ飛びぬけてて。
二位のエルフ族に五倍以上の差をつけていたりする。
マジで内容忘れて何度も見に来てるわけじゃなかろうな?
ワンチャン最初のコメントもハーピィ族のだろコレ。
「とりあえず寝るかなぁ……」
某、旅の楽しみは無駄な時間の過ごし方だと思ってる侍。
義によって睡眠致す。
まぁ、現代基準、わざわざ船なんて使わなくても飛行機で行けば目的地到着までは圧倒的に早いわけで。
そんなご時世に、わざわざ船を使う理由なんて、船以外で交通手段がない以外だと、マジで好きだからって理由だけなんだよな。
旅行先をガッツリ楽しむのもいいけれど、何より移動してるとゆっくり感じながら目的地を目指すのもまた楽しみの一つ。
――船に乗るために目的地を決める、みたいな、目的と手段が入れ替わっている気もするけれども。
なんて考えながらベッドに横になっていたら、船の揺れと柔らかいベッドに包まれて、あっと言う間に視界が……。
*
――おはようございます。
二時間くらい寝たかな。
さて、と。
船内散策でもしますかな。
その前に……。
「やや固め、寝た感じだと半分くらい沈んで、そこから支えられる感じだった」
枕に手刀を叩き込む。
こちら枕ソムリエ。本部、応答願う。
――繋がらない。無線料金を支払っていないのがバレたか。
「気持ち良く寝られたけれどね」
ちなみに枕は合格点です。
あ、そういえばウェルカムワインが置いてあったんだったな。
飲もう。
「おすすめはフルーツと共に、か」
ワインの下には紹介カードが挟まっていて、ワインの説明がずらり。
異世界の品種なのであろう聞いた事も無いブドウの羅列を読み飛ばし、下の方にある何と合わせるのがおすすめか、という部分にはフルーツの文字。
フルーツ……牡蠣バナナ……ウッ……頭がっ……。
「まぁ、流石にバナナとワインは合わせないでしょ」
なんて言い聞かせつつワインの栓を開けていると、
「あ、そういや特典がどうとか言われてたな」
目に留まったのは部屋の案内。
そこには、洗濯や部屋の掃除のサービスと共に、俺が今利用している部屋の利用者用のサービスが紹介されていて。
「飲み物飲み放題はすっげぇ嬉しい」
まずは今俺が悪戦苦闘しているウェルカムワインの提供。
続いて、船内におけるアルコールなどの一部を除くドリンクの飲み放題。
レストランの優先利用権と、一定額以下のルームサービスの無料提供。
結構いいサービスなんじゃない?
「何があるんだろ」
で、早速ルームサービスで無料になるものを見ていたら、あるじゃん、フルーツ盛り合わせ。
……見た事無いフルーツばかりなのは目を瞑るとして……。
あ、こっちは季節のフルーツもあるのか。
スタッフおススメ! って書いてあるし、これにするか。
フルーツとウェルカムワインをバルコニーに座って海でも眺めながら楽しみましょ。
「ルームサービスで、季節の盛り合わせを一つ」
非常訓練の時に映像を写した水晶。
それが電話の役割もしているみたい。
水晶に手をかざして注文したら、すぐに届けてくれました。
季節のフルーツ――いや、牡蠣バナナァッ!!?




