最低保証二匹
ふぁ……。
今何時……。
――寝てから一時間しか経ってないってマジ?
寝起きの感じ、たっぷり八時間睡眠をかましたくらいの感覚だったんだけど……。
これがエルフの飲み薬の力……?
「……お腹すいた」
で、起きたと同時に鳴るお腹。
睡眠欲が解消されたら食欲ですか。
我ながら分かりやすい体だこって。
「ホウスさん何してるんだろ」
というわけでホウスさん探し。
探す理由はもちろん食事をたかるためである。
「いたいた」
で、探し始めて数分。あっさり見つかりました。
ラウンジのバーみたいなところで一人グラスを傾けてましたわ。
「おはようございます」
「おはよう。早かったね」
「寝た時間と取れた疲労感が釣り合って無いんですよね……」
「まぁ、エルフの飲み薬飲んだからねぇ」
「やっぱりあれの効果ですか……」
確かに疲労回復も寝付き良好も謳い文句であったけどさ。
ここまでとは思わないじゃん。
「何飲んでるんです?」
「炭酸水にライム搾って塩振ったやつ」
「……美味しいんです?」
「こういうバーみたいなところでお酒飲んでる風を装えるよ」
「味目的では無いんですね……」
ホウスさんが飲んでるやつ、スノースタイルっていうの?
グラスのふちに塩が付いてて、お洒落な物飲んでるなぁとか思ったんだけども。
ノンアルコールっていうね。
まぁ、バーで飲む飲み物は必ずしもアルコール入ってないといけないなんてことはないけれども。
というか、どこでそんな飲み物を……?
「で、どうしたの?」
「ご飯たかりに来ました」
「正直でいいね。軽めがいい? ガッツリ食べる?」
「候補を聞きたいですね」
「軽めだったらホットサンドやサンドイッチのお店。ガッツリだったら魚介と肉で別れるかな」
「散々魚介を推してるみたいですし、魚介類食べたいです」
「お、いいじゃん。じゃあ……そうだね、あそこに行こう」
そう言ったホウスさんは、ライムを絞った炭酸水を一気に飲み干し。
ラウンジのバーを後にする。
もちろん置いていかれないように追いかけますわよ。
「釣りの経験ってある?」
「バス釣りなら何度かやりましたけど……」
「ほら、自分で魚釣って、釣れた魚を調理してくれるお店あるじゃん?」
「ありますね」
「今から行くのはそこ」
「……異世界の魚を現代日本人が釣れるんですか?」
無理では?
竿が折れるで済むならまだしも、下手すりゃ海中に引きずりこまれない?
というか待て。
冷静に考えてどこで何を釣るって?
ここは上空ですが?
「そもそも上空ですよね? 今居るところ。そんなところで釣り?」
「まず際どいギリギリの画像を載せて、クリックしたら別のホームページに飛ぶようにして……」
「釣りってそっちの釣りかよ!」
そっちの釣りなら経験ねぇわ。
釣られた経験ならいくらでもありますがよ。
「冗談冗談。着いたよ、ここ」
という事で船内の一つのお店に到着。
……えーっと? 店名は――、
「太公望?」
「一番有名な釣り人を聞かれてさ……」
答えたら採用された、と。
いやまぁ、確かに釣り人だけどさぁ。
有名になったの、釣りの腕前じゃないんだよな……。
「三平とかで良かったのでは?」
知名度で言ったらそこそこじゃない?
流石に太公望には負けるだろうけど。
「そうか。それがあったか」
「まぁ、今更名前は変えられないでしょうけど」
というわけで入店。
もちろん先頭はホウスさんです。
「二名です。お座敷、空いてる?」
「ご案内しますね」
てな感じでお座敷へ。
というか、普通にカウンターあるの何故?
釣れるのか? カウンターから?
「当店のシステムはご理解頂けておりますでしょうか?」
「大丈夫。天空釣りコース二人分。お酒は飲む?」
「あ、いや。飲まないです」
「そ。ソフトドリンクの飲み放題付きで」
「かしこまりました。釣竿をお持ちしますので少々お待ちください」
そう言って店員さんが下がり、
「さて、ちゃんと釣れないと払ったお金が無駄だからね。しっかり釣ってね」
「ホウスさんも釣るんですよね?」
「俺下手だよ? 坊主じゃなかったら褒めてね」
「濁点付けるだけで坊主になる人が何か言ってる」
「お、上手い」
なんて言ってたら、釣り竿を持った店員さんが登場。
そして、窓に向けて手を翳すと……。
「雲?」
「こちらに針を投げ入れると、魚がかかります。釣れた魚はご希望の調理方法で調理させていただきますよ」
ではごゆっくり、という言葉を残し、去っていく店員さん。
えーっと、
「ホウスさん、説明」
「窓の外を、この店が管理している雲生け簀と繋げたんだよ。だから、ここから投げ入れたら釣れるってわけ」
「ふむ……」
さらっと流したけど雲生け簀って何?
雲は確かに水蒸気の集まりだけど、魚が生息出来るほど水って訳でもないだろうに。
いやまぁ、生息出来る魚の魔物が居るって事なんだろうけれども……。
「じゃあ、ファーストアタック、どうぞ」
「狭い店内で竿振り回すの危なくないです?」
「そんなに勢いよく入れなくていいよ。こうやって――」
手首のスナップだけで窓へと仕掛けを投げ入れるホウスさん。
「これでいいんだから」
「はぁ……」
というわけで、見よう見まねでトライ。
お、上手く出来た。
あとは魚がかかるのを待つだけですわね。




