星空ダイニング
「それでは、ただいまよりコース料理を始めさせていただくでち」
日が沈み、月が顔を出し。
これから昇っていくというタイミングで、コース料理が始まりました。
なお、この晩御飯が始まるまで、上空から沈む夕日を眺めながらチルタイムを過ごしていたわけですけれども。
真っ赤な夕陽を見ながら飲む、酸味強めのコーヒー、美味しかったな。
「まずはアミューズでち」
というわけで運ばれてきたのは、小さなレンゲに乗せられた、ナタデココのようなもの。
流石にナタデココなわけ無いよね? と思いつつ、一口で食べてみると。
「煮凝り?」
ハマグリの出汁とかに近い感じの煮凝りでしたわね。
プルプルした食感で、ナタデココのイメージとは当然かけ離れたもの。
うま味と風味はあるも、生臭さや雑味とかは無く、普通に美味しかったですはい。
「飲み物はどうされまちか?」
「コースに合うワインとかってお願い出来ます?」
「かちこまりでち」
そしてコースに合うワインも注文。
まぁ、メインが魚だってわかってるし、白ワインかなぁ。
あ、そうそう。
空での食事だけど、常に羽ばたいているという事は無く。
雲のクッションというものを敷いて、そこに座ってます。
文字通り雲で出来ているらしいんだけど、なんで座れてるんだろうね?
未来の猫型ロボットの秘密道具かな?
「前菜とワインでち」
続いての料理が登場。
マリネっぽいな。
何の魚かは分からないけど。
ワインは……ボトルが片翼だけ広げた鳥の形してる。
魚の形のワインボトルが現代にあるのは知ってるけど、それ意識したんかな。
「ワインは『雲の間を泳ぐもの』をご用意したでち」
「ありがとうございます」
銘柄言われても分からんけど。
あと、その名前、時間経ったら消えそうだけど大丈夫そ?
「おー……綺麗」
ワインをグラスに注いでもらい、月にかざして色を観察。
月の色に照らされて、綺麗な透き通ったクリーム色に見えますわね。
香りは……柑橘、あと桃。どことなく潮風を感じられる気がする。
味は……。
「結構辛口」
スッキリした味わいで甘さはほとんどない。
けど、風味に蜂蜜やドライフルーツを感じられて、飲みやすい感じ。
飲む前の香りには無かったバラ系の香りも感じますわね。
後味は……かなりミネラル。
そして飲み込んで一拍置いてから、スモーキーな風味が上がってくる。
総評として、かなりお高めのワインなのでは? って印象。
まぁ、そんなに高いワイン飲んだ事無いけど。
「前菜は『雲エイのマリネ』でち」
「エイなんだ」
エイか、マリネでは当然として、そもそもエイを食べた記憶があまり無いな?
エイヒレくらいか?
「いただきます」
というわけでマリネをパクリ。
……お? 思った以上に雲エイとやらの身がふわふわしてるな。
生の魚の身って、引き締まってるものだと思うんだけど、この雲エイの身は生でもふわふわ。
加熱したみたいな食感する。
そんなふわふわな身と、マリネ液の味付けの相性がいい。
酸っぱすぎない酸味とベリー系の香り、ほんのり甘くて僅かなスパイス感。
そんなの、ワインとも相性抜群ですわよ。
薄切りされて散らされてる玉ねぎたちの刺激もいいアクセントになってうめぇですわ。
「ペロリと食べちゃったよ」
ついでにワインも。
最初に注いでもらった分、飲み干しちゃった。
「『鰯亀のスープ』でち」
「どうも」
もう異世界の食材にはあまり突っ込まないって決めたんだ。
じゃないとツッコミだけで俺の行動が終わっちゃうからね。
……んでも一個だけいい?
なんでスターゲイザーパイみたいに、顔がお皿の中央に鎮座してるの?
しかも亀の顔だし。
やだよ俺、亀の顔見ながら食事するの。
「あの……」
「?」
「この亀の頭って下げて貰えますか?」
「あー……それ、押しつぶして飲んでもらうものでち」
「押しつぶすの!?」
だから嫌だって!
何で食事でそんなことしなくちゃいけないんだよ!!
……でもまぁ、顔を合わせなくてよくなるなら――いい……のか?
とりあえず押しつぶすか。
スプーンでぎゅぅっと、
「ぐえぇぇぇぇ」
キェェェェェアァァァァァシャベッタァァァァァァァ!!
食欲無いなった! 食欲より驚きが勝った!!
一口だけ飲んで、口に合わなかったって下げて貰おう……。
「ズズ……」
う~ん。
美味いんだよなぁ。
当たり前に。
すっごいサッパリしたコンソメスープ。
ほんのり磯の香りはしつつ、魚介系の生臭さはない。
さっきまでの驚き無いなった……。
「ワインとベリボリに合う……」
スープの後味がワインの美味しさを強調しますわね。
ごめんよ鰯亀とか言う存在。
次からはもう少し顔の亀っぽさを無くしてくれ。
あと、潰した時に何もしゃべらないでくれ。
「美味しかった……」
「良かったでち」
まぁ、しっかり潰しきれなかった頭の部分は残しましたけど。
流石にあれを食べる勇気は俺には無いね。
「続いて貝料理でち」
「あれ? 俺、メインは魚料理を選んだはずですけど……」
「メインはこの後に来るでち。貝料理と魚料理、メインどっちを選ぶかで提供する料理が変わってと順番が前後するでち」
「なるほど」
という事は貝料理も食べられるって事か。
なるほどな。
「カキフライでち」
そして、あまりにも馴染み深い料理が運ばれてくるのだった。




