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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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異世界史C

「ちなみに人間の市場には、神に捧げられたと謳われているワインが流通してますが」

「おお、結構凄いワインなんですか?」

「真っ赤な偽物、詐欺ですね」

「おい」

「そもそも神様はワインのお残しなどしません。なので、神に捧げられたのに回収されて流通しているワインというのは、嘘か、神様が残すくらいにクソまずだったかのどちらかになるわけです」

「ひでぇ」


 何が酷いって、とりあえずお供えさえすれば不味いワインでも飲み干してくれると神様が思われてるのがひでぇ。

 一応神様なんでしょ? 扱いが酷いと思うの。


「なので、それを利用してわざと質の悪いワインをお供えして回収し、その後に売るという行為が一時は流行ったんですが……」

「皆に周知されて売れなくなった、と」

「いえ、普通に天罰が下ってその行為をしていた者の家が燃えました」

「物理的にお仕置きされたんですね」


 まぁ、そりゃあ神様も怒るよな。

 自分の威を借るために、わざわざ不味いワインをお供えされたら。

 しかもあれじゃない? 普段はそんな事無くて、美味しいワインがお供えされているだろうから、ウキウキでワイン開けて飲んだらクソまずだった、ていう。

 一番腹が立ちそうな事をされてるわけでしょ?

 

「ワインを捧げている祭壇には人間が主催するツアーの観光スポットになっていたりするので、興味があればぜひ」

「観光スポット化してるのか……」

「ちなみに周囲にはワインやおつまみを売る屋台が出店していますね。それらは捧げられているワインとは無関係ですが」

「何も知識が無いと騙されるやつやめません?」

「知識がない方が悪いので」


 いやまぁ、そうなんだけれども。

 教えてくれて助かる……かなぁ?

 人間のツアーに参加しないとこの情報が生かせないのがな。

 俺がこの異世界に来るにはミステリーツアー経由が必須なわけで。

 また来られるって保証が一切無いのが……。


「……あれ? そういえば、ハーピー種やマーメイドが出て来てないんですけど……」

「それらも魔族からの独立を果たした種ですね。龍族よりも遅かったので」

「あ、そうなんだ」

「獣人や人間へのロビー活動が功を奏した、とお聞きしています」


 ロビー活動(意味深)。

 まぁ、認められたんならいいんじゃないかな?


「おかげで水中や上空の魔物の素材を容易に入手出来るようになり、文化の発展に大きく貢献されたんですよ」

「あー……確かに」


 水中や空中を自由に動ける存在ってのは、あらゆる分野の発展に寄与しそうだよな。

 現代の地球だと、まだまだ海の中は未解明な事の方が多いって聞くし。

 人間が自在に水中に潜れないってので、どうしても研究は遅いんだとか。

 あとは水圧とかの環境にも適応出来ないしね。


「ちなみにですが」

「はい」

「龍族はエルフを越える長命種ですので、歴史を語る上で絶対に外せない存在です」

「マジか」

「はい。また、龍族は神様と交信が行える唯一の種族であり、あらゆる祭事や未来会議において、神へ確認を行うという重要なポジションに座っています」


 へぇ。

 ……交信できるんだ、神様と。

 現代の宗教家とかが異世界に来たら色々と大変そうだなぁ。

 布教活動とかほぼほぼ無意味だろうし。


「スルーしそうになったけど未来会議というのは?」

「今後の国の在り方を決める会議ですね。各種族から選出された代表一名が集まり、現状の把握や他種族への協力要請、開発の計画やイベントの開催などについて話し合います」


 国会みたいなもんか。


「ちなみに聞きたいんですけど」

「何でしょう?」

「この討伐されたバハムート、かなりの大きさですよね?」

「そうですね」

「倒した後の処理ってどうしたんです?」

「私の知る限り、食べたようですよ?」

「……食べた?」


 東京ドーム一万二千個分の大きさを?

 食べた? マジで?


「戦闘の余波で町の建物などは大規模倒壊をしたりしていましたので。バハムート難民と呼ばれる存在が一時問題になったわけです」

「ああ、住む場所を追われて……」

「です。で、その時にバハムートの討伐に一役買った方々が、バハムートの肉を当面の食糧不足に当てると言い出しまして」

「はぁ」

「バハムートは高級食材でしたから、反対を唱える貴族も居たんですが……」


 嫌な予感がする。 いやいや、流石にね?


「そういった貴族からはお金を取り、賛成していた方々には無償で提供、を繰り返していたら何も言わなくなったと記録があります」

「そりゃあ……ね」


 ただで高級食材が食べられるならそりゃあ黙るか。

 沈黙は金ってそういう事ではないと思うけども。


「まぁ、無償で提供を受けた貴族は後日、資金から人員までほとんどのリソースを、『あの時バハムート肉を食べたよね?』という一言で限界まで使われることになったわけですが」


 ただより高い物はないってね。


「それらの犠牲もあって、驚くべき速さで復興していきました」

「もう犠牲って言っちゃってますね」

「あとはまぁ、魔道具革命と呼ばれる技術革新があったり、新たな娯楽の大系としてこうしたトラベル系が開発されたりとあって、今に繋がるわけです」

「なるほど」


 結局ほとんどをビオラさんに聞いた気もするけど、この世界の歴史は何となく分かったな。

 明確にバハムートを討伐する前と後で歴史が分かれてるんだ。

 前期と後期って感じで。


「喉は乾いていませんか? コーヒーはいかがでしょう?」

「あ、お願いします」


 そうして異世界の歴史を知った気になった俺は、ゆっくりベッドで寛ぎながら。

 星空を眺め、コーヒーをすするチルタイムに浸るのだった。

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