レギュラー満タン
ふぃ~!!
風が気持ちいい~~!!
「上手いもんだ」
「スキーとかスノボよりずっと楽ですね!」
飛行訓練である程度覚えた動きをベースに、空を自由に飛び回る。
頬を叩く風が心地いいし、急降下した時の全身で感じる落下する感覚がたまらない。
マーメイドじゃなくても、この感覚は病みつきになるかもしれないな。
「まぁ、体重移動とかしないとこけたりはしないしね」
「多少落下しても、羽ばたけばとりあえず体勢整うの、助かるっす」
何度か会社の人に誘われて行ったけどさ、スノボ。
楽しかったは楽しかったよ、うん。
楽しいと感じるまでに時間掛かったし、その頃には全身痛かったけどね。
「ん……?」
立ち眩み……ではないか。
羽ばたき眩み? ちょっとフラッと来たな。
「エネルギー補給しときな」
「もうっすか?」
「今ふらついたでしょ? 急に体内のエネルギー消費したから体がびっくりしてんのさ」
「なるほど……」
大空に躍り出てものの十分ぐらいだけど、言われたからには補給しましょう。
甲板に着地。着地の時はしっかりブレーキっと。
ん~……何食べよう。
あ、タピオカドリンクは最初から除外してるから何食べよう? で合ってるよ。
死ぬほど甘いものなんて飲んでられるか。
「登山とかではチョコレートを持っていくって聞いてたけど、あまりチョコレートは無いな」
いつでもどうぞ状態のビュッフェを覗くけど、驚くほどにチョコレート類が少ない。
その代わり、ドーナツとかは結構多め。
お、肉まんとかあんまんあるじゃん。
多分ウェルカムドリンクの影響なんだろうけど、寒さはそこまで感じない。
ただ、吐く息は白いんだよね。
となると、こういった中華まんシリーズは美味しく感じるんだよな。
「あんまん一つください」
というわけであんまんをゲット。
……あんまんと言うか、アン○ンマンだな。
大きさ的に。
俺の顔とあまり変わらんぞ……。
「後は飲み物も……」
こんなサイズのあんまんを飲み物なしでは俺は無理なので……。
何かないだろうか?
あ、緑茶は無いけど烏龍茶はある。
じゃあ烏龍茶にしよう。
よし……。
「飛ぶのは食べてからね」
「ちぇ」
折角の上空なんだし、空に浮きながらでも食べようかと思ったのに。
ホウスさんに止められちゃった。
「ホウスさんも補給ですか?」
「そ。三本満足ください」
「何すかそれ」
非常に聞き覚えがあるんですけど。
若干数字が増えてる気がするけど。
「一日三本食べれば動き回れるって触れ込みの栄養補給食」
「美味しいんです?」
「そこらのプロテインバーと変わらない味だよ」
ほへー。
そういうのもあるのか。
……あんまんうっま。
皮が薄い。
端っこ噛んだだけなのにもうあんこに辿り着いてる。
その割にはしっかり噛み応えのある生地で、中からトロリと蜜のようなあんこが溢れ出す。
あんまんから上がる湯気と、俺の吐く白い息とが区別がつかなくなったところで、烏龍茶をグビリ。
なるほどなるほど。
――めちゃめちゃ甘い!!
え? 待って? この烏龍茶甘い! なんで!!? お茶が甘いなんで!?
「エネルギー補給用に砂糖入ってるよ」
「もっと早く教えて貰えます?」
あんまんの甘さとお茶の甘さがまた絶妙に違うから、飲んで食べてってしてるとかなりつらい……。
次から甘い物以外を食べよう。
飲み物は多分、しょうがない。
「……ん?」
と、大きな大きなあんまんと格闘していたら、ホウスさんが急に飛翔し。
俺たちの居る飛行艇めがけて飛んでくる何かの前に立ちはだかる。
……まさか、魔物が出た?
という事は、ガーディアンとしてのホウスさんが見られるんじゃね?
ちょっと期待。
さぁ、日本人。
あなたは一体どんな能力を持ち合わせているんだい?
「…………」
飛行艇に向かってくる何か。
どうやら、ワイバーンの一種だったようで、大きさ的には……そうだな。
イルカとかと同じサイズか。
人間とあまり変わらないくらいの大きさだった。
で、そのワイバーンの前に立ちはだかったホウスさんがですよ。
まるで挨拶するかの如く、片手を挙げまして。
……それだけ。
それだけで、ワイバーンが進路を変え、引き返していった。
いやあの……戦闘は?
「ただいま」
「……お帰りなさい。何してたんです?」
「何って、挨拶?」
「まぁ、見たまんまでしたけど……」
マジで挨拶しただけ?
実は字が違って、挨拶じゃなく相殺じゃない?
ワイバーンが見えない何かしらの攻撃を出してて、それを相殺して相手を引き返させた……とか。
「話が分かるやつで助かったよ」
「言葉、発してませんでしたよね?」
「ボディランゲージって知ってる?」
「手を挙げた動きに挨拶以上の意味があるんですか?」
「あると思うの?」
「思わないから聞いてるんですけど……」
何だろう、気のせいじゃなければおちょくられている気がする。
なんか癪だからそうじゃないって事にしておこう。
「今ので余計にエネルギー使っちゃった。三本満足をもう一本貰ってこよ」
「もう三本食べればいいのに」
「食べ過ぎると太るからね。カロリー計算大事」
「その分羽ばたけばいいのでは?」
「軟膏やマッサージではどうしようもない筋肉痛というものがあるのだよ」
「へー」
よし、完食。
甘い烏龍茶もしっかり飲み干しまして。
再び、大空へ!




