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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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使ったし……

 なんだびっくりした。

 ソーダライトって言うカクテルか。

 透き通ったピンクの炭酸入りカクテルで、それがジョッキで運ばれてくる。

 ――ジョッキで?

 そんな量で提供するカクテルってあるの?


「こいつはチョコレートで飲むに限る」

「あ、そうなんです?」


 で、そんなジョッキカクテルと一緒に持って来られたブロックチョコレート……あの、アルファベットが書かれてるチョコと同じ感じのやつ。

 それを摘まんで口に放り投げ、即座にジョッキを傾ける龍族お姉さん。


「ゴッゴッゴッ! プハーッ!!」


 飲み方が完全に風呂上がりの親父のそれである。

 まぁ、郷に入っては郷に従えって言うし、真似しますかね。

 チョコを口の中に入れ――む、結構苦いぞ、このチョコ。

 ジョッキカクテルを流し込む。

 流石にいきなり喉を鳴らすほどに飲もうとは思わないので、軽く口に含むだけ。


「……お?」


 意外だけどほとんどアルコールを感じなかった。

 もしかしてノンアルコールカクテルか? ……いや、無いな。

 どう考えてもそんなわけはない。

 とりあえずカクテルの味は、グレープフルーツとココナッツを足して二で割ったような感じ。

 サッパリとしつつもどこか南国チックな風味があり、更に炭酸の刺激がよりスッキリ感を加速してる。

 チョコには合うね。

 苦めのチョコがサッパリしたフルーツの香りのカクテルとバッチリハマる。

 あと、口の中でチョコとカクテルが混ざると不思議と甘く感じるんだよな。

 口に入れた瞬間のチョコは甘い、カクテルはサッパリ系でスッキリ。

 なのに、飲み込む頃にはチョコアイスのような甘さになって喉の奥に流れ込んでいく。

 すっごい不思議な組み合わせだな、これ。


「もっと飲まぬか」

「流石に初見のお酒は慎重になりますよ」


 龍族お姉さんからそう煽られるが、ぶっちゃけ何の説明も無しに口に入れただけでも褒めて欲しいわ。

 みんなは海外で意味不明なものを勧められても口にしちゃダメだからね?


「このカクテルは何と一緒に飲むかで味が変わるカクテルです」

「ほう?」

「チョコレートの場合は、甘さが追加されますね」


 呼ばれて飛び出てビオラさん。

 あれ? 呼んだっけ?

 まぁいいや。


「思ったんですけど、カクテルやワインで味が変わるもの多くないです?」


 星を落とすワインも、今のソーダライトってカクテルも。

 何なら、俺がウェルカムドリンクとして貰ったやつも、飲み手で味が変わるやつだったような……。


「エルフは変化を好む。移ろいゆく味の変化を楽しむような加工を好むものだ」

「種族的な特性です?」

「うむ。何かにつけて味や性質を変化させようとする」

「ほへー」


 どうやら、色々変化する飲み物が多いのは気のせいじゃなかったらしい。

 種族的な特徴なのね、なるほど。


「正反対なのはドワーフだな。加工後に変化することを許さず、どんな条件でも変わらない物を作ろうとする」

「そっから対立してるんですね」


 ドワーフとエルフが犬猿の仲なのは午前中で分かったけどさぁ。

 その根幹はそこなのか。

 なんと言うか、絶望的な相性なんだな。


「……ビオラさん」

「はい?」

「このソーダライト、アルコール度数ってどれくらいです?」

「微発泡のワイン程度ですが?」

「ジョッキじゃなくてワイングラスで貰えます?」


 寄越すな。そんな度数の物をジョッキで。

 いやまぁ、微発泡のワインは普通のワインと比べて多少はアルコール度数落ちるけども。

 我日本人ぞ? そこまでアルコール分解能力が高くない人種ぞ?

 最悪死ぬぞ? ジョッキでワインなんざ飲んだら。


「飲めると言うたではないか」

「基準がどこか定まってませんでしたよね?」

「む、確かに」


 よし。

 とりあえず、ワイングラス一杯くらいにしとこう。

 良かった、いきなり喉鳴らして飲まなくて。

 下手すりゃマジでぶっ倒れてたな。


「あ、そうだ」

「?」

「お昼に獣人族の方々にお渡ししたら喜ばれたんですけど、おひとつどうです?」


 チョコと合わせて飲むのが好きなら抹茶チョコなんていかがです?

 というわけで獣人夫婦に作って貰ったチョコレート入れからオソラクカットの個装を一つ取り出しまして。

 竜人族お姉さんに手渡し。

 ――使う機会無いとか思ったけど割とすぐに使ったな、チョコレート入れ。


「ほほう。抹茶のチョコとな?」

「お口に合えばいいんですけど」

「かかか。頂こう。――うむ、美味い。香りがいいな。抜けておらん」


 すぐに包装を破り、一口でオソラクカットを口に放り込み。

 咀嚼し、ある程度味わってジョッキカクテルを流し込む。


「ほほほぉ……美味い。美味いなぁ」


 瞬間、目を細め、声の高さが一段階上がる。

 これはかなり喜ばれているのでは?


「今のチョコはまだあるか?」

「まぁ、もう少しでしたら」

「譲ってくれんか?」

「まぁ、構いませんが」

「ただとは言わん。そうだな……ほれ」


 そう言って差し出されたのは……緑色の鱗。

 あの、お姉さん? それ誰の、どこの鱗……?


「我の首の鱗は金運アップのご利益があるともっぱら評判じゃ。財布にでも入れとくとよい」

「はぁ……」


 蛇の抜け殻かな? いや、これ言ったら絶対に怒られるやつ。

 ――で、ビオラさんは何をしていらっしゃるので?


「私には鱗が無いんですよね……」


 …………。

 欲しいんです? 抹茶味のオソラクカット……。

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