威圧感〇
起きても夜なの普通に頭バグるな。
これが時差ボケってやつ?
……いや、普通時差ボケって言うのは時間の進み具合の差に対して使う事ではないんよ。
そもそも時間の進み具合に差が生じる事なんて無いんだけれども。
「んー……」
ボーっとしながらも上体を起こし、伸びをして頭を覚醒。
また頭が悪い飲み物でも飲む? いや、でもなぁ……。
と、とりあえず何も意識はせずにビュッフェでも眺めますか。
「あー……またワイン飲むか?」
星空を落とすワイン、面白かったし美味しかったんだよな。
――ただなぁ、酒を入れるとまた眠っちゃいそうだ。
いや、別にいいんだけれども。
折角の旅行とはいえ、移動中なわけで。
外の景色と言っても夜だし、星空以外は見えんし。
……そうだな、またラウンジにでも行ってみるかな。
「そういや、ラウンジにいる間は普通の時間の進みになるんだよな?」
確か説明だと、客室にいる間だけ時間の進みが引き延ばされるんだったはず。
――こんな時は、教えて! ビオラさ~ん!
「お呼びでしょうか」
という事で指パッチンで召喚。
「ラウンジに行こうと思うんですけど、ラウンジでは時間の進みは通常ですよね?」
「はい。魔法の範囲は特スイートクラスの客室内のみとなっておりますので」
よし、確認完了。
深夜のラウンジに誰かいるかは知らないけど、まぁ居たらいいなくらいの感覚で。
*
「ん? 人の子か?」
居ました、他のお客さん。
ただあの、何というか……。
すっごい目のやり場に困るお姉さんがですね……。
とりあえずなんですけど、デッッッカ。
いや、身長が。
座ってる高さで俺の身長くらいあるんですけど。
で、肌は緑。所々に鱗っぽいものが見えて、腰から羽が生えてらっしゃるので恐らく龍族。
目のやり場に困る理由はまぁ、身長もだけど色々と大きいよねと。
あと、こう……胸を覆ってるのが服じゃなくて鱗なのが……。
「この時間に起きているとは珍しい。人間は寝る時間だぞ?」
「さっきまで寝てたんですよ」
「ほぅ?」
別にいつ寝たっていいでしょ、人間は。
というか、夜働く人だっているんですよ?
運送業とか、工場勤務の方々とか、お医者さんとか。
コンビニ、24時間開いてるスーパー……挙げるときりがないな。
「大方特スイートクラスでも取ったはいいものの、普段とは違う時間の進み具合に困惑し、時間潰しに客室を出たとかであろう?」
「エスパー?」
白青黒。
いやまぁ、冗談ですけれども。
「何度も同じようになっておる者を見てきたのよ。まぁ、人間は初めてではあるがな」
「という事は、何度もこの列車を利用しているんですね」
「うむ。この列車の飯はエルフの提供するツアーの中でも特にクオリティが高い」
「へー」
「我の一押しはカレーだな。この素晴らしい配合のスパイスが織りなす深い味わいは、そんじょそこらには存在せん」
……カレー、ねぇ。
食べたんだけどな、うん。
美味しかったよ? 美味しかった。
間違いなく。
でもこう、感動を覚えるような美味しさではなかった。
まぁ、食べ物の感じ方なんて人それぞれだからね。
この列車のカレーが、この龍族のお姉さんには刺さったって事なんでしょう。
「カレー、美味しいですよね」
「うむ。初めてここのカレーを食べた時は脳天に雷魔法をぶち込まれたような衝撃でな。気が付けば七日に一度はここのカレーを食すようになってしまったわ」
「……頻度高すぎでは?」
一週間に一度はカレーって、海軍じゃないんだから。
「一時は三日に一度は食べていたのだがな」
「……頻度高すぎでは?」
まさかに連続で同じツッコミを入れることになろうとは。
この海のリ〇クの目を持ってしても……。
「む? むむむむ?」
と、何やらカレーについて話していた龍族のお姉さんの目が、俺をまじまじと見つめて来て。
「ああ、何か違和感がと思ったら、貴様はこの世界の人間ではないのか」
「……分かるんです?」
俺がこの異世界の住人でないことに気が付いたらしい。
「うむ。まぁ、そうよな。そもそも龍族相手にまともに喋ろうとする人間がこの世界に居るはずがない」
「そうなんです?」
「龍族というのはあれよ。神と交信が出来る種族よ」
ビオラさんが言ってたね。
「そんな存在に、貴様は自分から近付こうと思うか?」
「あー……言われてみたら」
もし龍族にとってのタブーを無意識に自分がしてしまったとして、それを神様に報告されるかもとか考えたら確かに。
君子危うきに近寄らず、って言うし、触らぬ神に祟りなしって事か。
「まぁ、良い。一人で酒を飲むのにも飽いたところだ。隣に座れ」
「じゃあ、失礼します」
……ハッ!? あまりにも自然に呼ばれたもんだからついつい座ってしまった。
決してデッケェお姉さんの隣に座りたかったとか、何飲んでるのか気になったとか、そういうのではないんだからね!
「貴様、酒は?」
「あまり強くありませんよ?」
「全く飲めないわけではないな?」
「まぁ」
多少は飲めるよ、うん。
……龍族の基準がどれくらいかは分からないけど。
これでドワーフ並みに飲むとかだったらどうしようかな。
「グラスを追加で一つ。ソーダライトを追加で」
「かしこまりました」
指パッチンで乗務員を呼び、俺と飲むであろうお酒を注文する龍族お姉さん。
ソーダライトって宝石じゃなかったっけ?
え? 飲むの? 宝石を?




