?「護衛、やれる」
「急にどうしました?」
「ん? いや? 気になっただけ。で、どう? 興味ない?」
「そりゃあまぁ、興味はありますけど……」
「けど?」
「やっていけるとは思えませんよ?」
まぁ、働いてみたいか? と言われたら働いてみたいよ、うん。
でも、魔物が当たり前に存在する世界で、力も強くない俺が働けるか? と言われるとなぁ……。
それに、ホウスさん、異世界に来た時に何も能力を授かったりしなかったって言ってたじゃん?
という事は俺もそうなる事がほぼほぼ確実なわけで。
チート能力でも授かれば話は別だけど、働く以前に生きていける自信がないよ、俺は。
「まぁ、うん。否定しないよ」
「そこは嘘でも、『そんな事は無い』とか、『君ならやれる』とか言うべきでは?」
「俺、嘘付くの苦手だから」
「……」
ホウスさんの本心が読めない。
なぜ俺にそんな話を?
「ま、頭のどこかには置いておいてよ。俺が異世界の仕事に勧誘したって」
「今のが勧誘なんですか?」
「どう見ても勧誘では?」
「勧誘だったらもう少しおだてあげたりしません?」
「俺、嘘付くの苦手だから」
「あー、もう!」
異世界での仕事、ねぇ。
楽しそうではある。やってみたくもある。
……でもさ、確実に大変で、命の危機が当たり前にありそうで、そして、何より……。
人との関係構築が現代の比じゃないレベルで大変そう。
いやもうマジで。
正直、一番の懸念点がそこ。
折角今務めてる会社である程度の人脈と、人間関係の構築を終わらせているのに。
そこをリセットして全く別の世界の異世界で仕事しませんか? は流石にハードル高いよなぁ。
もちろん、理想で言えば働きたいんだけどね。
「ご馳走さまでした」
「しばらくは話し相手になってね」
「もちろんですよ」
何を話すんだろう、というのは置いておいて。
ま、食後の紅茶は楽しみましたが?
コーヒーがまだなので?
「すいません、コーヒー、ホワイトでください」
「かちこまりでち」
ホワイトを注文。
だって高いし。
ホウスさんのお金だし。
「なかなかうまくいかないものだねぇ」
「何がです?」
「勧誘」
「他の人にもやってるので?」
「まぁ、君だけじゃないからね、異世界のツアーに参加してる現代人」
「マジすか」
初耳なんだけど。
俺以外にも現代人来てるのか。
……という事は、どこかで現代人と鉢合わせる可能性もあったわけか。
「ちなみに、現代人は同じツアーに被らないように調整してるから、こっちで合う事は無いよ?」
「……なぜ?」
「異世界人と交流しなくなるでしょ、地球人同士でつるんじゃって」
「あー……」
今現在がそうだもんな。
ホウスさんとしか交流してないし……。
「ん? てことは、俺がどのツアーに参加するか、ホウスさん達が調整してる?」
「あ、やべ。……そうだよ?」
「いまやべって言いました?」
「気のせいじゃない?」
誤魔化すの下手だなぁ。
それこそ嘘付くのが下手だなぁ……ホウスさん。
言っちゃダメだったのかな?
「まぁ、異世界人との交流がツアーに参加させてる目的の一つだから」
「その目的の意図は?」
「異世界人と仲良くなってもらうため。まぁ、ぶっちゃけ君以外はあんまりリピート率高く無いんだよ」
「そうなんですか?」
こんなに楽しいのに。
「やっぱり、魔物に襲われたりするって体験がね」
「ガーディアンが居るじゃないですか」
「それでも、襲われるってだけで恐怖する人も居るんだよ。君と違って」
「うん?」
今ディスられた?
気のせいかな? 気のせいだな、よし。
「で、帰る前にアンケートを取るんだけど、もう来なくていい、が圧倒的に多くて……」
「アンケート?」
「そうだよ? 任意でではあるけど、答えて貰えたら料金の5%バック」
「俺、答えたことありませんけど……」
「まぁ、アンケートはあくまでリピートして貰えるかどうか? の意識調査なわけで」
「はい」
「初手のエルフツアーで、『次に異世界に来られるのはいつごろか?』なんて占ってた君に、そんな確認必要ないでしょ?」
……ぐぅ。
ぐぅの音しか出ねぇわ。
そうだよな、アンケートがその目的なら、俺には必要ねぇわな。
次回も参加するのが確定してるんだから。
「ちなみにですけど」
「うん?」
「勧誘って、手当たり次第にやってるんです?」
「まさか。何度かツアーに参加して、異世界に興味を持ってそうな人だけを対象にしてる」
「なのに断られてるんです?」
「まぁ、会社で結構な立場にいる人とか、既に家庭を持ってる人達ばかりだから。異世界で働きたくても、今の生活を捨てるわけにはいかないっぽくてねぇ」
……どーせ俺はまだ高い地位も家庭も持ってませんよーだ。
でも、そんな俺でもこうして断るんだ。それこそ、新卒とか、働いて無い人を対象にするしかないんじゃない?
果たしてそんな人がミステリーツアーというか、この異世界ツアーに参加するかは疑問だが。
「というわけで、是非とも異世界就職のモデルプランに……」
「なりませんって」
少なくとも現状では。
「お待たせちまちた。ホワイトコーヒーでち。砂糖とミルクは必要でちか?」
「このままで大丈夫です」
早速届いたコーヒーをグビリ。
うむ、美味い。
……異世界で働く、ねぇ。




