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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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空中レクリエーション

 いやはや、絶景かな絶景かな。

 天気は雲一つない青空。

 見下ろせば木々の緑に湖の青。

 更には太陽光がキラキラと反射し、眩しさすらもある。

 遥か空から見下ろさなければ見られない景色。

 それも、飛行機の窓から覗くのとは違う、視界一杯の絶景。


「マジで景色だけでも来た甲斐がある」


 例えるなら、登山で山頂から眺める景色に似てると思う。

 登山はしたこと無いけど。


「最初のイベントが始まるよ」

「何が始まるんです?」

「第三次大戦だ」


 ネタはいいのよ。

 真面目に教えてくんろ。


「鬼ごっこと落とし物拾い、後はバレーボールだね」

「……それがイベント?」

「全部安定区域内だったらどこまででも動いていい大空利用の催しだよ?」


 ……確かに楽しそうだ。

 普段……というか、子供のころにやった鬼ごっこなんて平面での戦いでしかなかったけど、このツアーでは三次元の戦いになる、と。


「ところで落とし物拾いというのは?」

「そのまま。飛行艇から物が投げられるから、落下するまでにキャッチしてね、ってやつ」

「誰も掴めなかったら危険なんじゃあ……」

「重かったり固かったりしないから大丈夫だよ。タンポポの綿毛みたいなの」

「あ、それなら安心かも」


 重力加速度を舐めるな、と言いたかったけど、流石にそこら辺は弁えてるみたい。

 最後はバレーボールか。


「今乗ってる乗客全員で、何回ラリーが続くかのチャレンジ。回数は記録されてて、今のベストスコアも貼り出されるよ」

「ほほぅ」


 バレーボールは乗客同士で楽しむだけかと思ったら、割と競技性あるじゃないの。

 これは色々と燃えそうですわね。


「ベストスコアを更新したら景品が貰えるからみんな結構本気だよ」

「面白そうですね」

「ま、まずは鬼ごっこだけどね」


 というわけで放送が入る。


『ただいまより、空中鬼ごっこを始めるでち。最初の鬼は飛行艇のスタッフが務めるでちが、それ以降はお客様同士の戦いになるでち。くれぐれも補給を忘れないよう、安全第一で楽しんでくださいでち』


 なるほど。

 となると、補給中は無敵状態か。

 まぁ、そうでもしないと逃げるのに夢中でエネルギー枯渇して落下しました、じゃ話にならないか。


『それじゃあ、10カウント後に鬼が出撃するでち』


 そしてカウントダウンスタート。

 じゃあとりあえず、なるべく遠くへ……。


「じゃ、武運を祈る」

「俺が鬼になったら真っ先に狙いに行きますよ」


 俺は上へ、ホウスさんは下へ。

 それぞれ敬礼をして、鬼の出撃に備える。


『0でち』


 そして、空中鬼ごっこの開幕。

 鬼となったスタッフはまず、近くのマーメイドの集団に突撃。

 も、身体を捻って難なくタッチを躱し、ばらけるマーメイドたち。

 反転し、今度は家族連れへと狙いを定め……。

 狙われたのは子供。

 ちょっと大人げなくない? と思ったけれど、狙われた子供は素早く細かい動きでスタッフのタッチを掻い潜り。

 子供を追っていると見せかけて、スタッフの下方で談笑しているドワーフ族二人組に急降下。

 気付いて逃げるも、下降と左右への動きの速度はどちらが早いか言うに及ばず。

 スタッフがドワーフの一人にタッチを成功させ、責務を全う。

 ――タッチされたのが胸だったんだけど、まぁ多分大丈夫だろう。

 スタッフさん、きっと女性だよ、うん。


「とと」


 鬼になったドワーフさんがこっちに向かって来た。

 だけど、俺の方が高所だし、さっきと逆で、上昇と左右移動はどちらが早いのか、という問題。

 当然左右移動! さらに! 俺は太陽を背にするように動かさせて貰う。

 ふははは、眩しかろう! 見えにくいだろう! これぞ逆タカ戦法!!

 あとは目が眩んでいる間に急降下し、背後に付いて息をひそめる。

 んっん~、完璧な作戦だな。


「はい、タッチ」


 なお、現実はそんなに甘くない模様。

 横を急降下ですれ違う時に手を伸ばされてタッチされた。

 ぐぬぬぬ、目が眩んでなかったのか……。

 まぁいいや、えーっと近くに居るのは……マーメイドさんか。

 悪く思うなよ。近くに居たから狙わせて貰うぜ。

 決して俺もあわよくば胸にタッチとか出来ないかなとか、マーメイドさんと追いかけっこしたいとか、そういう邪な考えじゃないからな。

 鬼ごっこで鬼で終えないための意地だからな。



 ……ふぅ、タピオカドリンクがうめぇ。

 この極甘な味が、疲れた脳みそと体に染み渡るぜ……。

 ――さて、と。

 そろそろ狩るか♠

 色々飛び回りながら見ていたけど、艇底から動いてない存在がいるよなぁ!?

 えぇ!? ホウスのおっさんよぉ!!?


「必死じゃん」

「なりふり構わない方が楽しめますよ?」


 補給を終えて空中へ身を投げ出し自由落下。

 その途中で見つけたホウスさんへ狙いを定め。

 羽ばたき一回。

 力強く羽ばたいて、初動の加速でホウスさんを捉える!!


「よっと」


 が、あっさり避けられる。

 ――けど、それは織り込み済み!

 すれ違った瞬間に姿勢制御に羽ばたいて、軌道修正からの再度突進。

 俺は知っている。ホウスさんが鬼ごっこが始まって、今だ一度も補給をしていない事を。

 対して俺は今しがた補給し終えたばかり。

 どちらが先に動けなくなるか、我慢比べといこうぜ!!


「降参降参」

「はい?」


 なお、あっさりと降参される模様。

 じゃ、タッチしまして……。

 鬼よろしくお願いしますね。

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― 新着の感想 ―
ホウス:必死じゃん 忠:なりふり構わない方が楽しめますよ? ??:白い方が勝つ。 ??:番贔屓ですわね? ホウス:降参降参 ??:負けたじゃありませんの? ??:彼優しいから… ??:ケッですわ〜
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