朝食ヲ堪能セリ
「魚ですね」
「でもサカナッポイモノって名前ですよ!?」
ビオラさんに確認を取ると、魚というお墨付きを貰った。
ただまぁ、なんというか……。
「昔、魚を食べることがまだ一般的ではなかった時代がありまして」
「はぁ」
「魚を食べていると、変人認定されたんです」
「なるほど?」
「そこで、「魚のような見た目だが魚ではない」と、その魚を食べているところを目撃されたエルフが言い訳した事が、その名前の由来でありまして」
「じゃあ、マジで普通の魚なのか」
こう、動物の数え方とかで、当時禁止されていたけど食べるために嘘をついたから、みたいな由来があるものと同じなのかな。
この場合は数え方どころか名前で使われてるわけですけど。
「はい。ご安心ください」
「そういう事なら」
というわけで納得したので食べていきましょ。
まずはレッドデーモンシュリンプから。
「シュリンプって言ってるから、多分海老だよな?」
名前からどんな海老かは分かりませんけど?
まぁ、そう違いはないでしょ。
ブラックタイガーとかなら現代にも居るし。
「見た目海老ってよりは普通に白身魚っぽいんだけどな」
なお、見た目は俺の知る海老ではない模様。
とりあえず醤油を付けて、と。
「ん~……うま」
しっかり海老。
何だろう、こう……海老特有のプリッとした食感と濃厚なうま味と甘味。
醤油の尖った塩味を簡単に跳ね飛ばすこのポテンシャルは。
ボタン海老……いや、もっと強烈だな。
――アレだ、誕生日に美味しい海老が食べたいと親に言った時に連れて行ってもらったお寿司屋さんで出てきたやつ。
何だっけな……ぶどう海老? あれっぽい。
記憶のぶどう海老はこんなに大きくは無かったイメージだけれども。
「次はキング鯛タン行くか」
もうね、これに関しては名前付けた人は遊んだだろ。
タイタンのタイを鯛に置き換えるなんてさ。
で、名前から察するにバカでかい鯛でしょ?
これに関しては流石に分かるよ。
「……皮うっま」
なんかもう、魚の身とかそんなもんどうでもよくなるレベルで皮が美味い。
鮭の皮が好きな人はこれヤバいと思う。
小躍りするんじゃないか?
水戸黄門さんが食べたら印籠ごと差し出しそうだ。
「いや、マジで美味いんだが?」
皮はパリッと焼かれていて、まずは香ばしさが来る。
その後で皮目のジュワッとした脂と、圧倒的なうま味。
脂は繊細で甘く、うま味を引き立てる。
こーれは日本酒とかあったら最高だったな。
いや、白米も十分に進むけど。
「で、最後と」
いよいよ残るはサカナッポイモノ。
お醤油に付けて食べてみると……。
「――馬刺しでは?」
魚じゃない。
うん、全然魚じゃない。
もろ馬刺しだね。
もっちりとした柔らかい身質で、脂が全然感じない。
噛むほどに旨味と滋味が溢れ、米は進む。
うん。
ただ、魚の刺身かと言われると圧倒的にノー。
美味しいんだけどね。
「この中だったらキング鯛タンが優勝かな」
どれも美味しかったんだけどね。
衝撃度で言ったらキング鯛タンかな。
皮だけど。
「次は焼き物」
刺身の後は鳥の照り焼き。
アブラカワセミの照り焼きか。
またお会いしましたね、アブラカワセミ。
一口大にカットされ、綺麗な照り焼きにされたアブラカワセミは、流石に獣人用の焼き方ではないはず。
つまり、最初から俺の歯が立つって事。
「ん、美味い」
しっとり柔らかな身を噛めば、ぷつぷつと繊維が音を立てて切れていき。
繊維が切れる瞬間に、旨味のスープが溢れ出す。
照り焼きの味付けも肉に合うな。
あと、ネギとゴマのトッピングがいい味出してる。
かなり美味い。
「続きまして煮付け~」
煮付けは大根さんがこんにちは。
大根、大根かぁ……。
いやまぁ、嫌いじゃないよ?
ただなぁ、やっぱり煮付けと言ったら魚ってイメージがあるわけで。
まぁ、食べますけどね?
「お? いや、美味いぞ?」
これは嬉しい誤算。
この大根の煮付け、まず大根の臭さというか、匂いがしない。
で、苦いというか、ちょっと気になる味もない。
そして圧倒的に、肉の旨味を吸ってる。
噛んだ瞬間にとろけるのではないかと思うほどに煮込まれていて、その煮込んでいる汁に肉の旨味がたっぷり溶けてるんだと思う。
下手すりゃハンバーグレベルの肉の存在感があるぞこの大根。
当然ご飯が進む進む。
大根でご飯が進むの、わりと初めてかもしれん。
あ、でも切り干し大根ならご飯は進むな。
おでんの大根? 知らない子ですね。
「お漬物は……お、いいねぇ、たくあん」
香の物には見慣れた黄色い漬物が用意され、齧っても俺がよく知るたくあんでした。
この味がすっごく安心するなぁ。
――で、
「出汁茶漬けも出来るのか」
用意されてる中にはお出汁もありますと。
刻み海苔、ゴマ、ワサビと用意もされてるから、出汁茶漬けをするまでが想定なんだろうな。
まぁ、やるけど。
「おー、いい香り」
茶碗に注いだ瞬間に立ち昇る湯気から、いい香りが漂ってくる。
香り的には魚介出汁。
出汁の色はピンクと。
――ピンク!?
「何から取ったら出汁がピンクになるわけ?」
分からん。
ただ、匂いを嗅いだ俺の本能が言っている。
この出汁は美味い、と。
えぇい、ままよ!!




