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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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クルーズツアー

 ここはどこだ~?

 というわけで、やっと。

 ――やっっっっっっと異世界のツアーに参加出来ましたわよ。

 いやまぁ、あれから異世界のエルフの長老の占い通りにミステリーツアーへの参加はずっとやってて。

 ようやく異世界行きのミステリーツアーに当たったのが結構時間経ってからなわけですよ。

 前回の異世界行きツアーに当たってから。

 なーにが半年に一回じゃい。ぜんっぜんそんな頻度でいけねぇじゃねぇか。

 知らんけど、って言っとけば何でも許されると思うなよ。


「……で、ここはどこだ?」


 冒頭でも言ったけど、別に俺はどこにいるか把握してるわけじゃあないんだよな。

 でもまぁ、今回もまたクルーズターミナルからの出発なわけですが、今回はちゃんと船に乗るっぽいね。

 エルフツアーの時はクルーズターミナルから列車に乗るとか言う現代の人に話したら、


「何言ってるのお前?」


 とか言われて正気を疑われかねない展開だったからな。


「ご予約のお客様でしょうか?」

「あ、はい」


 で、エルフ長老の占いはちゃんと当たっていたようで、出迎えてくれたのは人間の男性。

 俺より長身でピシッとした服装……ではあるんだけど。

 なんと言うか、異世界感はぬぐえないよね。

 ガッツリ布で作られた服だし。

 まぁ、異世界人がスーツを着てたらそれはそれで……となるけれども。


「チケットを拝見いたします」

「これで」


 というわけで発券済みのチケットを見せ。


「確認しました。どうぞご乗船ください」


 促され、船の中へ。

 ちなみに、船は木造でも何でもなく、当たり前に――ん? これ鉄か?

 もしかしたら鉄じゃないかもしれない。

 俺がそう感じただけなんだけれど。


「本日は就航二十周年の『インターレースドリーム号』へご乗船いただき、誠にありがとうございます」


 チケットに書かれた部屋へ移動しているとそんな船内放送が。

 ニ十周年なのか。

 丁度いいタイミングで乗船出来たな。


「皆様への日頃の感謝を込めて、ウェルカムドリンクとウェルカムピザをご用意させていただいております」


 はいはい、来ましたウェルカムピザ。

 これが初めての異世界旅行だったら思わずツッコんでただろうけれども。

 生憎俺は二回目なんだ。

 今更ウェルカムピザ程度じゃあ驚きませんぜ。


「出発式を執り行う二番デッキにてお配りしておりますので、皆さま、非常訓練をお済ませの上、お集まりくださいませ」


 おー……異世界のクルーズでも避難訓練あるんだ。

 ――ん? 今非常訓練って言った? まぁ、どっちでもいいか。


「えーっと、部屋番はっと……」


 で、到着しました俺の部屋。

 扉の開け方は……、


「チケットに刻まれた魔力刻印を扉にかざす……と。つまりこれがQRコードだな?」


 チケットには何やら魔法陣のような模様が。

 これを扉に近付ければ扉が開くのか。

 ――ガチャリ。


「お、マジじゃん」


 言われるがままチケットをかざせば、音を立てて鍵が開く音が。

 そのまま部屋へと侵入すると……。


「おー……」


 まず目に飛び込んでくるのはオーシャンビュー。

 クルーズ船によっては窓の無い、船の外側に隣接していない客室とかがあったりするけれど、どうやら俺の客室はそんな事はないようだ。

 しっかりバルコニーも付いてるし。

 ちなみに窓無し海が見えない部屋は、それ込みだから値段は控えめ。

 まぁ、折角のクルーズツアーで景色が見られないのは、値段が安いからと許容出来るかは人によると思うけど……。


「で、非常訓練は……」


 俺が利用した事のあるクルーズの避難訓練は、ビデオを見て、避難場所に行って、そこで待ってるスタッフの方にスタンプを押してもらうみたいなのが一連の流れだったけれども……。

 ここでも映像を見るのか。

 ただ、ビデオじゃなく、魔力水晶とやらに記録された映像みたいだけど……。

 見るためには水晶に魔力を流してくださいって書いてあるんですがそれは……。

 異世界人っていっつもそうですよね! 魔力が無い存在はどうすればいいんですか!!

 ――さて、俺が取れる選択肢は三つ。

 まず一つ、普通にスタッフを呼んで対応して貰う。

 次に異世界で覚えたエルフ召喚の指パッチンを行う。ただし、何も起きなかった、になる可能性は高い。

 三つ、とりあえず『スイ』さんを呼んでみる。

 こちらも、しかし何も起きなかった、になる可能性はある。

 

「ま、普通にスタッフさん呼ぶか」


 というわけで客室から出て、スタッフさんを探そうとして……。


「ん?」

「えぇ……」


 部屋を出た瞬間に見知った顔と鉢合わせ。

 その見知った顔とは……。


「異世界に来たら我の名を呼べと言ったであろう?」


 選択肢の三つ目に出した、スイさんでした。


「あー……」

「なんじゃ煮え切らん」

「まぁ、丁度いいや。スイさん、魔力を貸していただけません?」


 俺がスイさんの名前を呼ばなかった理由はあるんですけどね。

 ま、そんな事はさておき、水晶に魔力を注いでもらいましょ。


「ん? ああ、非常訓練用の映像のか。少し待っとれ」


 そう言って俺の部屋に入ったスイさんは。


「ほれ」


 魔力を充填した水晶を俺に向かって投げてきて。


「は? ちょ!?」


 咄嗟の反射神経でそれをキャッチ。


「落としたらどうするんですか!」

「落とした程度で割れるわけが無かろう。それよりも」


 焦る俺にそう言い放ったスイさんは……。


「貴様の要望に応えたのだから、報酬の一つや二つや十個はあってもよいんじゃないか? ん?」


 現代のお菓子を報酬にねだってくるのであった。

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