龍眼
という事でビオラさんにまたもやオソラクカットを渡し。
「気前がいいのぅ」
なんて龍族のお姉さんから言われたりもして。
チョコを齧ってカクテルをチビリ。
というか、このカクテルマジでヤバいな。
口に含んだ瞬間のアルコール感がマジでない。
飲み込んだ後に来るもんだから、これ、下手すりゃアルコール入りと思わずにがぶ飲みするぞ。
――現代にあったら、レディーキラーカクテルとして色んな意味で有名になってだろうなぁ。
ツマミがチョコってのもポイント高い。
「そういえばなんですけど」
「ん?」
「龍族の方がこの世界の歴史書作成に携わっているんですよね?」
「ああ、まぁ、そうだな」
俺の疑問に、やや歯切れが悪いお姉さん。
「龍族と言っても一人では無いからな。龍族が歴史書作成に噛んでいるのは確定だが、誰が噛んでいるかは分からん」
「あ、はい。それはまぁ」
まぁ、それはそう。
日本の歴史の教科書の作成に、日本人は確実に関わっているだろうけど、俺個人は関わってないし。
当然だけど。
「で? その質問の意図は?」
「いえ、なんか歴史書読んでると人間がいつ頃住み始めたとか、エルフがこの頃に開拓し始めたとか、もう国の起源レベルで昔の事が書かれているのが不思議で」
「ああ、それか」
俺の疑問は、歴史書の中身。
明らかにn千年前の出来事を、あたかもつい最近の出来事レベルで書かれていたこと。
いやまぁ、長命種でその頃から生きてたってのはあり得る話なのかもだけど、それにしてもはっきりと覚え過ぎていやしない? と。
「龍族の誰が監修したかは知らんが、恐らくそいつは過去視に長けた個体だろう」
「過去視……?」
なんだか聞きなれない単語が出てきたぞ?
ただ、まぁ……意味は分かるな。
要は昔の様子が見れるって事か。
「うむ。個体差があるが、龍族の眼には特殊な力が宿っている」
「相手に幻術をかけたりとか?」
「?」
「続けてください」
「うむ、主に未来視や魔力視だが、中にはそれらに属さない眼を持つ者も居る」
「それが監修した龍族の方、と」
「そうだ」
過去視……ねぇ。
ぶっちゃけ、過去の事が見れて何になるんだよ……と思った時期が僕にも五秒ありました。
これ、実はめちゃくちゃ凄い能力なのでは?
まず、監視カメラが要らない。
何か犯罪が起きた時、過去視をして当時の現場を見ればいい。
そうしたら、何もかも全てが見えることになる。
――となると、歴史の中で曖昧な部分とかも明かされちゃうな。
こう、俺としては上杉謙信女の子説を是非とも立証して欲しくてですね……。
「あ、ちなみにお姉さんはどんな眼を……?」
「ふむ?」
「御厨さま」
そんな説明をされたら、当然気になる目の前の龍族お姉さんの特殊な眼。
という事で尋ねてみたら、何やら変な反応をされ。
ビオラさんに止められて……。
「セクハラです」
「そうなの!?」
とんでもない事を言われてしまった。
セクハラなのか。
「よい。下心は無いように思えるし、大方この世界の常識を知らんのだろう」
「すいません」
「構わん構わん。抹茶のチョコをくれた礼だ。許す」
はい。
というわけで皆さん、異世界に行くときは自分の知らない常識から外れた時の為に抹茶味のチョコを持って行きましょう。
何とかなるかもしれません。
「お主、席を外せ」
「失礼します」
と、いきなり龍族のお姉さんが ビオラさんを下がらせ、姿が消えた事を確認すると……。
「我の眼はな」
自分の眼についての説明を始める。
あれ? これ、俺が聞いていいやつ?
さっき尋ねるだけでセクハラだったのに、能力聞いちゃったら痴漢とか言われない?
大丈夫?
「『現実視』という能力を持っている」
……ん?
なんて?
現実を見る力って事?
いや、確かに現実見ろよとかは結構聞くかもしれないけど……。
それを実際に見れたからと言ってなんだ?
というか、それなら俺も現実視の眼を持っていることになるのでは?
「この現実視はな? ありとあらゆる嘘を見破る。目に映る全ての事象の『現実』を知る事が出来る能力だ」
う~んと? つまりどういうことだってばよ。
ただまぁ、何となく分かるのは、俺は持ってないって事だな、その眼は。
「例えば先ほどお主がくれた抹茶チョコレート。この世界のものではない事はすぐに誰でもわかる事だが、その値段が子供の小遣いでも余裕で買える値段であると我は理解している」
「……それは、あのチョコレートの現実が見えたから?」
「そう。世界が違えど、次元が違えど、我の眼には必ず『現実』が映るのだ」
……これ、名前が現実視というから悪いのでは?
真実視とかだともっとそれっぽく理解出来るというのに。
なぜに現実視なんだろう。
「ちなみに金や宝石の価格の変動もリアルで見れるぞ?」
「あ、だから現実視……」
一発で解決したな、現実視の理由。
でもなぁ、それらの変動がリアルで見れたからって何かあるわけでもないしなぁ……。
「植物の成長や収穫時期、病気の有無に進行状況。あらゆる情報を集められる素晴らしい能力だよ」
「あ、そう言われるとめちゃめちゃ凄い……」
そうそう、そういうリアルな使い道を羅列された方が凄さが分かる。
「ところで」
「?」
「まだ先程のチョコレートは持っているな? くれんか?」
勝手に俺の現実を見るのはやめて貰っていいですかねぇ……。




