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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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203/207

成り行きで、ね

「では、『コットン100』というカクテルを」

「材料表記かな?」


 そこでくらいしか見ない言葉だけども。

 まさかカクテル名に使われているとは……。


「どうぞ」


 という事でお出しされた『コットン100』、これもカクテルグラスでのご提供。

 今更だけどカクテルグラスってあれよ? マティーニグラスとか呼ばれてる、いかにもカクテルが入ってます! って見た目のやつね?

 そこに何と言うか、溶けたバニラアイスみたいな液体が注がれてる。

 で、青色のリボンが見える感じ。

 何味だろう、いただきます。


「……あ、美味しい」


 俺このカクテル好きかも。

 味はね、甘すぎないカルピス……あるいは飲むヨーグルト。

 スッキリとした酸味があって、程よい甘さ、アルコールを少しだけ感じて、カクテル飲んでますって雰囲気にもなれる。

 トロみがあって、滑らかな舌触りなのもいい。

 コットン100ね、覚えておこう。


「ご馳走さまでした」


 そう言って席を立とうとして、気付く。

 これ、ホウスさんに支払いを押し付けるのはどうすればいい?

 あの人が俺の飲み食いする料金を支払うって話は、俺にしかしてないはずで……。

 本人不在のまま、このツアーに参加してるガーディアンにツケで、とか、通るはず無くない?

 それが可能なら、他の乗客も当たり前にやりかねんし。

 むぅ……一旦支払いを俺が済ませて、後から請求するか。


「お代は大丈夫ですよ」

「?」

「ホウス様から、お客様の支払いは全て自分が払う、とお聞きしておりますので」


 流石ホウスさん、仕事が出来る。

 どうやら杞憂だったようだ。

 さて、んじゃあちょっくら寝ますかね。

 夕方……日が沈み始めてからじゃちょっと遅いか?

 気持ち早めに起きれるようにしとこう。

 社会人としての常識ですわね。

 何事もギリギリはダメ(n敗)。



「ん~……ちょっと今回は多いなぁ」


 魔物が襲来した、という報告を受け、甲板にやってきたホウスは、誰にも聞かれない程度の声量で独りごちる。

 と言っても、ホウスがやることは特になく、魔物から見える位置に立つだけなのだが。


「移動するのが面倒だし、誰も来ないでくれると嬉しいんだけどな」


 飛来したワイバーンには聞こえるハズは無いものの、そう言いながらホウスは視線を向け。

 ワイバーンもまた、ホウスの姿を視界に捉え。

 急停止、からの回れ右をして飛行艇から離れていく。

 そんな光景を、本日五度も見てきたホウスは。


「報連相がなって無いな、魔族は。自分所の頭首が乗ってる飛行艇ってくらい、周知徹底しとけよな」


 忠が聞いたら、目が点になってポカンとした挙句に手に持ったグラスを落としそうなことを、ポロリとこぼす。

 戦闘力皆無のホウスがなぜガーディアンになる事が出来たのか。

 それはそもそも、ホウスという存在自体が、魔物からして絶対不可侵だからである。

 自分たちを束ねる存在を、傷つけようとする魔族はいない。

 というよりは、本能に刻まれているのだ。

 『党首にだけは危害を加えるな』と。


「俺も酒飲むかなぁ」


 ゆえに、彼が乗った乗り物は、一度たりとも魔物に襲われたことは無い。

 なお、もし仮に、ホウスの身に危害を及ぼした魔物が現れたとしたら。

 この異世界から、魔物の一種が根絶やしになってしまうのだが。

 幸いなことに、そのような現象は未だかつて起きてはいない。

 ――記録上は。



 んー……。

 よく寝た。

 おはようございます。

 というわけで眠気覚ましの羽根伸ばし体操。

 ――ふぅ、よし。


「日の入りまではもう少しあるな」


 予定通りの時間に起床。

 いやぁ、アラーム一回鳴るだけで目が覚める体質で良かったよ、マジで。

 まぁ、アラームのかけ忘れで何回寝坊したかは忘れたけれども。


「ホウスさん、何してるんだろ」


 ホウスさんの部屋の方へ近寄ると、『起こさないでくだちい』と書かれたプレートが。

 絶対わざとだろ、この間違い。

 それか、ピーチクさんだかパーチクさんだかが間違えたか。

 あの人が素で間違えることは無い、多分。


「お目覚めでちか?」

「よく寝ました」


 で、俺が部屋から出たら――どっちだ?

 多分ピーチクさんがお出迎え。


「食事の時間の希望を伺いに来たでち」

「選べるんです?」

「もちろんでち。夕陽を見ながら、昇る月を見ながら、昇りきった月を見ながら、いつでも大丈夫でち」

「何かを見ながらなのは確定なんですね」


 まぁ、それが醍醐味っぽいしなぁ……。

 さて、自問自答だ。

 俺は今日のご飯を、どんな景色を見ながら食べたい?

 夕日……一応エルフツアーで見ながら食べたんだよな。

 昇る月を見ながら……自分の高さと水平方向にある時ってのは、ちょっとそそられる。

 昇りきった月……そんな遅くまでご飯待てる? 無理じゃね?

 となると答えは決まったか。


「昇る月を見ながら、でお願いします」

「かちこまりまちた。料理はコース料理でちが、メインは何にするでち?」

「選択肢を」


 まぁ、コース料理のメインの選択と言えば、ビーフオアフィッシュとか、ビーフオアチキンが定番だけれども。


「フィッシュオアシェルフィッシュでち」


 ……魚か貝か? だと?

 んじゃあまぁ、魚かなぁ……。


「フィッシュで」

「了解でち!」


 と、走っていくピーチクさん。


「ピーチクさん」

「パーチクでち」


 あ、二分の一外した。


「パーチクさん」

「なんでちか?」

「ご飯の時間になったらどこに居れば?」

「甲板より上にいてくれれば大丈夫でち」

「了解です」


 このツアーだけだろ、甲板より上、が、文字通り甲板よりも高い場所の事を指すの。

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― 新着の感想 ―
ホウス:報連相がなって無いな、魔族は。自分所の頭首が乗ってる飛行艇ってくらい、周知徹底しとけよな… ??:う~むワイバーン。イエロー。こ奴ら滅んだら新しく空飛ぶ魔物を創造…面倒じゃな… ??:酒!飲ま…
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