天候管理士一級必須
「え、すげぇ……」
夕食の時間まで何するかなーと甲板に出たら、もうみんな自分が食事する場所の席取りを開始してた。
と言っても、大空に椅子もテーブルもあるはずが無く、超絶緩い花見の場所取り、とでも思って貰えばOK。
「ここにしようか」
とか、
「僕ここがいい!」
みたいな、ゆる―い感じで進行しておりますわ。
……まぁ、その、確保した場所はしっかりとテープで仕切られるんですけどね。
――で、『ガーディアン御一行様』と区切られたこのスペースは何なので?
もしかして俺らの場所、もう確保して貰ってる?
「やぁ、おはよう」
「おはようございます」
なんて考えてたら、背後からホウスさんに声をかけられた。
この人も寝てたのかな?
「何時にしたの? ご飯」
「昇る月を見ながら、にしました」
「いいね。丁度いい場所も取ってるし」
「これ、ホウスさんが確保したんです?」
「いや? ピーチクさんに、『いい感じの所をよろしく』って伝えただけだよ?」
「あー……」
仕事の指示とかだと大いに困るやつだ。
先鋒の考えに合うようにいい感じの修正をアレしといて、みたいな。
まぁ、明確に場所取りの話をしてるんだから、そんな指示よりは百倍マシか。
「高すぎると補給の往復が面倒だし、低いと景色の良さを堪能出来ないし、いい感じで高すぎず低すぎずの場所だね」
「あ、その辺考えての場所取りなんですね」
「そう。あと、泊まってる部屋の上部が基本的に取れる場所なんだけど」
「あ、そうなんだ」
「俺らの部屋だと、日没は最後尾だけど日の出は最前列なのよ」
「ほうほう」
「だから、昇る月を、誰にも邪魔されずに堪能出来るんだよね」
「という事は、俺の時間の指定は間違ってなかった?」
「大正解だと思うよ」
うし。
「まぁ、夕日を見ながらを選んでいたら、無理やりにでも先頭を確保していたけれど」
「? 何か言いました?」
「何も?」
なんか呟いていた気がするけど、まぁいいか。
「あ、そう言えばメインはどっちを選んだの?」
「魚っすね」
「貝か魚か、なんて、選んだの初めてでしょ」
笑いながら言われちゃったよ。
まぁ、当然その通りなんだけれども。
「ですね」
「魚か……。期待しといていいよ」
「マジすか?」
「うん。あ、ちなみに貝を選んでいたら、でっかいホタテの貝柱ステーキだったはず」
「普通に美味そう」
「バターと醤油ベースのソースで頂くんだけど、これがまた美味くて」
「あの」
「キンキンに冷えたビールと相性いいし、米も進むんだよなぁ」
「食べたくなるんでやめて貰えません?」
勘弁してくれ。
そっちの方がいいなぁ、とか、食べる前から思いたくない。
「ま、それに負けないくらいの料理が出てくるから」
「期待していいんです?」
「スロットで言う次回予告くらいの期待度かな」
「台によりますよねそれ」
雲泥の差があるぞ。
まぁ、ある程度の期待にしとくか。
「んー……となると、食事まではもう少し時間が空くね」
「そうですね」
「何かやる事……もあまり無いんだよなぁ。空飛ぶくらい?」
「補給で食事前に食べるの、勿体なくないです?」
「一理ある。じゃあ、地上を見下ろして天上人ごっこをするとか?」
「目が、目がぁ~」
「バルス。このノリ久々だなぁ」
…………大の大人が二人で何やってんだか。
んでも、確かにご飯の時間までは暇だな。
――よし、飛行艇内を見て回るか。
「飛行艇内でも散歩してきます」
「いてら~」
「付いて来ないんです?」
「甲板に居るのもガーディアンの仕事の内だからね」
「なるほど」
というわけで一人で散策することに。
何かあるかなぁ……。
*
「あまり見て回れるところなかった……」
ホウスさんに連れて行って貰ったレストラン含め、もういくつかのレストラン。
あと、イベント用の大ホールと、カジノ。
それ以外の大部分は、よく分からない計器や魔道具とか言うものばかり。
説明して貰ったんだけどね、曰く、
「お客様に安全に飛行して貰うために、気圧や風量、風速、天候を操作してるでち」
だそうで。
確かに言われてみたら、この飛行艇の周りだけ雲がねぇなぁ、と。
出発の時は快晴だったけど、昼を過ぎて遠くには雲も見え始めたのにね。
なるほど、魔道具で調整していたのか。
「何か時間潰しとかありませんか?」
「ん~……飛行に飽きちゃったでちか……」
で、スタッフさんに率直に聞いてみたところ、
「少し早いでちが、お風呂とかどうでち?」
と。
やる事無いし、そうさせて貰う事に決めました。
なお、普通はこうして時間外に入るという事は出来ないらしいんだけど、
「ガーディアンと同じ部屋でちから、特別待遇でち」
だそうで。
いやぁ、ホウスさん様様だね。
というわけでお風呂、行ってきます!!
*
……うん。
風呂って言うか、スチームサウナって言うか……。
風呂場に入ってびっくり仰天。
雲が部屋にビッシリ。
霧とかじゃなく、明確に雲。
で、先が全然見えないの。
躊躇ったよね、入るのに。
ただ、躊躇ったのは最初の一歩だけで、入ってしまえばなんてことは無く……。
最初の通り、スチームサウナでしたね、はい。
ちなみに身体は洗えたんだけど、洗うためのものがタオルじゃなくて竹っていうね。
比喩でも何でもなく、マジで竹。
竹を体に擦り当てて、垢を落としてください、だってさ。
戦国時代のお風呂かな?
「まぁ、汗流してサッパリしたんですけれども」
ちなみに風呂場の雲は色がついてて、白は程よいスチームサウナ、赤が温度高め、青が水風呂レベルで冷たい雲でした。
問題は配置がランダムで、かつ当たり前に混じってること。
右腕だけ青い雲に突っ込んだ時は何事かと思ったよね。
まぁ、そんなこんなでちゃっかりお風呂を楽しみ、ただいま風呂上がりの牛乳を飲んでいる所。
なんやかんや、時間は潰せたな。




