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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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だからか

「……ふぅ」


 いやぁ、ピンクの見た目からは想像出来ない程の優しくて繊細な味わい。

 浅葱を散らしていただいたけど、かなーり美味しかった。

 例えると何だろうな、アサリとか、ハマグリとかのお出汁に近かったかな。

 

「デザートも美味い……」


 デザートは柿味のゼリー。

 柿の形をしてて、スプーンを入れてもみっちりとしてる。

 本当の柿って言われても違和感無い。

 味は干し柿をもっと甘くしたような、それでいて後を引かないさっぱりとした感じ。

 ほんのり生姜の香りが効いてて、よりスッキリとさせてくれる。


「お茶がうめぇ……」


 そして全てを食べ終わった後の緑茶が美味い。

 いやぁ、満足でしたわねぇ。


「御厨さま、そろそろ長老の所へと到着します」

「終点なんだっけ」

「ですね。特スイートクラスなので占われる順番を最初か最後かが選べますが?」

「最初で」

「かしこまりました」


 正直、悩んだ。

 最後にすれば、もう少しこの列車に居られるからね。

 ただ、一体何時になるんだ? 占われるの、と考えたら、もう最初に占って貰おうと。

 これで夜までかかりました、じゃあ帰って寝るだけになっちゃう。

 明日からまた仕事だから、もう少し休みの間に遊びたいのよ。

 ――三泊二日の旅行のおかげでゆっくりと眠る事は出来たし。


「では、何を占って貰うかを決めておいた方がよろしいかと」

「ふむ」

「こういうのは、意外と出ないものですから」

「なるほど」


 確かにそうかも?

 いやでも、別に占いでしょ?

 聞くことに困るなんて……。


「長老の占いは的中率が極めて高いです。過去の例で言いますと、恋愛相談をしてばっさり切り捨てられ、絶望に打ちひしがれた方も居られます」

「あー……」


 こう、知らない方が幸せって事もあるのか。

 まぁでも、そうなったらもう諦めるしかないよなぁ。

 諦めて割り切って、一人の人生を謳歌する。

 ――まだ諦めたくは無いな、うん。


「また、宝くじの当たる番号を占って貰った方もいらっしゃいましたが」

「ふむふむ」

「150年以内のどれかで当たる、と数字を渡され遠い目をしておられました」

「ピンポイントじゃないんだ」

「そこまで正確ではありませんので」


 なるほど、宝くじか。

 一瞬頭いいじゃんって思ったけど、長老の占いだとブレ幅が凄い。

 しかも、自分が生きてる内に当たらないかもしれないし。

 何より、どの宝くじなのか明言されてないのもヤバい。

 日本のなのか、それとも海外のなのか、下手すりゃ仮に一等を当てたとして赤字になりそう。


「逆に成功した例は?」

「プロスポーツチームを買おうか迷っているという方には即決でGOを出したようです」


 思い当たる節があるな。

 あの人はエルフの占いを信じてプロチームを購入したのか。


「他にも、配信者になるべきか? やブランドを立ち上げたい、と言った悩みも解決したと聞いております」

「途中から思ったけど、占いってよりは悩みだよね、うん」


 エルフの長老がお悩み相談室みたいな扱いになってる。

 いいのかそれで。


「というわけで、それらを参考に占って欲しい事を決めておいた方が無難です」

「まぁ、いくつかあるんで」


 ビオラさんからのそれらを聞く前に、これだけは占って欲しいなぁと思ったことが一つある。

 それは絶対に聞くよ、うん。


「では、もうじきに到着致しますので、お荷物もおまとめになられた方がよろしいかと」

「あ、もうそこで降りるんですね」

「列車は終点駅に留まりますが、お客様方は転移魔法でふもとの駅に送り届けますので」

「なるほど」


 と言っても荷物は広げてないし、大きい荷物は直接家に送って貰ってる。

 そこまで荷物は無いんだよなぁ。


「では、到着しましたら声をかけさせていただきます」

「お願いします」

「また、終点到着前ですのでフェアウェルドリンクのサービスがございますがいかがいたしましょう?」

「……また飲み手で味が変わるやつじゃないですよね?」

「違います」

「じゃあください」


 忘れてないぞ炭酸味噌汁。

 お前はマジで今後二度と飲まねぇからな。


「こちらです」

「……墨汁?」

「こちら、当ツアーへの満足度で味が変化するドリンクでございまして」

「飲み手で味が変わらないって言いませんでした?」

「飲み手だけでは味は変わりません。満足度で味が変化します」

「屁理屈では?」

「美味しいですよ?」


 ぐぬぬ。

 美味しいは全てを解決するからな……。

 そう言われたなら飲まねば不作法というもの。


「満足度が高いとどうなるんです?」

「甘くなります」

「低いと?」

「私が落ち込みます」

「ビオラさんの感情の変化はぶっちゃけどうでもいいんですけれど……」


 味がどう変わるかをですね……?


「申し訳ありません。今まで満足されなかったお客様がいらっしゃらないもので」

「納得。データ無しって事ね」


 じゃあそう言いません? 最初から。

 はぁ……じゃあこの墨汁みたいなフェアウェルドリンクをいただきますか……。


「――あっま!」


 えーっと、シロップ?

 あの、果物がシロップ漬けになってる缶詰あるじゃん?

 あれ。

 あれの蜜柑のやつ。

 もろ蜜柑シロップの味がする。


「大変ご満足して頂けているようで」

「……これ、デフォがとんでもなく甘いとかじゃないですよね?」

「何のことでしょうか?」

「絶対そうじゃん……」


 最初からメタクソに甘かったらそりゃあこんなシロップみたいな甘さになるよ……。

 うぅ……最後の最後に口の中が甘ったるくなった……。

 ――うん? さっきより甘さが引いたな? これならギリ何とか飲めるようになったわ。

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