砂糖大皿一杯
……ほー?
魔ゴチとやらの天ぷら、かなり分厚く切られてますわね。
どりゃどりゃ。
「あ、美味い」
「塩が合うよね」
最初は鯛とかの天ぷらを想像してたけど、あなご天的な感じだな。
サクッとした衣、歯が当たるとホロリと崩れる身、皮目の部分だけはちょっと弾力があるけど、噛み締めると脂と出汁がジュワッと溢れる感じ。
そこに塩の塩味がいい味引き立たせてるわ。
「天つゆも良さそうですね」
「あぁ、うん」
ん?
天つゆに対する反応微妙じゃない?
流石にこの天ぷらに合わないはず無くない?
「あっま」
と思っていた時期が私にもありました。
いや、天つゆあめぇよ。
照り焼きとか煮付け的な甘さじゃなく、ガッツリ砂糖マシマシの甘さ。
お前それ、天つゆ名乗っていいと思ってんのか? レベル。
九州の醤油が甘い、みたいな話は聞くけど、多分それの比じゃないくらい甘い。
この天つゆを作ったのは誰だぁっ!?
「それだけは何度言っても直らないんだよねぇ……」
「助言的な事はやったんですね」
「まぁね。ただ、どうしても翼を生やして飛ばせるってツアーのコンセプト上、体力回復のために砂糖を増す傾向が強くってさ」
「あー……だから飲み物とかもめっちゃ甘かった?」
「そうそう。で、飲み物やデザートはいいから食事には増すなって何度も、それこそ何度も言ったんだけど」
「改善されてない、と」
なるほどな。
ホウスさんも苦労してそうな話だ。
――待って?
となるとだよ? この煮付け、もしかして激アマの可能性ある?
砂糖マシマシでしょ? 多分。
嫌だよ俺、魚の煮付けの煮汁がみたらしみたいな感じだったら。
「あ、ちなみに煮付けは大丈夫だよ」
「……マジ?」
「マジ。どころかこの煮汁はどこに出しても恥ずかしくない完成度。日本でも戦える味」
「マジ!?」
日本食で日本相手に戦えるって凄い事だぞ?
どれどれ……?
「あー、うめぇ」
「ね?」
確かにうめぇわ。
甘く無いわけじゃないんだけど、煮付けの煮汁ってある程度甘くてなんぼなところあるし。
その甘さが絶妙過ぎる。
あと、普通に出汁と醤油の香りもしっかり立ってて、何より魚がうめぇわ。
魔ゴチだっけ?
天ぷらも美味しかったけど、煮付けが一番だな。
しっとり淡泊で、脂が繊細な魚なのに、煮付けにするとどうしてここまで美味くなるのか。
魚の身の甘みと、煮付けの甘みが互いに打ち消さずに共存してるんだもんな。
この煮汁を作ったのは誰だぁっ!!
「魚の身をほぐして、煮汁と一緒にご飯にかけたねこまんまが最高に美味い」
「あ、俺もやる」
で、行儀悪いかもしれないけど、ホウスさんがやってる食べ方を真似るなり。
おっほやっべこっれうっめ。
あーもうズルい。
この食べ方ズルいわ。
米が美味い!!
「魔ツゴロウのかば焼きでち」
「来た来た」
で、そんな煮汁ご飯に舌鼓を打っていたら、やってきました魔ツゴロウのかば焼き。
見た目はウナギのかば焼きだけど、大きさがちげぇな。
俺が知るウナギより二回りくらい大きい。
これ、ウナギ好きが見たら発狂しそう。
「山椒、ワサビ、しょうが、薬味と合わせてどうぞでち」
「ありがとうございます」
というわけで、まずはそのまま。
ん、箸を当てただけで身が切れるな。
かなり柔らかい。
肉厚で美味そうだ。
「……あっふ」
熱かった。
焼きたてだしね。
でも、美味い。
なんと言うか、箸ではスッと切れたけど、歯で噛もうとすると弾力を感じる。
その上で、身は柔らかい。
弾力あるのに柔らかいの、なんか違和感あるんだけれど、そうとしか表現できないからなぁ。
味付けも俺が知るかば焼きの感じだけど、なんか柑橘系の香りがする。
柚子とか、その辺の皮を刻んでいれてるのかも。
ただ、そこまで主張は強くないし、ほのかに香る程度で味の邪魔はしてないけどね。
「久しぶりに食べたな、魔ツゴロウのかば焼き」
「珍しいんです?」
「ガチャゲーのピックアップキャラくらい」
「割とすり抜けるんですよねぇ」
魔ツゴロウ、そこそこに珍しいらしい。
アニマルの森で言う所のシーラカンスくらいか?
「これ食べると日本酒飲みたくなるんだよなぁ」
「あ、分かります」
味が濃くて、甘辛い食べ物は日本酒にも合う。
ワンシートン動物記にもそう書かれている。
「ま、お酒飲めるプランにはしてないから我慢だね」
「ですね」
まぁ、飲みたいってだけで、飲まなきゃ! って訳じゃないから。
我慢も出来ますよ。
大人だもの。
「山椒、ワサビ、一味、どれも合いますね」
「そしてどれも米に合う。美味いんだよなぁ……」
普通のウナギのかば焼きよりも食いでがあって、大きいから色々と試せる。
ふぅ、魔ツゴロウ、中々やりますね。
「まだ入る?」
「いけます」
「じゃあ釣ろう。これで洒落にならない大物が連れたらリリースって事で」
「そうそう釣れませんよね?」
「フラグ立てるのやめてもろて」
「三級フラグ建築士の資格しか持ってないんで」
「なら大丈夫か」
こんなノリを異世界で出来るとはね。
んでまぁ、しっかりと大魔王烏賊なるものが食いついたわけですが。
二人して顔を見合わせて笑ったよね。
当然リリース、というか、糸切ってバイバイしました。
……そもそも雲の中にあんなのが居るの、怖すぎんか?




