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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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207/208

急に何

「ワインは何を飲んでる?」

「確か、『雲の間を泳ぐもの』?」

「結構高いのいったね。まぁいいや。俺も飲んでいい? 一人で飲み切る?」

「どうぞどうぞ」


 ホウスさんの金で飲んどきながら、その酒をホウスさんには飲ませないとか、そんな事俺はしませんよ。

 グラスを貰い、ワインを注がれたホウスさんは、俺と同様に月にかざして色味を確認。


「あぁ、結構若いんだね。だから提供したのか」

「というと?」

「ワインの熟成期間だよ。熟成が短いから君に提供したんだろうなって」

「熟成が短いと何かあるんです?」

「値段が安い」

「なるほど」

「まぁでも、普通にサラリーマンとかがボーナス入った時くらいじゃないと飲めないくらいの値段はするけど」


 ……ひぃ。

 そんなワインカパカパ飲んでたのか?

 でも、お店の人が選んだワインだし……俺は悪くねぇ!!


「美味しいからいいし、何ならツケに出来るからいいけど」

「出来るんだ……」

「滅多にしないけどね。後が怖いし」

「取り立てがって事ですか?」

「いや、ツケにしてあげたんだからこっちの無茶な要求多少は飲んでね、みたいなこと言われる」

「うわぁ……」


 それは確かに怖いかもな。

 ……というか、気のせいだと思いたいんだけど、もしかしてホウスさんって結構な権力者?

 下手すりゃ政治家の可能性とかある?

 ――無いか。

 そんな重要な人が、ガーディアンなんて命の危険がある職業やるはず無いもんね。

 しかも本業じゃなくバイトで。


「デザートの桃のムースとバナナタルトでち」

「ありがとうございます」


 なんて話をしてたらデザートが登場……したんだけど。


「そうか、この世界のバナナは牡蠣の見た目だったんだ……」

「未だに慣れないんだよねぇ、これ。見た目だけ変える品種改良をしてはいるんだけど、なんか見た目がホタテとか、ミル貝とか、赤貝になっちゃって――」

「頑なに貝類の見た目から外れないんですね……」

「見た目変えたら、こっちの住人まで被害が出ちゃってね。渋々元の牡蠣の見た目に戻したって経緯が」

「確かに、慣れてる見た目じゃなくなると混乱はしますが……」


 バナナタルト……という名の、牡蠣が乗せられ、焼かれたタルトを前に、会話が弾む。

 というか、この牡蠣バナナタルト、スターゲイザーパイに負けず劣らない見た目なんだけど。

 もちろん悪い意味で。


「加熱されてるのに身が縮まってないから多少は判断できますね」

「ものによってはあり得るから、そこまで明確な判断にはならないけどね」

「まぁ、ハイ」


 というわけで桃のムースからいただきましょ。

 牡蠣タルトはね、見た目からちょっと敬遠したいよね。


「おー、すっきりさっぱり」


 で、桃タルトは普通に美味しいです。

 桃の繊細な甘さと風味が、ムースの滑らかさと非常にマッチ。

 甘すぎず、かといって弱すぎない甘さの主張と、ムース特有の軽くふんわりとした食感が相性いい。

 食後をしっかり意識できる、シメに相応しいデザートだね。


「……食べるか」


 で、お次は牡蠣タルトなんだけど……食べないとダメ?

 いやまぁ、無理する必要は無いと思うんだけど、でもせっかく出されたものだしなぁ。

 とりあえず一口食べよう。


「……美味いんかい」


 牡蠣タルト、マジで見た目以外は百点なんだけど。

 焼きたてで熱々の牡蠣――バナナは、加熱されたことで甘みが増し。

 牡蠣の見た目からは想像したくないけど、ねっとりとした食感に変わってて、味も濃厚。

 そこにバター香るサクサクのタルト生地が合わさり、土台となるクリームは甘さ控えめ。

 ただ、牡蠣バナナと一緒に食べると、口の中で丁度良い甘さのクリームになるんだ。

 これは全部考えられて作られたタルトだね。

 非常に美味しい。

 95点。

 なお、見た目でマイナス60点。

 料理って難しいね。


「ちなみにコース料理、お代わりできるけど?」

「あー……もう少し早く知りたかったですねぇ……」


 デザートまで食べて、もう締めの気分よ、俺は。

 ――というか待て。

 旅行に来て、夜空の下で昇る月を見ながらという最高のシチュエーションで。

 美味しい料理を食べ、美味しいワインを飲むって言う素晴らしい状況で。

 ――何故に俺は男と二人きりなんだ?

 神様!! ここは普通異性といい感じになるべきイベントではないのか!!?


(知らんがな)


 ?


「今何か言いました?」

「? 何も?」


 気のせいか。

 いやまぁ、ホウスさんと出会わないとこんな状況にはならなかったけどさぁ。

 欲を言いまくれば、可愛い女の子と――いや、どちらかと言うとカッコいい女性と一緒に飲み食いしたかったなぁ。


「まぁ夜間飛行も当然可能だし、補給用に軽食は常に用意されてるから、お腹空いたらそれ食べたらいいよ」

「さいで」


 ワインの最後を飲み干し、ご馳走さまでした。

 まぁ、ホウスさんが食べ終わるまでは待つけど。


「食後の紅茶と小菓子でち」


 なお、食後のティータイムが始まるもよう。

 持って来てもらった小菓子はキャラメルか。

 お、生キャラメルか、たまに食べると美味いんだよな、これ。


「そういや、御厨君」

「なんでしょう?」

「異世界で働くことに興味はない?」

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― 新着の感想 ―
お疲れ様です!忠くん、女の子なら轟龍ちゃんかスイさんがいるじゃあないか( ^ω^ )選べる選択肢があるなんて贅沢だぞう。それはそうと異世界の人にバナナミルクとか色々なバナナスイーツとか食べさせたいと思…
2026/07/29 23:46 さんどまん
忠:神様!! ここは普通異性といい感じになるべきイベントではないのか!!? ??:(その願い叶えよう。) 忠:何か言いました? ホウス:女の子になっちゃった。 忠:違う!そうじゃない! ホウス:女の子…
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