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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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最後の朝食

 ゆっくりと昇る朝日に照らされながら、傾けるは琥珀色の酒。

 トロリとした甘い液体は、口の中で芳醇な香りをまき散らしながら存在感を放っていく。

 ――うん、やめよう。

 なんかそれっぽい雰囲気を出してエモい空気にしようとしたけど合わんわ。

 俺に。

 特に何も考えず、朝日を見ながら酒飲んで、ゆっくり息を吐いて……。

 はぁ。この時間がたまらなく好き。

 欲を言えば朝風呂とか、朝日を見ながらのサウナとかやりたかったな。


「陽が昇り切ったら時間の進みは戻るんだっけ」


 三泊二日のツアーももう直に終わる。

 あとは最後の町に到着して、エルフの長老とやらの占いを受けたら終わりだっけ。

 なんと言うか……たっぷりと寝たなぁって。

 夜が引き延ばされるって、最初聞いた時はそんなにいいものか? と思ったけど、実際過ごしてみると素晴らしかった。

 何がいいって、どれだけ寝ても実際の時間の進み的にそこまで時間が進んでないところ。

 寝ても起きても同じ時間が流れるなら、起きてないと勿体ない、が俺の考えだったわけだけど、このツアーはそんな俺にぶっ刺さったツアーだったね。

 

「ご飯も美味しかったし……朝食が残ってるけど」


 旅も終わりが近づくと、自然にその旅の事を振り返る。

 まずはまぁ……ご飯かなぁ。

 食べ飲み放題が付いてて助かったよね。

 自然にビュッフェで何食べようか飲もうかって考えてたし。

 他の記憶は――やっぱり魔法発射体験かな。

 あんなの、多分二度と経験出来ないだろうし、もっとやっとけば良かったかなぁ。

 風呂やサウナも良かったし、夕日を見ながら入るってのは趣があった。

 

「御厨さま、朝食の準備が出来ましたが」

「あ、じゃあお願いします」


 丁度ビスケットとお酒を飲み終わり、大きく伸びをしたタイミングでビオラさんからそう声をかけられる。

 ちなみに客室で食べるか、ラウンジで食べるかが選べて、俺は客室で食べることを選択。

 そうして運ばれてきたのは……。


「懐石料理?」

「和食を希望との事でしたので」


 様々な小鉢とご飯、椀物に漬物。

 朝食の種類も、和食、洋食、中華、エルフから選べて、俺は和食を注文。

 やっぱり日本人はね、朝は和食だよね。

 ――仕事の日は朝食はトーストとコーヒーですけれどもね。


「食後のデザートは食べ終わりの頃にお持ちします」

「あ、お願いします」

「では、失礼します」


 という事でビオラさんが退散し、ゆっくりと食事を楽しませてもらいましょ。

 まずは……。


「茶碗蒸し……かな?」


 回転寿司屋でよく見るような茶碗蒸しの容器。

 その蓋を開けてみたら……。


「めっちゃいい匂い」


 立ち昇る湯気と共に、鼻に抜けるいい香り。

 ――この香りは……。


「栗? なんかそんな匂いがするけど……」


 という事で早速……いただきます!


「おー……あー、美味い」


 匂いは栗。じゃあ味は? と言うと、なんとウニ。

 口に含んだ瞬間に広がる磯の香りと、濃厚な甘さ。

 卵のコクと相まって、一口だけなのに存在感がすげぇ。

 あと、餡がかけられてるんだけど、それがほんのり醤油の味と香りがして最高。

 なんと言うか、この一品だけでかなり本気な和食なんだなって理解出来る。


「汁物行くか」


 続いてはお椀に入っている汁物へ。

 さてさて、何が入っていますのやら。


「――水?」


 えー、無色透明の液体でございます。

 温めた塩水です。とか言われても納得しちゃうぞ、この見た目。

 まぁ、そんな訳がないんですけれども。


「……え、うっま」


 静かに飲んでみると、口の中に一気に旨味が広がりました。

 なんと言うか、海鮮系の出汁ってよりかは野菜のスープみたいな。

 野菜特有の甘さがしっかり感じられて、それでいて野菜臭さはないっていう。

 旨味もしっかりで、なんだろうな、この旨味。

 かなり繊細な感じなんだけど、舌の上にしっかりと旨味が乗るんだ。

 えー……なにこれ知りたい。

 何が使われてるんだろう。


「あ、お品書きあるじゃん」


 持って来てもらった料理達が乗った配膳盆。

 その脇に、料理の説明が乗った紙がちゃんと置いてありました。


「何々? ……マンドラゴラの土瓶蒸し?」


 えー、なんと、俺が美味しいと思った汁物はマンドラゴラの土瓶蒸しだったそうです。

 マンドラゴラって土瓶蒸しにするんだ。

 じゃあ茶碗蒸しの方は……?


「鱗のペースト? なんじゃそりゃ」


 なんか、魚の鱗をペースト状にしたものらしい。

 それを卵と混ぜて蒸したんだって。

 ウニみたいな味がする魚の鱗があるって事?

 ――まさか鱗自体がウニになってる魚が居るわけでもないだろうし……。

 謎は深まるばかり。


「刺身は……まぁ聞いた事無い魚ばっかりだわな」


 続いて箸を伸ばすのは刺身。

 白身、皮付き白身、赤身と三種の刺身の盛り合わせっぽい。


「レッドデーモンシュリンプ、キング鯛タン、サカナッポイモノの刺身――サカナッポイモノの刺身!!?」


 なんかすごく強そうな名前の後に、すっごい不穏な単語入ってない?

 サカナッポイモノじゃなく、魚の刺身を出して欲しいんだけど……。

 え、ちょっとマジで不安なんだけど。

 一旦ビオラさん呼ぼう。

 このサカナッポイモノ、ちゃんと魚なのかな……。

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