もしかして凄い人?
「ご無沙汰してます」
「……っ!?」
俺からご機嫌でシュークリームをあーんされてたガーディアンさん、ホウスさんを見た瞬間に固まってた。
で、泳ぎまくる目が収まったと思ったら、コクンとシュークリームを飲み込んで。
「久しぶり」
と一言。
……えーっと、この反応的にはガーディアンさんとホウスさんは知り合いって事だよね?
「知り合い……ですよね?」
「そう」
「俺が一方的にお世話になってるだけだよ」
……ほう。
ちょっとその話詳しく。
見た目だけで言えば幼い少女であるガーディアンさんのお世話になっている、とは?
答えてください。僕は今冷静さを欠こうとしています。
「世話になったのはむしろこっち。この人の存在が無かったら、龍人族は独立が遅れていたはず」
「……はい?」
なんて?
龍人族の独立と、ホウスさんに関係があるの?
『あと五分で落とし物拾いを開始するでち。参加されるお客様はポジションに付くでちよ』
と、気になる所でアナウンス。
ほな、ポジションに向かうかー。
「ポジションってなんです?」
「ああ言ってるだけで、とにかく待機しろって意味だよ」
「なるほど。あ、ガーディアンさん」
「?」
「シュークリーム全部食べていいですからね」
「コクコク」
そう言ってラウンジを離れ、甲板に向かうと……。
「結構いますね」
「そうだね。落とし物の中には有料レストランの食事券とかもあるから、このイベントはみんな本気だよ」
「ほへー」
「さっきの鬼ごっこを準備運動と考えて貰えると分かりやすいかな」
「なるほど」
……さっきの鬼ごっこ、割と本気だったんだけどな。
あれが準備運動か……。
俺、甲板で待機しておこうかな。
ちょっとついていける気がしない。
「……あ」
「? どうしたの?」
「当たり前にツアー参加者じゃないガーディアンさんを呼びだして食べさせちゃいましたけど、大丈夫ですかね……?」
ふと、ついさっき俺がしでかしたことを客観的に見てみたんだけど、食べ放題の店で食べきれないからと友人を支払いせずに呼んだ、みたいな事じゃない?
普通にアカン気がするんだけど……。
「ああ、それなら大丈夫」
「?」
「彼女は結構な有名人だから、居ても多分何も言われないよ」
「そうなんです?」
「彼女、一応序列的には龍人族のトップ相当だからね」
「マジすか……」
あのガーディアンさんが?
龍人族のトップ?
……よく今まで崩壊しなかったな……。
「それに、もし料金が発生するなら俺が代わりに出すよ」
「それもマジすか」
懐が深いなぁ。
あと多分だけど、稼いでるんだろうなぁ……。
「ん? ガーディアンさんは龍人族のトップ相当なんですよね?」
「そうだね」
「そんな人に顔を覚えられてるホウスさんって一体?」
「それを言うなら、知り合い感覚で呼べる君も大概でしょ」
まぁ、それもそうか。
『それではただいまより落とし物拾いを開始するでち。……その前に、安全第一で行うでち。事故や怪我が起きた場合は落とし物拾いを中断するでち』
安全面は考慮されてるのね。
『それじゃあ、開始前に準備運動を開始するでち。ミュージック、スタート!』
……準備運動?
しかも、流れてくる音楽が聞き覚えのあるあの音楽なんだけど。
小学校の頃の夏休みとかスタンプ貰うために行ったなぁ……。
『まずは、大きく羽を広げて、伸び伸びと羽伸びの運動から~、ハイ』
ハイじゃないが。
えーっと、とりあえず羽を伸ばせばいいのか。
『小さく、飛ばない程度に羽ばたきま~す』
ふむふむ。
『羽で相手をビンタするように、左右交互にリズミカルに~』
なんだそれ。
いやまぁ、やるけどさ……。
『はい。最後にもう一度ぐーっと羽根を伸ばしましょ~う』
……ふぅ。
なんか満足しちゃったけど、これからが本番なんだよな……。
『それじゃあ、落とし物拾い……張り切っていくでち』
というわけで、レクレーション第二弾、開幕です。
*
「我が愛しの旦那様、どこ? ここ?」
「休暇取って旅行行ってンだろ。許可出したのお前じゃねぇかよ」
「こんなに長い間旦那成分を摂取してないのは久しぶり。禁断症状が……」
「まだ離れて半日も経ってねぇじゃねぇか」
異世界のとある場所。
そこで何やら言い合っているのは、九尾の獣人と狼の獣人。
どうやら、女性である九尾の獣人が、自分の旦那への熱い思いを惚気ていた様子である。
「どのツアーに行ってンだっけ?」
「ハーピー」
「あー。文字通り羽を伸ばしたかったのか」
「結構自由にさせてると思うけど……」
なお、狼の獣人は腕を組んで壁に寄りかかりながら話しており、九尾の獣人は大量の書類を捌きながらの会話である。
「ん、獣人族のツアー内容の更新が来てる」
「俺らが言うのもなンだが、大丈夫か? また前みたくツアーと呼べない内容になってねぇか?」
「…………獣人が押す人力車で、魔物が出現する草原での一泊二日サバイバルツアー」
「ツアーですらなくないか?」
「流石に不許可。魔戦車辺りでなら許可していた」
「客乗せる気かよ戦車に。普通にダメだろ」
「乗り物使ってるだけマシ。前回は獣人族肩車だった」
「0点が5点になった見てぇなもンだがな」
そんな二人が会話している場所は『種族ツアー統括管理センター』という場所なのだが。
その正確な場所を知る人物は、ほとんどいなかったりする。




